田中絹代、原節子と並び“昭和の三大女優”と語り継がれる京マチ子の映画デビュー70周年を記念して、100作品弱ある出演作の中から代表作32作品を上映した「京マチ子映画祭」。東京では2月から3月にかけて開催されましたが、名古屋では5月下旬にようやく伏見ミリオン座で上映が始まりました。その間、京マチ子さんご本人の訃報が報道されており、名古屋での上映は「デビュー70周年記念」というより、追悼上映(あるいは鑑賞)の趣が強くなりました。あせる

 

4月にスクリーン数を増やし移転オープンした伏見ミリオン座が、こうした日本映画の企画上映をすることに感謝をしつつ苦言を少しだけ…。東京の上映32作品からセレクトしたのでしょうが上映作品8本はあまりに少ないです。さらに作品は3~4日替わりの朝1回の上映では、平日に働いている身としては最初から鑑賞のチャンスを逃すことになります。私の場合、スクリーンで見たかった『鍵』『流転の王妃』も上映スケジュールを見て、その場で泣く泣く鑑賞を諦めることになりました…。最初の鑑賞作品は『黒蜥蜴』。伏見ミリオン座(シニア会員1,000円)。グッド!

 

京マチ子映画祭 「京マチ子映画祭」公式サイト

 

黒蜥蜴

『黒蜥蜴』(1962年、監督/井上梅次、脚本/新藤兼人、原作/江戸川乱歩、劇化/三島由紀夫、撮影/中川芳久、美術/間野重雄、音楽/黛敏郎)

 

作品の原作は1934年に発表されている江戸川乱歩の長編小説「黒蜥蜴」。宝石など“美しいもの”を狙う美貌の女盗賊・黒蜥蜴と名探偵・明智小五郎が丁々発止の対決を繰り広げていく冒険譚です。本編はその最初の映画化作品ですが、クレジットに「劇化:三島由紀夫」とあった通り、三島が舞台用に戯曲化した作品を新藤兼人がシナリオ化して映像化しています。

 

映画ファンの世界では、京マチ子主演・井上梅次監督のこの大映作品より、深作欣二監督が松竹で丸山(美輪)明宏主演で撮った『黒蜥蜴』(1968年)の方がカルト的(?)な方向で人気があるように思います。演劇の世界では美輪明宏の代表作のようになっていますから、映画女優・京マチ子としては分が悪いですね(笑)。映画以上にテレビドラマでは幾度も映像化されている中では、天知茂が明智小五郎を演じる“土曜ワイド劇場”が印象に残っています。テレビ

 

黒蜥蜴

 

映画タイトルにもなっている女盗賊の黒蜥蜴(京マチ子)は、宝石など美しいものに異常なまでに固執する。欲しいと思ったものは逃さずに手に入れようとするのですが、この映画の中では宝石商・岩瀬(三島雅夫)の持つ宝石“アラビアの星”と共に、その美しい令嬢・早苗(叶順子)がターゲットになります。岩瀬は金に糸目を付けず明智小五郎(大木実)を雇います。グー

 

大阪のホテルで早苗の誘拐をまんまと成功したと思った黒蜥蜴ですが、明智は部下を各所に配置していて、早苗はその部下によって取り返されます。その場に居合わせた緑川夫人を黒蜥蜴だと見破った明智ですが、黒蜥蜴は大胆な変装でその場を逃れます。そして、二人の闘いは第2ラウンドへ…。東京へ戻った岩瀬は早苗を自室に閉じこめ、用心棒も置いて厳重に警戒するのですが、その警戒の目を潜って黒蜥蜴は再び早苗の誘拐に成功するのです。

 

終盤に展開する黒蜥蜴のアジトでは、人間の剥製や数々のダイヤモンドなど彼女の宝物と考えるものが映し出されますが、美女を剥製にするという発想も凄いですね。窮地に陥っている早苗の前に、またもや名探偵・明智は現れます。それはヒロインの早苗や観客以上に黒蜥蜴本人が望んだことでもあるよう。敵対しながら愛しているのか、愛しながら敵対しているのか、さっぱりわかりませんが、三島由紀夫が戯曲化したドラマはそういう世界を描いています。パー

 

黒蜥蜴

 


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