以前の記事で、
Apple Watchの推定VO₂maxは54。
でも、10kmのベストタイム45分58秒から算出したVDOTは44.2。
という大きなズレについて書きました。
もちろん、VO₂maxとVDOTは同じものではありません。
それでも、
「そもそもランニングウォッチのVO₂maxって、どのくらい正確なんだろう?」
という疑問が残りました。
そこで今回は、ウェアラブル端末によるVO₂max推定精度を調べたシステマティックレビュー+メタ解析を読んでみました。14研究、合計403人を対象にしたレビューです。
この研究で特に面白かったのが、
運動中のデータからVO₂maxを推定するウェアラブルは、平均するとかなり正確だった
という結果です。
呼気ガス分析で実際に測定したVO₂maxとの差は、平均すると−0.09 mL/kg/minでした。
ほぼゼロです。
これだけ見ると、
「ランニングウォッチ、かなり正確じゃないか」
と思います。
私も最初はそう思いました。
でも、本当に重要なのはその次でした。
平均では正確。でも個人では大きくズレる
運動データを使ってVO₂maxを推定した場合、実測値との差の範囲は、
およそ−10〜+10 mL/kg/min
にも及んでいました。
つまり、
ある人では実測値よりかなり高く表示され、別の人ではかなり低く表示される。
それらを全員まとめると、平均ではほぼゼロになる。
ということがあり得ます。
たとえば、
Aさんは実測より+8。
Bさんは実測より−8。
この2人の平均誤差は0です。
でも、それぞれの人にとっては8もズレています。
つまり、
「平均的に正確」=「自分の表示値も正確」
ではありません。
これはかなり重要だと思いました。
私の「54」も本当の54とは限らない
私のApple WatchではVO₂maxが54と表示されています。
しかし、この数字を見て「私のVO₂maxは54だ」と思うのは少し危険そうです。
今回のレビューではApple Watchは検証されておらず、主にGarmin、Polar、Fitbitなどが対象でした。
そのため、「Apple Watchも±10くらいズレる」と直接言うことはできません。
ただ、ウェアラブルによるVO₂max推定には、個人レベルではかなり大きな誤差があり得る、ということは分かります。
そう考えると、私の
Apple Watch 54
VDOT 44.2
という差についても、
「ウォッチが正しいのか、VDOTが正しいのか」
という二択で考える必要はなさそうです。
そもそも見ているものが違いますし、ウォッチ側にも推定誤差があります。
ではVO₂maxの表示は意味がないのか?
とは思いません。
ランニングウォッチのVO₂maxは、絶対値をそのまま信じる数字というより、長期的な変化を見る指標として使うのがよさそうです。
私の場合、ランニングを始めたころと比べると、Apple WatchのVO₂maxはかなり上がっています。それが本当に実測VO₂maxの上昇量と一致しているかは分かりません。
それでも、同じ時計を使い、同じように走り続け、長期間にわたって数字が上昇している。
という変化には、ある程度意味があるかもしれません。
今回の論文では個人の変化を追うための「再現性」について検討した研究は少なく、この使い方についても完全に保証されているわけではありません。
なので、
VO₂maxの数字だけを見るのではなく、
・実際のレースタイム
・同じペースでの心拍数
・テンポ走で維持できるペース
・インターバルのタイム
・VDOT
なども合わせて見るのがよいと思います。
印象に残ったこと
今回の文献で一番印象に残ったのは、「平均では正確。でも個人ではズレる」という点です。
集団全体では非常に良い数字が出ていても、それをそのまま一人の人間に当てはめてよいとは限りません。
これはランニングウォッチに限らず、医学研究でもよくある話です。
平均値は大事。
ただし、自分がその平均のどこにいるかは別問題。
ランニングウォッチのVO₂maxも、そのくらいの距離感で見るのがよいのかもしれません。
新ブログでは、今回の論文の結果や、平均誤差と個人差の違いについてもう少し詳しくまとめました。
▼詳しい記事はこちら
ランニングウォッチの数字は便利ですが、「答え」ではなく、自分の走りを考えるための材料のひとつとして使うのがよさそうです。
みなさんは、ランニングウォッチのVO₂maxと実際の走力にズレを感じたことはありますか?



