本日、「大阪府における重症小児患者への医療提供体制検討会」から「大阪府における重篤小児患者に対する医療提供体制への提言」 が松井知事に提出されました。



 本検討会は、私の今年3月の私の知事への議会での質問等を受けて、今年5月に、医学部の教授や大規模病院の病院長、救急や小児の第一線の医師らを委員として大阪府に設置されたものです。


 これまで大阪府として大きくクローズアップされることのなかった重篤小児救急という部分に初めて光が当てられ、具体的提言としてまとまりました。非常に大きな意義のあるものです。


 そして、その内容は私が議会で知事に質問、提言させて頂いたことと概ね一致しており、一安心したところです。


 まず私の今年3月の知事への議会での質問知事の答弁の要旨を示します。


◆(岩谷) 
 

 この問題を解決しようと、全国で小児集中治療施設、通称PICUの整備が広まりつつあります。東京都や静岡県では、大病院が乱立する中、PICUの集約化を推し進め、近隣の地域より重篤な小児を集約し、効果を上げております。一方、大阪では、五大学の医学部がおのおのばらばらに医療圏をカバーしており、三次レベルの重症小児患者に対する医療体制は不十分なままで、集約化もされておりません。
 

 大阪府におけるPICU管理が必要な傷病者数を試算しますと、年間約四百例となります。しかし、現状は、年間約百例程度の受け入れとなっております。すなわち、残り三百例の重症小児患者は、本来受けるべき三次レベルの医療機関での治療が受けられず、助かるはずの子どもの命が失われている可能性があり、事態は極めて深刻であると言えます。
 

 このような事態を抜本的に改善するために、PICUの整備が急がれますが、一方でPICUは膨大なコストがかかり、絶対的赤字領域であることが整備をおくらせている大きな要因となっております。
 

 そこで、まずはPICUの設置は、子どもの命を守るためにはやむを得ないコストである、こういった社会的コンセンサスを得る必要があります。その上で、大阪府下に小さなPICUが乱立することは、機能的、採算的にも困難が多いため、広域をカバーする大きなPICUに集約化することにより、無駄を省くことが必要であります。
 

 さきに挙げた他府県における集約化の前例があり、早急に取り組む必要があると考えますが、いかがでしょうか、知事のお考えを聞かせください。

◎知事

 
 小児専用の集中治療室は、超緊急的救命救急医療に引き続く集中治療や高度専門医療を迅速かつ適切に提供し、重症小児への医療供給体制のさらなる充実のために必要な施設であり、今後その整備を図っていく必要があります。
 

 お示しのとおり、一定規模以上の集約した拠点整備が重要であると考えており、大学病院や小児の高度専門医療を提供する医療機関など、医療資源、地理的条件、人員体制の確保などの点を踏まえて検討をしてまいります。


◆(岩谷)


 重症小児患者の実態は、大阪府下での集計がなく、PICUの具体的な必要数すら不明であります。まず、正確な現状把握をする必要があり、そのためには、医療圏の垣根を越えて情報の共有化をし、大阪で発生する重篤な小児救急患者の全貌調査を行う必要があると考えますが、知事はどのようにお考えでしょうか。
 

 現在、府下での重篤な小児の受け入れを積極的に行っている施設として、大阪市立総合医療センターが挙げられます。また、府立母子保健総合医療センターは、PICU機能が充実しており、今後、増床に伴い、重篤な小児救急患者の受け入れを行う予定となっております。この二つの小児専門病院が核となり、PICUシステムの構築を牽引することが期待されます。
 

 静岡県のデータを用いて大阪の小児人口に換算しますと、府下には四十床のPICUが必要と試算され、市立総合医療センターに二十床、母子センターに二十床のPICU設置が望ましいと考えますが、いかがでしょうか、知事のお考えをお伺いいたします。


◎知事


 府立母子保健総合医療センターにおいては、平成二十六年度の供用開始を目指し、小児専用の重症集中治療病床十八床を含む手術棟の整備に着手いたしております。今後、救急搬送データ等をもとに重症小児救急患者の実態を分析検討し、府内における医療資源を活用しながら効率的、効果的な小児重症集中治療病床の整備を図ってまいります。



◆(岩谷)


 次に、重症小児医療の病院間ネットワークの構築についてお聞きいたします。
 

 重症小児医療の集約化を妨げる最大の要因は、中規模以上の病院が乱立し、横のつながりがないまま単独で医療を行ってしまっていることにあります。病院間連携が可能となれば、あいているベッドの有効利用など相互協力が可能となり、メリットは大きいと思われます。また、PICUでは、超急性期を脱した後の受け入れ先が見つからず、病床から動かせなくなってしまうという事態が生じておりまして、病院間連携がスムーズになれば、結果的に勤務医の過剰負担軽減にも寄与すると考えます。
 

 行政主導の病院間ネットワークを重症小児医療においても構築すべきと考えますが、いかがでしょうか、知事にお伺いいたします。


◎知事


 本府においては、あらゆる重症及び複数診療科の領域にわたるすべての重篤な救急患者の受け入れ、恒常的に必要な救命救急医療を提供できる十四カ所の救命救急センターが、救急車による搬送に加え、二次救急医療機関等から高次転送が必要な小児患者を受け入れております。また、必要に応じて、大阪市立総合医療センターや府立母子保健総合医療センター、大学病院など高度な小児専門医療を提供できる医療機関に転院することにより、集中治療等が提供をされております。
 

 今後は、こうした医療機能のさらなる充実を図るとともに、これらの医療機関相互の連携やネットワークを一層密にした体制を構築してまいります。


◆(岩谷)


 次に、府下共通の小児集中治療医の育成システムの構築についてお聞きいたします。
 

 PICUを整備するに当たり、人材確保が大きな問題となりますが、第一線で臨床をしている小児医療者の問題意識は高く、潜在的な担い手は多く存在いたします。しかし、残念なことに、大阪府下では臨床研さんを行う施設が少ないため、他府県に流出してしまう研修医も少なくありません。さらに、研さんを積んでも、その知識技術を大阪府では発揮できる機会が少ないことも、人材育成の大きな障害となっております。
 

 そこで、知事設置の医療専門家チームを提案されているように、大阪府域統一の小児集中治療医の育成システム、並びに小児集中治療医の施設間交流ができる仕組みの構築が急務であります。いわば、白い巨塔に挑戦し、大学間、病院間及び自治体の壁を打ち破り、処遇面や給与面の緩和及び適正化を行い、府下共通の新たな小児集中治療医育成システムを構築することが必要と考えますが、知事のお考えはいかがでしょうか。


◎知事


 重症、重篤な小児患者への集中治療や救急医療を担う医師の育成は、極めて重要であります。医療分野に関する専門家チーム会議においても、大学と地域の中核病院等が協力し、同一の方針のもと、医療の中心的担い手である医師の一体的な人材育成が必要不可欠であると指摘をされております。医師が偏在する分野も含め、府域が一体となって医療ニーズに対応した人材育成を行う統一の医師の研修システムを構築すべきと提案されており、このような議論も踏まえ、小児集中治療医等の育成に努力をしてまいります。




以上が議会での私と松井知事とのやり取りです。


要点は


1、小児集中治療施設(PICU)を一定規模以上の病院に集約し、重篤小児患者を高度な治療能力を有する病院に集約すること


2、府内の重篤小児患者の実態調査を行うこと


3、集約化は大阪府立母子センターと大阪市立総合医療センターの二か所を核とすること


4、適切な搬送や転送を実現するため、重篤小児の病院間ネットワークを構築すること


5、府下共通の小児集中治療医育成システムを構築すること


です。


そして今回の検討会では、府内の重篤小児患者の実態調査が行われ、これまで詳細が明らかでなかった府内の医療機関における重篤な小児患者や死亡の実態が判明しました。


提言書では、


1、集中治療施設と人材などの体制が備わった重篤小児患者拠点病院を指定し、重篤または重篤となるおそれのある患児を、重篤小児患者拠点病院へ集約する


2、重篤小児患者拠点病院、小児病院、大学病院、救命救急センターによる緊密な連携体制(ネットワーク)を構築すること及び重篤小児患者拠点病院とリハビリテーション施設や在宅医療を支える医療機関などとの連携体制を推進すること


3、平成26年度に大阪府立母子センターと大阪市立総合医療センターの二か所が重篤小児患者拠点病院としての役割を果たすことが予定


4、重症小児患者拠点病院は人材育成機能も併せ持つこと


などが提言されました。私の質問・提言内容と見比べて頂ければ概ね一致していることがお分かり頂けると思います。


もちろん提言だけで終わってしまっては意味がありません。しっかり府の施策として実現する必要があります。


そこで、本提言の知事への提出に先立ち、我が会派の徳村聡議員(健康福祉常任委員会副委員長)にお願いし、先日の府議会健康福祉常任委員会において、本提言を受けたのちの大阪府は実現にむけてどのように対応するのか質問をして頂きました。


これに対する医療対策課長のご答弁は、


「重篤小児患者拠点病院」については、大阪府立母子保健総合医療センター大阪市立総合医療センターが、平成26年度の稼働を目指して小児集中治療病床の整備を予定していることから、整備完了後に「重篤小児患者拠点病院」としての役割を発揮していただけるよう調整を進めていく。

関係医療機関によるネットワークの構築については、関係者による運営会議を立ち上げるとともに、「重篤小児患者拠点病院」への転送ルールや受入体制の確立について議論をすすめ、府としても平成26年度までにネットワークが有効に機能できるよう体制整備を図ってまいる。

とのことでした。

 

大阪府の関係部局の皆さんや委員として取り組んで頂いた専門家の先生方、個人的にアドバスを頂いた現場の医療関係者、そして我が会派の同僚議員など皆さんのご努力とご協力で実現した提言です。

 


決して無駄にしないため、そして子供たちの命と生活を守るため、私も

しっかりと知事、府の関係部局、医療関係者の皆さんとともに、実現に向けて取り組んで参ります。


大阪府議会議員 大阪維新の会

岩谷 良平