劇場も鑑賞日も異なりますが、4月に見た日本映画2本。1本目の映画『劇場版 センキョナンデス』は、YouTube番組を配信するラッパーのダースレイダーと時事芸人のプチ鹿島が、同番組のスピンオフとして立ち上げた選挙取材企画をドキュメンタリーとして完成させた作品(名古屋シネマテーク、会員サービスの誕生日の無料鑑賞)。

 

2本目の映画『あの娘は知らない』は、海辺の町を舞台にそれぞれに喪失感を抱える男女の出会いと再生を描いたドラマ。芸能事務所レプロエンタテインメント主催の映画製作プロジェクト「感動シネマアワード」でグランプリを受賞した企画の映像化で、監督は『真っ赤な星』の井樫彩。劇場はシネマスコーレ(シニア会員1,000円)。グッド!
 

劇場版 センキョナンデス

『劇場版 センキョナンデス』公式サイト

 

ロンドンで育ち海外メディアの情報に精通するラッパーのダースレイダー(東大中退)と、新聞14紙を毎日読み比べしている時事芸人のプチ鹿島(ニュース時事能力検定1級)。このコンビが毎週配信するYouTube番組『ヒルカラ ナンデス(仮)』は、二人の絶妙な掛け合いにより「ヒルマニア」 というコアなファン層を生み出している。

 

二人が番組のスピンオフとして立ち上げたのが選挙をダイレクトに取材する企画。2021年の衆院選、2022年の参院選、合計10数人の候補者に突撃取材を敢行した。ドキュメンタリーのお作法などお構いなしで、ラッパーと芸人の二人は自ら喋りまくり聞きたいことをズケズケ聞いて、相手から思わぬ本音を引き出していく。DASH!

 

劇場版 センキョナンデス


選挙はお祭りとばかりに参院選でもヒリヒリする現場を取材しようと二人は大阪に乗り込みますが、その真っ最中に起こった安倍元首相の銃撃事件。この事件によりドキュメンタリーは想定外の方向に展開していく。街頭演説を取り止める候補者、敢えて行う候補者、対応が分かれるなか、ある候補者の取材中に安倍氏の死を知る。

 

事件の真相が分からぬままネット上に飛び交う無責任な言説を憂い、民主主義とは何かという問いへの答えを探す旅となる企画…。私はYouTubeで配信される番組を見たことはありません。本編をあえてドキュメンタリー映画としたのは、プロデューサーに大島新が加わったからでもあるのでしょう。香川に乗り込んだ突撃取材で、大島監督のドキュメンタリー『香川1区』と類似の映像があり、それは気になりました。パー
 

(2023年、監督/ダースレイダー、プチ鹿島、プロデューサー/大島新、前田亜紀、撮影/LOFT PROJECT、編集/船木光、音楽/The Bassons)

劇場版 センキョナンデス

 

 

 

                                  

 

あの娘は知らない

『あの娘は知らない』公式サイト

 

以下は映画『あの娘は知らない』公式サイトに記載の紹介ストーリーです。

 

若くして、海辺の町にある旅館・中島荘を営む中島奈々(福地桃子)。中島荘が休業中の9月上旬、ひとりの青年・藤井俊太郎(岡山天音)が「どうしても泊めてほしい」と訪ねてくる。彼は一年前に愛する人を失い、その恋人が亡くなる直前に、この旅館に宿泊していたと語る。奈々は亡くなってしまった俊太郎の恋人のことがすぐに思い当たり、彼女について、「笑顔が印象的でした」と振り返る。音譜

俊太郎は恋人の足跡を辿り、彼女の死を理解するために、昼も夜も町に海にと彷徨い、歩き回る。そんな俊太郎の姿を目にしていた奈々は、この土地の案内役を買って出て、いつしか彼と行動をともにするようになり――。

 

あの娘は知らない

 

映画の舞台は波音が穏やかに響く海辺の町で、小さな民宿を営む奈々の日々は静寂に包まれている。若くして家族を亡くしているようですが、誰にも自分の想いを打ち明けずに日々を淡々と過ごしていた。そんな奈々の生活に突如として現れた一人の青年、彼は突然に逝ってしまった恋人の足跡を辿り、この町にやって来たのです。

突然の来訪者に戸惑いつつも、奈々は町を彷徨う青年・俊太郎と行動を共にするようになります。下世話なオヤジの私は、これは二人の恋愛ドラマが展開すると思ったのですが…。それぞれに大きな喪失感を抱えており、お互いを理解するための交流は進みますが、それは男女の恋愛というより、他者に対する尽きない思いやりのように感じました。やさしく打ち寄せる波が、次第に心に満ちていくような映画でした。パー

 

(2022年、監督・脚本/井樫彩、撮影/富田伸二、照明/太田博、録音/光地拓郎、美術/内田紫織、編集/小林美優、音楽/鷹尾まさき)

あの娘は知らない

 


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