黒の試走車

 

4月の私の映画鑑賞では2度の岐阜への“プチ遠征”がありました。その遠征の目的は、いずれも岐阜・柳ケ瀬の“昭和の映画館”ロイヤル劇場での旧作日本映画の鑑賞です。土・日曜日の10時からの初回上映に出かけると、上映待ちの観客が20名ほどいて正直ホッとします。私はいつも通り前から5列目あたりのかなり“前目”に陣取ります。

 

今回鑑賞した“昭和”の映画は、1962年公開の大映作品『黒の試走車』。映画のタイトルでは「試走車」に“テストカー”とルビが振られています。梶山季之原作のベストセラー小説を、舟橋和郎と石松愛弘が共同で脚本化し、増村保造が監督しています。未見の増村作品のスクリーン鑑賞です。ロイヤル劇場(料金は一律600円)。グッド!

 

黒の試走車

 

映画のオープニングは黒い覆面車が疾走する描写。完成間近のテスト走行のようですが、その途中で予期せぬ事故が起こる。報道陣には完全に伏せたテスト走行のはずが、翌日の自動車業界紙には、その走行失敗の記事が写真入りで報道される。ドンッ

 

日本初のスポーツ・カーの開発を進めていたのはタイガー自動車。その内容を探り、妨害記事を先導するのがライバル会社のヤマトという設定です。この新たな自動車の開発に関して、いずれが主導権を握るかという業界のトップ争い、そこに絡む人間臭いドラマが展開する。ジャンルとしては“産業スパイもの”とも言われますが…。

 

黒の試走車

 

梶山季之の同名ベストセラー小説を、増村保造監督が田宮二郎主演で映画化した本編は、産業スパイものの先駆けとなった作品といわれます。田宮二郎が演じるのは、タイガー自動車企画部に在籍し、出世コースを夢みるやり手のサラリーマン朝比奈。グー

 

会社の上司である小野田企画部長(高松英郎)と共に協議し、ライバル会社・ヤマトの開発情報を入手すべく様々な策を講じます。ヤマトのキーマンである企画本部長が足繁く通うバーに自分の恋人である昌子(叶順子)を勤めさせて、スパイ的な活動をさせるなど、社内での昇進を小野田から約束された朝比奈は懸命に行動します。

 

私には“産業スパイもの”としてのサスペンスよりも、正直いえばサラリーマン“残酷物語”のように見える一編でした。時に冷酷非情な役柄を演じてハマる田宮二郎ですが、本編では最後に自身の良心に立ち返る姿を見せます。彼以上に強烈な印象を残したのは、勝つことが至上の“戦中派”である企業人を演じていた高松英郎です。パー

 

『黒の試走車』(1962年、監督/増村保造、脚本舟橋和郎、石松愛弘、原作/梶山季之、撮影/中川芳久、美術/山口煕、音楽/池野成

黒の試走車

 


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