本日(2013年8月31)の朝日新聞朝刊が一面トップで「地震の延焼対策進まず」との見出しで、大地震の際に甚大な被害が予想される木造密集市街地の対策が進んでいなことが報じています。

それによると、木造住宅が密集し、大地震の時に起きる延焼火災に対して「最低限の安全性」が確保できていない、と国が認める市街地が14都府県、35市区町に計約4500ヘクタールあり(山手線の内側の7割に相当する広さ)、国は2001年にこうした市街地が全国に約8千ヘクタールあるとして、10年間での解消を目標に掲げていたが目標期限を過ぎてもまだ半分以上残っているとのこと。

さらに、そのうち最大は大阪市の1333ヘクタールで、03年からほとんど変わっておらず、一方で東京都では10年で密集市街地が3割減少しているという。私の地元東成区は市内24区で番目に多いとされています。

私は大阪府議会で街づくりを所管する都市住宅常任委員会に所属していますが、今年の3月11日にこの密集市街地対策事業について取り上げています。

そこで私が明らかにしたことは、国が、この市街地対策事業がなかなか進まないため、当初はこの記事でも話題になっている「不燃領域率が40パーセント未満」の地域(大地震により火事が発生すればその地域の8割は焼失するといわれている)を対象としていたものを、その地域であっても「避難困難性」が高くない、つまり「よく燃える地区だが逃げられないことはない」という地区については、「著しく危険な密集市街地」に当たらないとして、優先的な対策地区から除外していたという事実です。

しかし、私の地元の東成区でも、この「著しく危険な密集市街地」ではないとして優先対策地域から除外されていても、古い木造住宅が密集している地区は多くあります。そしてそれらの地区の木造住宅には多くは高齢者が住んでおり、かつ老朽化しているため大地震の際に倒壊しやすいと考えらます。

大震災で火事が発生すればその地区の8割は焼失するが、その地区から逃げられるので「著しく危険」ではない、といいます。倒壊しやすい老朽家屋に高齢者が多く住む地域が果たして本当に著しく危険ではないといえるでしょうか?

私には、2011年までに密集市街地を解消することを目標に掲げていた国が、本日の朝日新聞が明らかにした数字の通り成果が大幅に目標を下回っているために、それを覆い隠す方便として「避難困難性」という新基準を追加し、小細工を弄したように思えてならないのです。

実質的に除外基準を追加するなどの目標変更は、特に多数の人命がかかったこのような事業においては、厳しく精査されべきです。

今後もこの密集市街地対策事業については、国ではなく府議会というローカルな場ではありますが、密集市街地を多く抱える大阪市東成区選出の府議会議員として、調査、指摘、提言を続けてまいります。







以下、当該委員会での私の質問の議事録です。


岩谷
 続きまして、少し話題を変えまして、密集市街地対策についてお聞きしたいと思います。
 ちょっとモニターを出します。
 済みません、見にくいんですけどね、今、本府では、これは府だけじゃなく市町村、さらには日本を挙げて、我が国挙げて地震対策に取り組んでいる中で、密集市街地についての対策も全国的に進められていると聞いております。言うまでもなく、大地震の際に最も危険な地域の一つが、密集市街地であります。これは、地震に伴う火災が一たび起これば、ほぼ全域にわたってその市街地に燃え広がってしまうという非常に危険な地区であります。
 この対策事業をやっていただいているんですけども、密集市街地で燃え広がらないようにするとかいったような総合的な事業をしていただいているんですけどね、この地区は、このモニターのとおり、今赤色で示されてるように、この赤いとこは著しく危険な密集市街地ということで、優先的に対策を行っていくという地域で指定をしていただいてます。平成三十二年度までにこのあたりの対策を完了させるというのが、国の方針だと聞いておるんですけども、この設定に当たってちょっと疑問がございまして、この著しく危険な密集市街地、優先的に対策を施していく密集市街地の指定に当たっては、二つの指標で決められております。
 一つ目が、この不燃領域率という指標です。
 これは、不燃領域率というのがありまして、四〇%というのが境になってまして、ここが目標値になってます。このグラフのとおり、四〇%を境に焼失率が大きく下がるんですね。三〇%の場合の焼失率が、何とこの八割ぐらいに達するということですね。四〇%になると、二〇から二五%ということで、焼失率が非常に下がるということで、ここを基準にしてると。だから、不燃領域率、燃えない領域が、その地区で四〇%に満たないところは、著しく危険な密集市街地として指定していくという指標です。これは、よくわかります。
 それと、もう一つ指標がございまして、これは避難困難性に関する指標というものですね。避難困難性、つまり家から外に出て、その密集市街地から逃げれるかどうかという指標をこの二つの指標でやってます。
 そもそも、まずこれ経緯を聞きますと、一番目の指標ですね、不燃領域はどれぐらいあるかという指標、これに基づいて対策を進めていたんですけども、なかなかこれが進まないということで、このたび国が改定しまして、避難困難性という指標をつけたやに聞いてます。そして、不燃領域率が達しなくても、逃げれたらいいじゃないかということで、目標達成するためにこれをつけたということなんです。
 どうも、私からしたら、不燃領域率の目標達成が困難になってきたから、逃げ道でこの指標を入れたんじゃないかというような感じがするんですね。あくまで、これは本来目指すべきは不燃領域率だと思うんですね。逃げたはいいですけど、家は燃えますからね。さらに、家から逃げれればいいですけども、住宅自体が倒壊してしまったら逃げれないと、そしたら挟まれたまま焼死してしまうということも考えられるわけで、まずはこの不燃領域率、一番目の指標をやはり重視して、この優先地域の設定をすべきじゃないかと思うんですけども、まずそれはいかがでしょうか。

◎居住企画課長
密集市街地の整備についてお答えいたします。
 地震防災対策上、多くの課題を抱えております密集市街地の整備改善は、大変重要な課題であるというふうに認識しております。
 今委員御指摘がございましたように、密集市街地の対策、これまで燃えにくいまちをつくっていくということで対策を進めてまいりまして、大規模な延焼が起きないように、全ての地区で不燃性を確保するということが、一つ理想であるというふうには思っております。
 密集市街地が大変広範囲に広がっております中で、南海トラフ巨大地震などの大規模な地震の発生が切迫しているということでございますので、まずはできる限り早期に火災が広がらないようにすることと、仮に燃え広がったとしても、避難できるようにすることが先決ではないかというふうに考えております。
 したがいまして、早急に最低限の安全性を確保しなければならない地区を抽出するために、地震時に延焼が発生した際、地域の大半の方々が避難できるかどうかを判定することができる今お示しの避難困難性も、考慮すべき重要な指標だというふうに考えております。

◆(岩谷良平君)
 南海トラフ地震等が切迫してる状況なので、とにかく優先の中にも、さらに優先度をつけてやるということで、その時間的な切迫状況は理解できますので、わからないでもないんですけどね、ただその避難困難性という二つ目の指標を考慮するとしても、先ほど私が申し上げたとおり、逃げれるからいいやろうという指標なんですけどね。そもそも、家が木造で、倒壊して、その家から出れなければ、そのまちから逃げれないわけですね。そうすると、やはり火事が起これば、その地域は八割九割が燃えてしまうわけですから、その方は、かなり命の危険にさらされてしまうわけですね。
 そういう意味で、私は、この避難困難性という指標を使うんであれば、その前提として、その地区の耐震化率というのをやはり考慮すべきじゃないかと思うんですけども、いかがでしょうか。

◎居住企画課長
地震時等に著しく危険な密集市街地は、木造建築物が集中して立地していることなどにより、地震時に同時多発的に火災が発生した際に、最悪の場合、大きく燃え広がるとともに、避難ができないことにより多くの人命が失われるという、こういう大きな被害が発生する危険性が高い地区でございます。最低限そういった被害を防ぐという観点から、重点的に整備していくべき地区として設定をいたしました。
 こうした地区におきましては、大規模な延焼が起こらないようにすること、または延焼しても避難できるようにすることを確保すべき最低限の安全性と考えてございます。
 このように、密集市街地の整備では、市街地大火の抑制を主眼に防災性の向上を進めているところでございます。これは、大火災というものが、出火しなかった建築物も含めて際限もなく大きな被害をもたらすために、まちづくりの観点から、そういった被害が発生しないよう、個々の建築物の耐震性の確保とは別に、特に考慮すべきであるとの考え方によるものでございます。
 なお、建てかえや耐震改修により個々の建築物の安全性を確保していくことは、これは当然進めていくべき重要な課題でございますので、密集市街地におきましても、取り組みの主体である地元市と連携いたしまして、住宅所有者等に建てかえや耐震改修を働きかけるなど、耐震化の向上に努めてまいります。

◆(岩谷良平君) 
今長々と御説明いただいたんですけど、結論としては、この指標は変えるつもりがないというお答えだと思います。
 これは、私は、変えていただきたいと思うんですけども、現状それはできないというお答えであれば、せめて、この火は燃え広がるんだけども逃げれるよということで、著しく危険な地域ではないとされた地域ですね、その地域に住んでいる方には、指定から外れてるけども、そこはまずは火事が起これば燃え広がる地域ですと、さらに、ただ家から出れれば逃げれますよと、そのかわり家が倒壊したら逃げれない可能性がありますよ、だから耐震してくださいとか、そういったことは、その地区の住民の皆さんにやはりしっかりと周知すべきだと思うんですけどね、いかがですか。

◎居住企画課長
今後、大阪府といたしましては、密集市街地の整備方針を策定することとしております。この中で、地震時等に著しく危険な密集市街地だけでなく、今お示しのように、避難ができるけれども燃え広がる危険性が高い地域があるということを示してまいります。
 こうした地域の住民の皆さんに対しましては、都市計画による規制誘導の強化や、住宅所有者等へ建てかえや耐震改修を積極的に働きかけることなど、市みずからの対策もあわせまして地元市から周知していただくように協議してまいりたいと存じます。

◆(岩谷良平君)
 密集市街地整備方針を大阪府で策定されると。その中で、避難ができるけども燃え広がる危険性が高い地域というものをしっかり示していただけるということですね。それから、地元市から住民の皆さんにそのことを周知していただくということで、協議をしていただけるということです。
 これは、実際に地元市の協力のもと、住民の皆さんへの周知がなされているか等含めて、私も、しっかりと今後取り組みを注視していきたいと思いますので、よろしくお願いします。