4月に劇場鑑賞の2本の日本映画ですが、見た劇場も作品のジャンルも大きく異なります。1本目の映画『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』は、東日本大震災で多数の犠牲者を出した宮城県石巻市の大川小学校を題材に、遺された親たちの10年に及ぶ思いを記録したドキュメンタリー。シネマスコーレ(シニア会員1,100円)。
 

2本目の映画『クラユカバ』は、長年にわたり個人映像作家として活動してきた塚原重義監督が初めて手掛けた長編アニメーション映画。集団失踪事件の謎を追って地下世界「クラガリ」に足を踏み入れる私立探偵の活躍を、大正ロマン漂うようなレトロな世界観で描いた作品です。ミッドランドスクエアシネマ2(シニア当日1,300円)。グッド!

 

「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち

『「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち』公式サイト

 

2011年3月11日に発生した東日本大震災で、津波にのまれて全校児童の7割に相当する74人の児童(うち4人は行方不明)と10人の教職員の命が失われた大川小学校。地震発生から津波到達までは約51分、ラジオや行政の防災無線で情報は学校側にも伝わり、スクールバスも待機していたにも関わらず、大きな悲劇となった出来事です。

 

その事実や理由について行政や学校側からの説明に疑問を抱いた一部の親たちは、真実を求めて裁判所への提訴に踏み切ります。わずか2人の弁護団で、いわれのない誹謗中傷も浴びせられる中、親たちは“わが子の代理人”となって証拠集めに奔走する。あせる

 

「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち


この裁判で親たちは「金がほしいのか」といわれのない誹謗中傷も浴びせられる中、自ら証拠集めに奔走し、わずか2人の弁護団でありながら、5年にわたる裁判で「画期的」といわれた判決を勝ち取ります。当初の説明会の映像を含め、その“闘い”に至る経緯の一部始終を記録として撮り続けた、親たちの映像記録が本編の“根幹”です。

 

寺田和弘監督は、親たちが延べ10年にわたって記録した膨大な映像を丁寧に構成・編集し、独自の追加撮影も合わせて一編のドキュメンタリー映画として完成させています。昨年の「毎日映画コンクール」でドキュメンタリー映画賞を受賞したことから、名古屋のシネマスコーレでは“凱旋興行”ともいうべきリバイバル上映でした。パー

 

(2022年、監督/寺田和弘、プロデューサー/松本裕子、撮影/藤田和也、山口正芳、音効/宮本陽一、編集/加藤裕也)

「生きる」大川小学校 津波裁判を闘った人たち

 

 

 

                                  

 

クラユカバ

『クラユカバ』公式サイト

 

以下は映画『クラユカバ』公式サイトに記載のイントロダクションの一部です。

 

「インディーアニメ」という言葉がまだなかった2000年代より「自主制作アニメ」を舞台に精力的な活動を続けてきた“インディーアニメの先駆け”塚原重義が、ついに銀幕へ勇躍する――ビックリマーク

 

構想から10年…2度のクラウドファンディングを経て紆余曲折の末に完成した『クラユカバ』が、ファンタジア国際映画祭長編アニメーション部門【観客賞・金賞】の快挙を達成、ついに日本凱旋公開へ…ビックリマーク
 

クラユカバ

 

探偵社を営む荘太郎は、近頃世間を騒がせている集団失踪事件の捜査に乗り出すことに。目撃者はおらず、犯人の意図も不明、その足取りには必ず不気味な轍(わだち)が残されている。手掛かりを求めて街の地下領域「クラガリ」へ向かった荘太郎は、黒がねの装甲列車とその指揮官タンネに出会い、運命を大きく動かされていく…。

ファンタジア国際映画祭の長編アニメーション部門での受賞作ですが、「最もチケットが取れない講談師」と言われる六代目・神田伯山が主人公・荘太郎の声優を務めているのも興味を引いた点です。過ぎし日の郷愁を誘うレトロ感の横溢する映像世界、サイレント映画を思わせるドラマ展開など、奇抜さが楽しめるアニメ作品でした。パー

 

(2023年、監督・原作・脚本/塚原重義、キャラクターデザイン/皆川一徳、特技監督/maxcaffy、操画監督/アカツキチョータ、美術監督/大貫賢太郎)

クラユカバ

 


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