1970年代から映画館に出掛けることが多くなった私ですが、結婚して家庭を持ってからの10数年間は、ほとんど映画館とは“隔絶”した状態でした。そのため、ちょうど1990年代に公開された映画はまさに“未開”の領域に近く、その時期の作品の上映機会があれば、なるべく出向くようにしています。そんなスクリーン鑑賞の2作品です。

 

1本目の映画『恋人までの距離』は、後にシリーズ的な展開となるリチャード・リンクレイター監督が撮り上げた極上ともいえる恋愛映画。2本目の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』は、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5つの都市で同時刻に走るタクシーで起きる物語をオムニバスで描く、ジム・ジャームッシュ監督の作品。劇場はミッドランドスクエアシネマ(料金一律1,600円×2)。グッド!

 

恋人までの距離(ディスタンス)

 

パリへ向かう長距離列車、隣席の夫婦喧嘩を避けて席を移動してきたフランス人大学生のセリーヌ(ジュリー・デルピー)にアメリカ人青年のジェシー(イーサン・ホーク)が声を掛け、二人は会話が弾む。やがて列車はジェシーの目的地であるウィーンに到着。彼は翌朝のフライトまでの間、一夜限りのウィーン旅行を彼女に提案する。

 

二人はすでに夕方となり観光名所の多くが閉まったウィーンの街を散策する。話題が豊富な二人は絶え間なく会話を続けて、その親密さを深めていきます。やがて明け方を迎える頃には、しっかりと男女の仲になる…。朝のホームで、互いに愛を告白した二人はあえて連絡先を交換せず、半年後に同じ場所で再会することを約束する。恋の矢

 

恋人までの距離(ディスタンス)

 

ウィーンの街を歩きながら二人が交わす、時に他愛なく、時に哲学的な会話の数々が展開する作品です。恋愛に至る過程において、そして恋愛が成就してもなお二人の間で会話が弾むというのはキーポイント。恋愛映画の極みを見せられた気がします。クラッカー

 

劇場公開からビデオ発売までの邦題は『恋人までの距離(ディスタンス)』だった本編。2004年には本作より9年後の二人の姿を描いた続編『ビフォア・サンセット』、さらに2013年にはその9年後を描いた『ビフォア・ミッドナイト』も製作・公開されています。続編に合わせ本編は『ビフォア・サンライズ…』と改題されています。

 

このリチャード・リンクレーターのチームが撮った「ビフォア…」シリーズを、これまで一編も見ていなかった私としては、この第1作をまず見たことをラッキーと捉え、スクリーン鑑賞にこだわらずに、残る2編をできれば“順番”に見てみたいです。パー

 

(1995年、監督・脚本/リチャード・リンクレイター、脚本/キム・クリザン、撮影/リー・ダニエル、編集/サンドラ・エイデアー、音楽/フレッド・フリス)

恋人までの距離(ディスタンス)

 

                                  

 

ナイト・オン・ザ・プラネット

 

この映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』を鑑賞した後に知ったのですが、先の『恋人までの距離(ディスタンス)』を含めて「Filmarks 90’s(フィルマークス ナインティーズ)」という1990年代の名作を映画館でリバイバル上映する新たな企画の一環でした。その企画主旨は有り難いのですが、料金設定はシニアに優しくないな…。

 

ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』は、ウィノナ・ライダーがタクシードライバーを演じるロサンゼルス編から始まり、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキと同時刻のタクシーで起こる様々な出来事を描くオムニバス作品。各編はそれぞれに独立していて、偶然の出会いによるドラマを描写します。

 

ナイト・オン・ザ・プラネット

 

大物エージェントを乗せる若い女性ドライバー(ロサンゼルス)、英語の通じない東ドイツからやって来たばかりの運転手(ニューヨーク)、盲目の女性客と口論する移民のドライバー(パリ)、神父を相手に自身の話を喋り出したら止まらないドライバー(ローマ)、酔っ払い客に翻弄される運転手(ヘルシンキ)が各話の主人公です。

 

冒頭の2編はいずれもアメリカが舞台です。ウィノナ・ライダーとジーナ・ローランズが共演するロサンゼルス編、英語もオートマ車の運転も上手くできないドライバーに代わって乗客(ジャンカルロ・エスポジート)が運転を始めるニューヨーク編。DASH!

 

この2編はとても面白いです。その後の3編は舞台がヨーロッパとなります。陽気な佇まいの演出に終始はしませんが、個人的にとても面白かったのがローマ編。偶然に乗せた神父にせっかくだからと車中で自分勝手に懺悔を始めるドライバー(ロベルト・ベニーニ)。その艶笑話に付き合わされる神父の不幸。悲劇はどこまでも喜劇的。パー

 

(1991年、監督・脚本/ジム・ジャームッシュ、撮影/フレデリック・エルムス、編集/ジェイ・ラビノウィッツ、音楽/トム・ウェイツ)

ナイト・オン・ザ・プラネット

 


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