「ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ」公式サイト

 

世界で今もっとも熱い視線を集める女性インディペンデント映画監督ケリー・ライカート。そのキャリア初期の4作品を一挙公開する特集上映「ケリー・ライカートの映画たち 漂流のアメリカ」という企画ということでしたから、可能な限り劇場に出向きました。私が見たのは鑑賞順でいけば『ウェンディ&ルーシー』(2008年)、『オールド・ジョイ』(2006年)、『リバー・オブ・グラス 2Kレストア版』(1994年)。 名古屋シネマテーク(シニア会員1,000円×3)。グッド!

 

『ウェンディ&ルーシー』(2008年、監督・脚本・編集/ケリー・ライカート、原案・脚本/ジョン・レイモンド、撮影/サム・レヴィ、美術/ライアン・スミス)

 

主人公のウェンディ(ミシェル・ウィリアムズ)は仕事を求め、愛犬ルーシーを連れて車でアラスカを目指していますが、途中のオレゴンで車が故障。ルーシーの食糧も底をつきそうになり、彼女はスーパーマーケットで万引きをする。店員に見つかって警察に連行され、ウェンディは長時間の勾留の末に釈放されますが、繋いでいた場所にルーシーの姿はありません。

 

映画は、必死にルーシーを探すウェンディの姿を描きますが、そこで出会う人々が実に彼女に協力的で、アメリカ社会も見捨てたものではないな…と思ったりします。しかしながら居どころを見つけたルーシーは、彼女が考えているより恵まれた環境で暮らしている…。その後の別離の選択が、何とも切なくなる作品です。説明的な描写の少ない作品という印象です。パー

 

『オールド・ジョイ』(2006年、監督・脚本・編集/ケリー・ライカート、脚本/ジョン・レイモンド、撮影/ピーター・シレン、音楽/ヨ・ラ・テンゴ)

 

もうすぐ父親になるマークは、ヒッピー的な生活を続ける旧友カートから久しぶりに電話を受けます。それは男同士で旧交を温めるべく、山奥へキャンプへ出かけようという誘い。ゴーストタウンのような町を出て、二人はポートランドの外れ、どこかに温泉があるという山へ向かう―。本編はライカート監督がジョン・レイモンドの短編小説を基に撮り上げた長編第2作。

 

道に迷い、簡単にはたどり着けない温泉地です。予定外の場所で一夜を過ごすことになる二人ですが、彼らの関係について説明的なシーンもなければ、それに関わるセリフのやり取りも殊更にありません。ケリー・ライカートの監督作品はこれまで一本も見ていないと思いますが、今回の企画で見た3作品の中では、個人的にはこの映画がもっとも好きですね。パー

 

『リバー・オブ・グラス 2Kレストア版』(1994年、監督・脚本/ケリー・ライカート、撮影/ジム・ドゥノー、編集/ラリー・フェンデンセン、音楽/ジョン・ヒル)

 

楽園リゾート都市マイアミのほど近く、なにもない郊外の湿地で鬱々と暮らす30歳の主婦コージーは、いつか新しい人生を始めることを夢見ている。空想癖のあるコージーですが、その日常に大きな変化はありません。しかしある日、地元のバーへ出かけたコージーは、うだつの上がらない男リーと出会い親しくなる。そして偶然にもリーは拾った拳銃を持っている。

 

20代最後の年、故郷に戻ったライカートが、逃避行に憧れ、アバンチュールに憧れ、アウトローに憧れて撮り上げた監督デビュー作だという。“ロードの無いロード・ムービー、愛の無いラブ・ストーリー、犯罪の無い犯罪映画”という本編のコピーがありますが、その天邪鬼的な映画とドラマの作りは、映画監督としてのデビュー作としてはいかにも大胆不敵です。パー

 

 


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