先日(3月2日)に府議会で行った私の一般質問の原稿をアップします。


正式な議事録ではないので当日の発言とは一部異なりますが、当日の生のやりとりはwebで録画をご覧頂ければ幸いです。

http://www.gikai-web.jp/dvl-osakahu/

まずは重症小児救急医療から。




府下における重症小児救急医療体制についてお聞きいたします。

(図1)



かねてより指摘されている通り、日本は先進諸国で突出して乳幼児死亡率が高く、先進国中ワースト1であります。

(図2)


そしてその死亡原因は不慮の事故がいずれの年代においても上位にあがっています。

この問題を解決しようと、全国で小児集中治療施設(通称PICU)の整備が広まりつつあります。



東京都や静岡県では、大病院が乱立するなかPICUの集約化を推し進め、近隣の地域より重篤な小児を集約し効果を上げています。

 

 一方、大阪では5大学の医学部が各々バラバラに医療圏をカバーしており、3次レベルの重症小児患者に対する医療体制は不十分なままで、集約化もされておりません。

  

 大阪府におけるPICU管理が必要な傷病者数を、試算すると、年間約400例となります。

 

 しかし現状は、年間約100例程度の受け入れとなっております。  

 すなわち、残りの300例の重症小児患者は、本来受けるべき3次レベルの医療機関での治療が受けられず、助かるはずの子供の命が失われている可能性があり、事態は極めて深刻であると言えます。

このような事態を抜本的に改善するために、PICUの整備が急がれますが、一方でPICUは膨大なコストがかかり絶対的赤字領域であることが整備を遅らせている大きな要因となっています。

 そこでまずは、PICUの設置は子どもの命を守るためにはやむを得ないコストである、という社会的コンセンサスを得る必要があります。

その上で、大阪府下に小さなPICUが乱立することは機能的、採算的にも困難が多いため、広域をカバーする大きなPICUに集約化することにより無駄を省くことが必要であります。

先に挙げた他府県における集約化の前例があり早急に取り組む必要があると考えるが、いかがでしょうか。知事のお考えをお聞かせください。

                     降 壇                    

≪知事答弁≫

○ 小児専用の集中治療室は、重症小児の超緊急的な救命救急医療に引き続く集中治療や高度専門医療を迅速かつ適切に提供し、重症小児への医療提供体制の更なる充実のために必要な施設であり、今後、その整備を図っていく必要がある。

○ 整備にあたっては、お示しのとおり一定規模の集約化が重要であると考えており、大学病院や小児の高度専門医療を提供する医療機関などの医療資源や地理的条件、人員体制の確保などの点を踏まえ、検討を進めてまいりたい。

                     登 壇                    

 次に府内のPICUの整備について、具体的にお聞きします。

重症小児患者の実態は、大阪府下での集計がなく、PICUの具体的な必要数すら不明です。

まず、正確な現状把握をする必要があり、そのためには医療圏の垣根をこえて情報の共有化をし、大阪で発生する重篤な小児救急患者の全貌調査を行う必要があると考えますが、知事はどのようにお考えでしょうか

 

 現在、府下での重篤な小児の受け入れを積極的に行っている施設として、大阪市立総合医療センターがあげられます。

また、府立母子保健総合医療センターはPICU機能が充実しており、今後増床に伴い重篤な小児救急患者の受け入れを行う予定となっています。

この二つの小児専門病院が核となり、PICUシステムの構築を牽引することが期待されます。

静岡県のデーターを用いて大阪の小児人口に換算すると、府下には40床のPICUが必要と試算され、市立総合医療センターに20床、母子センターに20床のPICU設置が望ましいと考えますが、いかがでしょうか。知事にお伺います。

                     降 壇                    

≪知事答弁≫

○ 府立母子保健総合医療センターにおいては、一部HCUを含む18床のPICUからなる重症集中治療病床の増床等を含む手術棟整備に平成26年度の供用開始を目指して着手している。

○ 今後、重症小児救急患者の実態を分析・検討し、府内における医療資源を活用しながら、効率的・効果的な整備を図る。


                     登 壇                    

次に重症小児医療の病院間ネットワークの構築についてお聞きいたします。

重症小児医療の集約化を妨げる最大の要因は、中規模以上の病院が乱立し、横のつながりがないまま単独で医療を行ってしまっていることにあります。病院間連携が可能となれば、空いているベッドの有効利用など、相互協力が可能となりメリットは大きいと思われます。

またPICUでは超急性期を脱した後の受け入れ先が見つからず病床から動かせなくなってしまうという事態が生じており、病院間連携がスムーズになれば結果的に勤務医の過剰負担軽減にも寄与すると考えます。

誇るべきことに大阪では新生児領域においては全国に先駆けたシステムである病院間受け入れネットワーク(通称:NMCS)が存在しています。

そこで、このNMCSをモデルとした行政主導の病院間ネットワークを重症小児医療においても構築すべきと考えますがいかがでしょうか。知事にお伺いします。

                     降 壇                    

≪知事答弁≫

A3 (知事)

○ 本府においては、あらゆる重症および複数診療科領域にわたる全ての重篤な救急患者を受け入れ、恒常的に必要な救命救急医療を提供できる14か所の救命救急センターが救急車による搬送に加え、二次救急医療機関等からの高次転送が必要な患者を受け入れている。

  また、大阪市立総合医療センターや府立母子保健総合医療センター、大学病院など高度な小児専門医療を提供できる医療機関が集中治療を行っている。

○ 今後は、こうした医療機能の更なる充実を図ることともに、これらの医療機関相互の連携やネットワークを一層密にした体制を構築してまいりたい。

                     登 壇                    

次に府下共通の小児集中治療医の育成システムの構築についてお聞きいたします。

PICUを整備するにあたり、人材確保が大きな問題となるが、第一線で臨床をしている小児医療者の問題意識は高く潜在的な担い手は多く存在します。

しかし残念なことに、大阪府下では臨床研鑽を行う施設が少ないため、他府県に流出してしまう研修医も少なくありません。さらに研鑽をつんでも、その知識技術を大阪府では発揮できる機会が少ないことも人材育成の大きな障害となっています。

そこで、知事設置の医療専門家チームも提案されているように、大阪府域統一の小児集中治療医の育成システムならびに小児集中治療医の施設間交流ができる仕組みの構築が急務であります。

いわば「白い巨塔」に挑戦し、大学間、病院間および自治体の壁を破り、処遇面や給与面の緩和および適正化を行い、府下共通の新たな小児集中治療医育成システムを構築することが必要と考えますが、知事のお考えはいかがでしょうか。

                     降 壇                    

≪知事答弁≫

A4 (知事)

○ 重症・重篤な小児患者への集中治療や救急医療を担う医師の育成は極めて重要である。

○ 医療分野に関する専門家チーム会議においても、大学と地域の中核病院等が協力し、同一の方針の下、医療の中心的担い手である医師の一体的な人材育成が必要不可欠であり、医師が偏在する分野を含め、府域が一体となって、医療ニーズに対応した人材育成を行う府域統一の医師の研修システムを構築すべきと提案されているところであり、このような議論も踏まえ、小児集中治療医の育成に努力してまいりたい。

                     登 壇                    

以上、重症小児救急について質問して参りましたが、最後に、一番重要なのは今後この問題を検討する際に、最前線で過酷な環境の中、昼夜を問わず必死で頑張っておられる現場の意見を活かすことです。

臨床現場の意見を吸い上げられるシステムを行政主導で構築して、今後の小児救急医療政策に活用するべきであると考えますが、知事のお考えをお聞かせください。

                     降 壇                    

≪知事答弁≫

A5 (知事)

○ 現在も、審議会や協議会など専門家からの意見をお伺いする様々な機会を設けているところであるが、今後、あらゆる機会を通じて、臨床現場からの意見を集約できるよう努力してまいりたい。