「えっ、食べたことないの?」
「はい、ないです。」
「ほぼ毎年1度は作って、皆さんにあげたと思っていたんだけれど。」
「でも、頂いたことがないんです。」
従業員さん達が、口々にそう言った。
ならばと、今年も筍ドーナツを作ることにした。
筍の堅ーいところをすり下ろし、絞って小麦粉と卵、砂糖と塩少々を加えて揚げるだけ。
分量はいつもの事ながら適当。
さあ、美味しく作って皆に分けてあげよう。
ところが、小麦粉が足りなかったようで、大失敗。
足しても足しても、具が油の中で散り散りになってしまう。
とうとう粉を使い切った。
それでも散ろうとする具を、騙しだましまとめてゆく。
結局、味はまずまずだが、私の苦手なフニャッとしたドーナツになってしまった。
お菓子作りに適当は許されないという事を忘れていた。