4月中旬から再び4週連続で岐阜・柳ケ瀬に“プチ遠征”して、ロイヤル劇場の上映作を見ました。最初の2週は「萬屋錦之介 人情時代劇特集」と銘打った1960年代の東映作品2本。その後の2週は「何度でも観たい!松竹映画傑作選」と題した70年代の松竹作品2本で、『砂の器』『八つ墓村』はいずれも監督・野村芳太郎、脚本・橋本忍です。

 

企画タイトル「萬屋錦之介 人情時代劇特集」ですが、できれば「中村錦之助」と表示していただきたかったかな。上映作の『瞼の母』『沓掛時次郎 遊侠一匹』はいずれも監督・加藤泰。3ヵ月ほど前に加藤泰監督の特集を組んだばかりですが、劇場の支配人は加藤泰作品が好きなのかもね。ロイヤル劇場(回数券5,000円⑥・⑦)。グッド!

 

『瞼の母』(1962年、監督・脚本/加藤泰、原作/長谷川伸撮影/坪井誠、美術/稲野実、音楽/木下忠司、録音/佐々木稔郎、照明/中山治雄

 

中村錦之助演じる「番場の忠太郎」は5歳の時に母親と生き別れになった身。それから20年を経て、旅から旅への渡世を稼業としています。風の便りに母が江戸にいるらしいと知り、江戸へ急ぎ向かいたいのですが、親しい半次郎(松方弘樹)の身が気がかりで、武州金町へやって来る。そこで起きるひと悶着が本編のオープニングです。

 

親分の仇・飯岡助五郎に手傷を負わせた半次郎は飯岡一家の喜八らに追われる身で、金町には半次郎の母や妹おぬい(中原ひとみ)がいる。半次郎の家族の窮地を見るに見かね、わが子を想う母の愛に心うたれた忠太郎は、喜八らを叩き斬って半次郎を逃がします。飯岡一家の恨みを自身に向けるようにし、忠太郎は江戸へ向かいます。

 

 

一方、飯岡一家の七五郎らも忠太郎を追って、江戸へ向かいます。市井に暮しながら母親とおぼしき人物を訪ね歩く忠太郎。やがて、母親らしき女性の情報を得て、今は料亭「水熊」の女主人におさまっているおはま(木暮実千代)を訪ねます。DASH!

 

おはまの娘お登世(大川恵子)は木綿問屋の若旦那・長二郎(河原崎長一郎)と近く祝言を挙げることになっている。自身の昔の古傷に触れるようにして、金を無心にやって来る輩に毅然と振る舞うおはまです。そんなタイミングで忠太郎は「水熊」へ。彼の身の上話を聞き、おはまは大きく動揺しますが、この場は冷たく突き放す…。

 

荒んだ気持ちで江戸を出ようとする忠太郎ですが、そこに襲いかかる飯岡一家の面々ら。修羅場をくぐり抜けた忠太郎が耳にするのは、彼の名を呼ぶおはまの声。名乗り出れない忠太郎は男泣き…。錦之助と木暮実千代の母子の“情感”芝居。スクリーン初見なのですが、既視感があるのは若い頃にテレビ放映で見ているからでしょう。パー

 

 

                                   

 

『沓掛時次郎 遊侠一匹』(1966年、監督/加藤泰、脚本/鈴木尚之掛札昌裕、原作/長谷川伸、撮影/古谷伸、美術/井川徳道、音楽/斎藤一郎

 

渡世人の沓掛時次郎(中村錦之助)は、自分を兄のように慕う身延の朝吉(渥美清)と旅を続け、佐原の勘蔵一家に草鞋を脱ぎます。しかし、やくざ稼業に嫌気が差していた時次郎は、勘蔵一家と権六一家の喧嘩の当日、朝吉を連れて勘蔵一家を後にしますが、朝吉は時次郎を非難し一人で権六一家に乗り込み、命を落とすことに…。

 

渡世の旅を続ける時次郎。やがて一宿一飯の義理のため六ツ田の三蔵(東千代之介)と対決し、彼の命を奪います。いまわの際に三蔵から女房のおきぬ(池内淳子)と息子を、自分の伯父のもとへ送り届けるよう頼まれ、それを引き受けます。三蔵の妻子の待つ場所に行けば、おきぬ親子とはすでに渡し船で出会っていた…。驚きながらも三蔵との約束を果たすため、親子と共に旅をし平穏な暮らしを支えようとする。あせる

 

 

映画作品としては、前段が渥美清の演じる「身延の朝吉」の章であり、後段が東千代之介が演じる「六ツ田の三蔵」の妻女(池内淳子)と時次郎との“情愛”の芝居ということになります。旅先で寝込んだおきぬを看病するうち、二人の想いは募るのですが時次郎は夫を殺めた人物。病が癒えると、おきぬは時次郎の前から姿を消します。

 

それから1年を経過したという場面転換。雪の降る真冬の夜の居酒屋で女将を相手に自分の身の上を架空の“友達”に託して語る時次郎。そこに聞き覚えのある三味線の響きと歌声がする。雪の中、門付けをするおきぬ親子と再会を果たすことになる。

 

40年以上前に初めて本編を見た時、この親子との再会に至る映像シーンの見事さに心を鷲掴みにされたものです。ですので、今回の鑑賞でも漆黒の闇をバックに降る雪を捉えた映像を見た瞬間に、気分は高まりました。映画って本当にいいですね~。パー

 

 


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