石垣にいつの頃からか桐の木が根付いてしまった。
2階の廊下の窓から下に手を伸ばし、毎年一度はそれを切っている。
今年もまた、性懲りもなく伸びている枝を切ろうかと窓を開けた。
その時、バサバサと何かが飛び去っていった。
ああ驚いた。今のは何だったのだろう。
気を取り直し、桐を切ろうとした時、三つ叉に伸びたそこに小さな鳥の巣を発見。
直径10㎝程のその中に、ウズラの卵にそっくりな小さな卵が3個。
親鳥が少し離れたところで飛んでいる。
こりゃあ楽しみだ。毎日観察しよう。そう思いながらも、忙しさにかまけ、2~3日見に行かなかった。
そして昨日の夕方、そっと窓を開けてみると、そこには小指の先ほどの肌色の雛が三羽。
たぶん、生まれて間もないのだろう、産毛すら見えなかった。
丁度通りかかったお客様と一緒に暫し見とれる。
「ひよどり」という名もその方に教えて頂いた。
後で解った事だが、その日の昼頃はまだ卵のままだったらしい。
惜しかった、生まれる瞬間を見逃した。
そして今日、
「女将さん、鳥の巣がからっぽです。」
え~!まさか。
どうしたんだろう。皆で色々考えた末、犯人はカラスではないかという結論に達した。
蝉ですら1週間は生きられるものを、僅か3~4時間しか生きられなかった雛たち。
弱肉強食の実態をとても身近に感じた。
というわけで、桐の木を切りそびれている。