2月にスクリーン鑑賞の2本立て記事を続けます。いずれも日本映画の期待の新作。1本目の映画『夜明けのすべて』は、「そして、バトンは渡された」などで知られる人気作家の瀬尾まいこの同名小説を、『ケイコ 目を澄ませて』の三宅唱監督が映画化した期待の作品。ミッドランドスクエアシネマ2(8ポイント獲得の無料鑑賞)。

 

2本目の映画『一月の声に歓びを刻め』は、『繕い裁つ人』『東京組曲2020』などの三島有紀子監督が、自身が47年間向き合い続けてきた過去の出来事をモチーフに撮り上げたオムニバスのドラマ。スクリーン鑑賞した当日は、ラッキーにも三島監督の舞台挨拶が組まれた上映回でした。センチュリーシネマ(シニア会員1,200円)。グッド!

 

夜明けのすべて

『夜明けのすべて』公式サイト

 

以下は映画『夜明けのすべて』公式サイトに記載の紹介ストーリーです。

 

月に一度、PMS〔月経前症候群〕でイライラが抑えられなくなる藤沢さん(上白石萌音)はある日、同僚‧山添くん(松村北斗)のとある小さな行動がきっかけで怒りを爆発させてしまう。だが、転職してきたばかりだというのに、やる気が無さそうに見えていた山添くんもまたパニック障害を抱えていて、様々なことをあきらめ、生きがいも気力も失っていたのだった。あせる

 

職場の人たちの理解に支えられながら、友達でも恋人でもないけれど、どこか同志のような特別な気持ちが芽生えていく二人。いつしか、自分の症状は改善されなくても相手を助けることはできるのではないかと思うようになる。

 

夜明けのすべて 夜明けのすべて

 

瀬尾まいこの原作を読んでいず、その作品世界を知らない私はこの映画の鑑賞前は、日本映画界の人気俳優を起用した恋愛ドラマの一作ではないかと見なしていました。実に見当はずれの鑑賞でしたが、本編は間違いなく今年の“ベスト”の一編です。合格

 

それぞれに外見的には理解されがたい“病気”を抱える2人ですが、共に働く職場の人たちの理解に支えられながら過ごす中で、恋人でも友達でもない同志のような特別な感情が芽生え始めるようになる。自分の症状は改善されなくても、相手の状況が悪くなる気配があれば、その身を助けることはできるのではないかと考えるわけです。

やがて、その“共存”の温かい関係からも、2人はそれぞれに一歩踏み出すことになるラスト。舞台となる会社が、子供向けの科学玩具を作る小さな町工場で、星座やプラネタリウムというのが作品の大きなアクセントになっています。2人の会社の社長を演じた光石研、山添くんの元上司の渋川清彦も温かみのある演技を見せています。パー

 

(2024年、監督・脚本/三宅唱、脚本/和田清人、原作/瀬尾まいこ、撮影/月永雄太、照明/秋山恵二郎、録音/川井崇満、美術/禪洲幸久、音楽/Hi'Spec

夜明けのすべて

 

 

 

                                  

 

一月の声に歓びを刻め

『一月の声に歓びを刻め』公式サイト

 

日本の遠く離れた土地で、それぞれに異なる主人公のもと3編のオムニバスの映像作品が展開します。第1話は北海道の洞爺湖の周辺が舞台。お正月を迎えて、一人暮らしのマキ(カルーセル麻紀)の家に家族が集まるのですが、一家団欒のなごやかな雰囲気とは異なる空気感が漂う…。かつて次女“”れいこ”を亡くしてからは女性として生きてきた“父”のマキに、長女の美砂子(片岡礼子)は訣別の言葉を残し去って行きます。

 

第2話の主人公は、その昔に罪⼈が流されたという⼋丈島に暮らす⽜飼いの誠(哀川翔)。家を飛び出していた娘の海(松本妃代)が5年ぶりに帰省する。誠はかつて交通事故で妻を亡くしており、娘が結婚したことも知らず、今回の帰省の姿にも妊娠している様子が…。それとなく問いかけるものの、何も話そうとしない娘に⼼中穏やかではない。娘の部屋に⼊った際に、そこで⼿紙に同封された離婚届を見てしまう…。爆弾

 

一月の声に歓びを刻め

 

第3話の舞台は⼤阪・堂島。れいこ(前田敦子)は数⽇前まで電話で話していた元恋⼈の葬儀に駆け付けるため故郷にやって来ます。葬儀に参列後、意気消沈して大阪の街を歩んでいると、彼女は「トト・モレッティ」と名乗る“レンタル彼⽒”をしている男(坂東龍汰)から声をかけられます。過去のトラウマから誰にも触れることができなかったれいこは、そんな⾃分を変えるためその男と⼀晩過ごすことを決意する…。

 

本編は、国内外の映画祭で高い評価を受ける三島有紀子監督⾃⾝が長年向き合い続けた“ある事件”をモチーフにスタートしたオリジナル企画とのこと。ベースになっているのは第3話であることは察知できます。それぞれに独立したドラマの3話ですが、そこを貫くテーマが何なのか。それを考えるのが本編鑑賞の肝かもしれません。パー

 

(2024年、監督・脚本/三島有紀子、撮影/山村卓也、米倉伸、美術/三藤秀仁、編集/加藤ひとみ、音楽/田中拓人)

一月の声に歓びを刻め

 


にほんブログ