仕事を4月に“卒業”し、5月からは40日間の有休の消化をしています。今までは名古屋に出掛ける劇場鑑賞は、週末の土・日曜日と平日の仕事後でしたが、今は平日の午前から連続鑑賞が可能となっています。久しぶりに出掛けた大須シネマは、鈴木清順監督の特集上映。私が連続で見たのは映画『殺しの烙印』『けんかえれじい』の2本。料金のシステムが変わったようでしたが、1本目1,400円+2本目1,300円です。グッド!

 

殺しの烙印

『殺しの烙印』(1967年、監督/鈴木清順、脚本/具流八郎、撮影/永塚一栄、録音/秋野能伸、照明/三尾三郎、美術/川原資三、音楽/山本直純)

 

プロの殺し屋No.3にランクされている花田(宍戸錠)は、昔の仲間・春日(南廣)の頼みで報酬500万円の仕事の片棒を引き受けた。依頼主は藪原(玉川伊佐男)と言いある組織の幹部を護送するのが仕事だった。ハイウェイで後を追うようについてくる車に花田は銃を握りしめるが、その車は一度は何事もなく追い抜いていく…。

 

花田と春日は、後部座席で悠然と煙草をふかしている男の正体を知らなかったが、この男こそNo.1の殺し屋・大類(南原宏治)だった。やがて迎えた山道で、大類の命を狙うNo.2の佐倉とNo.4の高らの一味との銃撃戦になる。花田は何とか佐倉を射止めるが、残った一味を軽く始末する大類。その見事な腕前に花田は愕然とします。ドクロ

 

その後、再び藪原から花田に仕事の依頼が来ます。4人の人物の殺しという依頼を、花田は自分の持つ最高のテクニックで次々と実行していく。しかし、あと一人を残すのみとなり、その殺害に手間どっていると花田の元へ美沙子(真理アンヌ)という女が訪ねてくる。彼女は藪原が“使者”として寄こした組織の殺し屋の一人だった…。

 

殺しの烙印

 

最後の一人の殺害チャンスがなかなか掴めず、美沙子が連れ出したときに狙うという非常手段に出る花田ですが、その結果は失敗に終わります。殺し屋に失敗は許されず花田は組織から命を狙われるようになり、No.1の殺し屋・大類との対決も迫る。あせる

 

私の手もとには本編のDVDはありますから、作品は何度か鑑賞していますが、劇場のスクリーンで鑑賞するのは初めてのような気がします。不思議なドラマ展開のノワール作品ですが、個人的には主人公・花田が妻の真美(小川万里子)や組織に属する真理アンヌと繰り広げる愛欲シーンに、少なからずドキリとするものがありました。

 

名うての殺し屋が女性との関係以上に、心を奪われるのがご飯が炊ける際の匂いということで、ガス炊飯器を前にして恍惚の表情となる主人公…。当時の日活の社長から「わからない映画」を作るとして、翌1968年に鈴木清順監督は一方的に専属契約の打ち切りを通告される。次の「新作」を撮るまでに10年を要する曰くつきの作品。パー

 

殺しの烙印

 

                                   

 

けんかえれじい

『けんかえれじい』(1966年、監督/鈴木清順、脚本/新藤兼人、原作/鈴木隆、撮影/萩原憲治、美術/木村威夫、音楽/山本直純、編集/丹治睦夫)

 

昭和初期、岡山中学の生徒・南部麒六(きろく)は夢見がちで柔らかい物腰の学生だったが、憧れの女性・道子(浅野順子)を馬鹿にした上級生たちとケンカになり、上級生を叩きのめしてしまう。その様子を見ていた同校OBでケンカの達人「スッポン」(川津祐介)は、麒六のケンカの才能を見込んで、彼にケンカの極意を伝授する。

 

麒六はたちまち学校の不良たちを制圧し、学校最大の勢力OSMS団(岡山セカンドミドルスクール団)の副団長に祭り上げられてしまう。しかし、学校に軍事教練にやってきた教官と衝突し、岡山を出奔することに。会津若松の親戚の家に転がり込んだ麒六は喜多方中学に移り、ここでも地元のバンカラ集団とケンカを繰り広げる…。パンチ!

 

けんかえれじい

 

岡山の中学時代は「喧嘩キロク」とあだ名されるほどのケンカ好きがたたり、やがて放校処分となって会津に転校する麒六。ひとつ屋根の下に暮らす下宿屋の娘・道子に想いを寄せつつ、その熱情を素直に伝える術はなく、腕力に物言わせケンカで発散する日々。おおらかなユーモア、きらめくリリシズムに彩られた痛快な作品です。合格

 

映画のエンディング近く、道子が岡山からやって来て、修道院に入ることを麒六に告げるシーン。その後、二・二六事件を伝える新聞に地元のカフェで出会った北一輝の姿を認めた麒六が、より大きなケンカを求め東京へ向かうエンディングなど、やや唐突な展開に思えます。それでも映画ファン半世紀の“マイフェイバリット”な一本。

 

1980年前後の頃でしょうか、最初に名画座でスクリーン鑑賞した時に、脚本を書いているのが新藤兼人だと知り、少なからず驚きました。さらに同名の原作本があることもその際に知り、鈴木隆の原作本は当時書店に注文して読みました。この原作本もとても面白かった印象がありますが、今は納戸の本棚のどこかに埋もれています。パー

 

けんかえれじい

 


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