作品を見た日にちも劇場も異なりますが、5月の鑑賞作品の“2本立て”記事です。最近、更新ペースが遅れがちですので、先へ進もうと思います。1本目の『海辺の家族たち』は、フランスのケン・ローチと称えられるロベール・ゲディギャン監督が2016年に撮り上げた作品(伏見ミリオン座、シニア会員1,100円)。2本目の『カリプソ・ローズ』は、トリニダード・トバゴを中心に発達したカリブ海地域の音楽ジャンル「カリプソ」の歌手として、80歳で現役のカリプソ・ローズの人生を描いたドキュメンタリー作品。名古屋シネマテーク(シニア会員1,000円)。
以下は映画『海辺の家族たち』公式サイトに記載の紹介ストーリーです。
パリに暮らす人気女優のアンジェル(アリアンヌ・アスカリッド)は、20年ぶりにマルセイユ近郊の故郷へと帰って来る。家業である小さなレストランを継いだ上の兄のアルマン(ジェラール・メイラン)と、最近リストラされて若い婚約者に捨てられそうな下の兄のジョゼフ(ジャン=ピエール・ダルッサン)が迎えてくれる。兄妹3人が集まったのは、父が突然、倒れたからだ。
意識はあるもののコミュニケーションが取れなくなった父と、家族の思い出の詰まった海辺の家をどうするのか、話し合うべきことはたくさんあった。だが、それぞれが胸に秘めた過去が、ひとつひとつあらわになっていく。――
高齢の父が突然倒れたために、久しぶりに兄妹3人が集まることになる。意識はあるもののコミュニケーションが取れなくなった父の介護や、家族の思い出が詰まった家をどうするかなど、相談すべきテーマを前にして、兄妹それぞれが胸に秘めた過去があらわになっていく。
昔なじみの町の人々も巻き込んで、兄妹の家族の絆が崩れそうになっていく。そんなある日兄妹は入り江に漂着した3人の難民の子供たちを発見し、協力して保護するようになります。そこからの展開は、難民の子供たちの存在が兄妹たちの関係の再生につながるのです。
少し前に日本映画で『海辺の彼女たち』(監督/藤元明緒)という作品がありましたが、本編と実によく似たタイトルです。こちらはベトナムからの外国人技能実習生の女性3人を捉えた、ドキュメンタリー作品と見紛うような映画でした。彼女らもまた“難民”のような存在だとしたら、彼女らを受け入れた日本人にとってはどのような“恩恵”があったのでしょうか。
(2016年、監督・脚本/ロベール・ゲディギャン、撮影/ピエール・ミロン、美術/ミシェル・バンデシュタイン、編集/ベルナール・サシャ)
カリプソとは、カリブ海最南端の国トリニダード&トバゴで生まれた大衆音楽。カリブ海地域を代表する音楽で、
現在も世界を飛び回り活躍する80歳のカリプソ歌手、カリプソ・ローズ。彼女の70歳を記念して2011年に制作されたドキュメンタリーの本編。日本では今回が初公開のようです。カリプソ・キングとして知られるマイティ・スパロウとの貴重なライブをはじめとするライブ映像を交えながら、カリプソの女王と称される彼女の苦難と栄光の人生の軌跡を描いています。
パリ、トリニダード&トバゴ、ニューヨーク、西アフリカのベナン共和国。音楽の旅を続ける彼女を追いながら、牧師の娘として生まれながらカリプソ・アーティストを志し、男性中心の音楽業界で名を上げるまでの苦労、歌詞に込める思い、そして結婚をしていない理由など、ローズ本人がナビゲート役を務めながら、その内面に秘めていた事柄まで明らかにしています。
ローズ本人が自身の“ルーツ”にこだわる様子があり、実際に奴隷として売られてきた肉親(祖母)の記憶を語っています。やがて、彼女は自身の“母国”ともいうべき西アフリカのベナン共和国まで出かけて行く。カリプソ・ローズの音楽の世界を前面に打ち出した作品というよりも、その背景にあるカリブの社会や文化の歴史まで考えが及ぶような映画でした。
(2011年、監督・脚本/パスカル・オボロ、製作/ジャン・ミッシェル・ジベ、フィリップ・ジバス、音楽/ティエリー・ブラネル)