西日本を中心とする豪雨災害で13日、総務省消防庁は家屋被害が2万6千棟を超えたことを明らかにしました。大規模に浸水した岡山県倉敷市では別に4千棟余りが被災したとみられ、少なくとも3万棟を超える見通しです。 警察庁の13日のまとめでは、死者は全国で203人。行方不明や連絡を取れない人は、少なくとも47人にのぼると発表しました。 

 こうした非常時の中、政府与党は、カジノを含む統合型リゾート実施法案(IR)を審議するため、西日本豪雨の被害がまだ続いている10日に、参院内閣委員会を開き、法案を担当する石井啓一(公明党)国土交通相は、約6時間そこに張りつき、カジノを設ける意義などを説明しました。

 この30年間で最大という水害への対応に、政府・国会をあげてとり組むべきときに、いったい何を考えているのか。私にはまったく理解できません。驚くことに、死者が200人を超え、なお多くの行方不明者がいる12、13日にも開会しました。

 災害対応に専念する。それが、河川や道路の復旧を所管する石井国土交通相がとるべき行動ではないか。非常識も甚だしい。

 野党は甚大な被害を想定し、人命を優先し、大臣を拘束すべきではないという判断をし、審議見送りを申し入れていましたが、今国会での法案成立をめざす与党が強行しました。

 言うまでもなく災害対応は初動が大切です。救援ヘリによる被災者の救出や航空機での搬送、緊急災害対策派遣隊の出動、支援物資の輸送……。いずれも国交省の仕事である。旧建設省の官僚出身で国交相に就任して約3年になる石井氏が、それを知らないはずはありません。

 今回の災害は被災範囲が広域にわたり、物流への影響も出ています。多くの人が住まいを失うなか、居住地の確保と物資の輸送は一刻を争います。石井氏だけではない。その認識が政府与党にあるのでしょうか。さらに政治への信頼が失われました。

 

 「人命よりも賭博優先か」。野党のこの批判こそ国民感覚に近いと思っています。問われるのは政治の役割は何かという根本的な問題です。

朝日新聞デジタルより一部抜粋