鑑賞日は異なりますが、いずれも6月に伏見ミリオン座で見た新作映画です。1本目の映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』は、ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督が、自身と同じ1945年生まれの戦後ドイツを代表する芸術家アンゼルム・キーファーの生涯と現在を追った作品。2年の歳月をかけ完成させたドキュメンタリー。


2本目の映画『WALK UP』は、韓国の名匠ホン・サンス監督が、都会の4階建てアパートを舞台に芸術家たちが織りなす人間模様をモノクロームの映像で綴った作品。ホン・サンス作品の常連俳優クォン・ヘヒョが主人公の映画監督を演じ、『あなたの顔の前に』のイ・ヘヨンが共演。伏見ミリオン座(シニア会員1,200円×2)。グッド!

 

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家

『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』公式サイト

 

1945年にドイツに生まれたアンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話を題材に絵画、彫刻、建築など多彩な表現で作品を創造してきた。初期の創作活動では、ナチスの暗い歴史から目を背けようとする世論に反してナチス式の敬礼を揶揄する作品をつくるなどタブーに挑み、美術界から反発を受けながらも注目を集める存在に。目

 

1993年からは、フランスに拠点を移し、藁や生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作している。彼の作品に一貫しているのは戦後ドイツ、そして死に向き合ってきたことであり、“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けている姿勢といわれます。
 

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家

 

ヴィム・ヴェンダース監督が2年の歳月をかけて完成させた本編は、3D&6Kで撮影を行い、絵画や建築が目の前に存在するかのような奥行きのある映像表現をめざしたという。アンゼルムの大掛かりな創作作品を、立体的で目の前に存在するかのような映像に再現して見せ、ドキュメンタリー作品とは思えない雰囲気がありました。

 

さらに本編ではアンゼルム・キーファー本人が出演するほか、再現ドラマとしてアンゼルムの若き日も描写されます。息子ダニエル・キーファーが父アンゼルムの青年期を演じ、幼少期をヴェンダース監督の孫甥(兄弟姉妹の孫にあたる男性)アントン・ヴェンダースが演じています。アンゼルム・キーファーとヴィム・ヴェンダースという2人の芸術家、それぞれの畏敬の思いと協力により完成した作品といえます。パー

 

(2023年、監督/ヴィム・ヴェンダース、撮影/フランツ・ラスティグ、美術/セバスティアン・ソウクプ、編集/マクシーン・ゲディケ、音楽/レオナルド・キュスナー)

アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家

 

 

 

                                  

 

WALK UP

『WALK UP』公式サイト

 

以下は映画『WALK UP』公式サイトに記載の紹介ストーリーです。

 

映画監督のビョンスは、インテリア関係の仕事を志望する娘のジョンスと一緒に、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有するアパートを訪れる。そのアパートは1階がレストラン、2階が料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、地下がヘオクの作業場になっている。音譜

 

3人は和やかに語り合い、ワインを酌み交わすが、仕事の連絡が入りビョンスはその場を離れる。ビョンスが戻ってくると、そこには娘のジョンスの姿はなく…。

 

WALK UP

 

映画監督のビョンスはインテリア関係の仕事を目指す娘ジョンスと共に、インテリアデザイナーとして活躍する旧友ヘオクの所有する4階建てアパートを訪れます。やがてワインを酌み交わしながら、和やかに語り合う3人。やがてビョンスは仕事の連絡が入ったためその場を離れますが、娘たちが待っていてもビョンスなかなか戻らない…。

 

いつものことながらホン・サンス作品は、ウダウダと酒を飲みつつ時を過ごす場面が続きます。最初にビョンスと娘が4階建てアパートを訪ねた時、1階はレストラン、2階は料理教室、3階は賃貸住宅、4階は芸術家向けのアトリエと、ヘオクの案内で説明がなされます。そして各階を舞台にしたドラマが、ビョンスを軸にして描かれる。

 

フロアが1階上がるごとに、映画監督ビョンスの関わり合う女性は変わり、その人間関係の“ねじれ”には多少の戸惑いを覚えました。それは酒の酔いによる“幻”との解釈もできそうですが、映画監督という立場の続く主人公の“ダメンズ”ぶりには大きなブレはなかったと思います。ホン・サンス監督の“自画像”的な映画作品かも。パー

 

(2022年、監督・脚本・撮影・編集・音楽/ホン・サンス)

WALK UP

 


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