1月中旬から4週連続で岐阜・柳ケ瀬に“プチ遠征”して、ロイヤル劇場の上映作品を見ました。最初の2週は「芦川いづみ デビュー70周年記念上映」の2本、その後の2週は「加藤泰監督特集」の2本。「迫りくる緊迫感、叙情的映像美」の加藤泰作品です。

 

加藤泰監督の特集上映は、1本目の作品が松竹で撮ったサスペンス映画『みな殺しの霊歌』。東宝で活躍していた佐藤允が、主演して連続殺人犯を演じています。2本目の映画『骨までしゃぶる』は、明治時代の遊郭に生きる女の裏表をリアルかつダイナミックに描いた作品で、主演は桜町弘子。ロイヤル劇場(回数券5,000円②・③)。グッド!

 

みな殺しの霊歌

『みな殺しの霊歌』(1968年、監督・構成/加藤泰、脚本/三村晴彦、原案/広見ただし、構成/山田洋次、撮影/丸山恵司、美術/森田郷平、音楽/鏑木創

 

男との艶めかしい情交の描写があった後、その相手の男性に惨殺される女の描写。この映画の導入はなかなか刺激的です。そして、彼女と共に行動していた有閑マダムの秘密パーティのメンバーが順々に殺されていく。情交の痕跡を残しての連続殺人事件ですが、中原早苗は部長夫人、菅井きんは服飾デザイナーとして登場します。DASH!

 

この連続殺人犯はすぐに主演の佐藤允が演じる人物だとわかりますが、その殺人の動機については少し間を持たせるような展開で明らかになってきます。実は、この川島は殺人犯として全国に指命手配されながら逃げのびていて、あと一年で時効が成立しようとしていた人物。なのに、なぜに凶悪な連続殺人を行うことになったか…。

 

みな殺しの霊歌

 

ある町の工事現場で名を変えて働いていた川島は、クリーニング店で働く少年と親しくなったが、その少年が数人の有閑マダムの開く秘密パーティでなぶりものにされて自殺したことを知る。う~ん、こんな事件が起こるものか、少し信じがたい設定ですが、純情な少年の魂を宿しているような川島は女たちに激しい憎悪を抱くのです。

 

その一方で、川島は行きつけの食堂で働く春子(倍賞千恵子)に好意を寄せるようになる。やがて、彼女が切羽つまった情況で暴れ者のやくざの兄を殺し、執行猶予中の身であることを知り、なおさら想いは募る様子。ここでも彼の純な面が出ています。

 

それでも捜査の立ち遅れた警察を出し抜くように“みな殺し”を完徹すべく行動する川島です。ラストは取り残されて佇む倍賞千恵子のシーンですが、構成として参加した山田洋次の存在を感じる場面でした。松竹映画とは思えない“異色”の作品です。パー

 

みな殺しの霊歌

 

                                   

 

骨までしゃぶる

『骨までしゃぶる』(1966年、監督/加藤泰、脚本/佐治乾、撮影/わし尾元也、録音/中山茂二、照明/井上孝二、美術/鈴木孝俊、音楽/斎藤一郎

 

明治三十年代の東京の廓・洲崎を舞台に、何も知らずに売られてきた貧農の娘(桜町弘子)が、表面は華やかに見える廓の女たちがその裏で傷つきのた打ち回る姿に憐れみと悲しみを覚え、純情な桶職人との幸せを自分の手でつかみとろうとする物語。相手役の桶職人・甚吾郎を演じるのは夏八木勲、本編では初々しさが漂っています。ラブラブ

 

映画の舞台となるのは、洲崎の遊廓「松風楼」です。主人夫婦を演じるのは三島雅夫と三原葉子。法外な借金で自由になれない遊女の世界の仕組みを丁寧に描いて見せます。宮園純子は廓を逃げ出して救世車の保護を受ける女郎役。久保菜穂子は士族の出自でありながら身を落とし、最後は愛想が悪いと客に絞殺されてしまう女郎役です。

 

骨までしゃぶる

 

いずれもスクリーン未見の加藤泰監督の作品でしたから、この2作品の上映に期待値が上がっていましたが、どちらの作品も大いに楽しめました。加藤泰監督の作品を振り返ると、おそらく最初に見た映画はテレビで放送された『緋牡丹博徒』シリーズのどれか…。私自身がリアルタイムで劇場鑑賞したのは『江戸川乱歩の陰獣』です。

 

1970年代の公開映画にこだわる私としては、最も見たかった加藤泰の監督作品は『日本侠花伝』でしたが、こちらは8年前に東京で見ることができました。今回見た『骨までしゃぶる』の逃亡を企てた女郎へのリンチ場面を見ていて、『日本侠花伝』のヒロインが受けるその類のシーンを想起しました。おそらく加藤泰監督はこの類の場面描写が好きだと思います。それで『江戸川乱歩の陰獣』も腑に落ちるわけです。パー

 

骨までしゃぶる

 


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