夕食後急に思い立ち、花屋さんへ。

 

華やかな色の花々の中に、一際地味な花を見つけた。

 

貝母(バイモ)百合という名前の花だった。

 

葉先が蔓のように絡み合っていて、その合間から2輪だけ花を咲かせていた。

 

蕾のような物もいくつか付いていて、その可憐さから目が離せない。

 

今までに、それこそ何百という花を見てきた。

 

それでも、心がドキドキするような花に出会えるのは希で、まさに今日のバイモ百合がそれだった。

 

 

「この花はおいくらですか?」

 

「ああ、それは、良かったら差し上げます。」

 

えっ?

 

「元の方から少しずつ咲いてきて、これが最後の花なんです。」

 

ということは、この蕾のようだと思っていた部分は種?

 

「もう処分しようと思っていたので、どうぞ持って行って下さい。」

 

10本ほどを、もちろんありがたく頂いた。

 

 

短く切り、備前焼風の一輪挿しに活けると、ああ、なんて可愛いんだろう。

 

残りの茎や葉は、一緒に買ったレンギョウの枝に沿わせた。

 

こっちも素敵に仕上がった。

 

 

明日には間違いなく棄てられていた命かと思うと、花が咲いているだけに何だか哀れで。

 

ひょっとしたら、一晩で終わってしまう花かもしれないけれど、こんなにも人を幸せな気持ちにしてくれるなんて。

 

ああ、出会えて良かった。