昔むかし、わたしはラジオと呼ばれていた時期がある。
年がら年中歌を口ずさんでいた。
その頃、私は歌が上手いと思っていた。
と言うのも、我が家では夕食後になると、家族そろってそれぞれが得意な歌を披露する習わしがあったから。
家族とはありがたいもので、何を歌っても褒めてくれた。
だから自分は歌が上手なんだと信じて疑わなかった。
道を歩いていても、教室でも、もちろん我が家でもいつも歌っていた。
子どもが出来て、彼らを負ぶいながらも必ず何かしら口ずさんでいた。
そんな私だから、所構わず歌いたくなる人の気持ちは良く解る。
しかし、だからといって公道を、大きな、それも合唱団ばりの声で「ふるさと」を歌う勇気はない。
今日、そんな人とすれ違った。