言うことを聞かないとサーカスに売っちゃうよ!!
なんて子供の頃おばあちゃんに叱られた時に聞いたものである。
サーカスや大道芸人の仕事は大変だと子供の頃から刷り込まれていた。
しかし、チェンナイ市内の路上でみた芸人一家の興行は、ほんのりするようなものであった。
10歳くらいの年であろうか、芸人とは思えないような、ごく普通の少女がお母さんと一緒に休んでいた。
商店街へ続くバスの通る道端である。 父親と母親らしき者と3人が道端に座っていた。
彼らの頭上に、綱渡りのような縄が張られているのに気がついた。
アレッ?君が乗るの? なんて気軽に声をかけてみた。 買い物に行く途中の私とその少女の目が
合ったからである。
そうよ!なんていったかと思うと、お父さんなのか、太鼓を持ち出して肩から吊るしたその手で、
少女を軽々と綱に持ち上げた。
ながーいバランス棒を渡されると、父親の太鼓にあわせて彼女は綱の上を歩き始めた。
特に奇抜な衣装なども着てないから、綱に乗っていなければ、その辺にいる子供である。
続いて、お母さんも音を出し始めた。 彼らの食器を叩いてる。アルミ製のお皿だが、高音で小刻みなリズムを
加えて会場を盛り上げる。 ロープを伝う彼女も ロープを左右に揺らして盛り上げる。
観客は 道の反対側で買い物をしながら遠めに見ており、すぐそばの観客は私だけ。
なんとなく悪い予感がする。これを見るって、只ではないよね? なんて頭によぎる。
なぜって? ポケットには小銭は入ってないので、どうやって払おうかなんて心配になる。
家を出る前に小銭がないのを気にしていたが、まさかこんなに早い時点で
小銭が 必要になるとは思っても見なかった。
綱を2回ほど行ったり来たりして彼女の演技は終了した。 綱の途中で演技をしていた時間もあるから
5分ほどだろうか。 拍手をしたのも私だけである。 かわいい少女にチップを渡さなければならないのは覚悟した。
細かいのがないからちょっと待って、、、。と 待ってもらって、
道の反対側にある店で両替をしてもらった。
日本のスーパーや小売店のレジには 「両替はいたしません」と親切な張り紙がしてあるが
ここでは、そんなものは書いてないし、書いてあっても読めないので、平気な顔をしてお願いした。
100Rsを 細かくしてもらって、その内の10Rsを綱渡りの胴元のお母さんへ払った。
すぐそばで見学した、私以外に払っている人はいない。 払ってる私をみてニヤニヤしてる。
その結果、この興行の一回分の収入は、私からの 10Rs(20円) だけだ。
大道芸人の生活も大変だなーーと思った一瞬である。
やはり、小さい頃、祖母が教えてくれた「悪いことをするとサーカスに売っちゃうよ!」という言葉を
思いだしたものである。 アー、 売られなくて良かった。
