今年度の「午前十時の映画祭」も最終盤になりました。「事件は現場で起きている!」のコピーで企画された2本、『狼たちの午後』(1975年)と『大統領の陰謀』(1976年)は共に1970年代の製作・日本公開ですが、私はどちらもスクリーン未見でした。1970年代はそれなりに映画を見ていたはずなのに、どうして見逃しているのか…。少し考え、両作が1976年の日本公開で私が高校3年だったことに気づき、合点が行きました。私も一応“受験生”でしたから…。DASH!

 

ですので、この2作品はすでに「映画祭」で劇場鑑賞を終えています。まず最初に記事にするのは、シドニー・ルメット監督の『狼たちの午後』『セルピコ』(1973年)でタッグを組んだルメット監督とアル・パチーノが再びタッグを組み、実際に起きた犯罪事件をもとに緊張感に満ちたサスペンスに仕上げています。劇場はミッドランドスクエアシネマ(シニア当日1,100円)。グッド!

 

午前十時の映画祭

 

狼たちの午後

『狼たちの午後』(1975年、監督/シドニー・ルメット、脚本/フランク・ピアソン、撮影/ビクター・J・ケンパー、美術/チャールズ・ベイリー、編集/デデ・アレン)

 

以下は「午前十時の映画祭9」の公式サイトに記載されている映画『狼たちの午後』の紹介ストーリーと解説です。

 

1972年8月22日、ニューヨークは茹だるような暑さだった。14時57分、ブルックリンのチェイス・マンハッタン銀行に3人の強盗が押し入った。10分もあれば済む計画だったはずが、1人が怖気づいて逃走。だがソニー(アル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)がそれ以上に予想外だったのは、行内に現金がほとんど残っていないことだった。途方に暮れるソニーの元に、警察から銀行は完全に包囲した、武器を捨てて出てこいと電話が入るが―。

 

真夏のNYブルックリンで銀行強盗事件が発生。犯人の二人は人質を取って銀行内に立て籠もるが、それを取り囲む警官隊、興奮する野次馬、押し寄せるマスコミが事態をさらにエスカレートさせていく―。後に大ヒット作『スター誕生』の脚本・監督を手掛けたフランク・ピアソンが本作でアカデミー脚本賞を受賞した。クラッカー

 

狼たちの午後

 

映画の原題「Dog Day Afternoon」は日本語でいえば「盛夏」を意味する熟語表現ですが、それを邦題では「狼たちの午後」と大胆に変えています。“Dog”から狼へイメージを膨らませたのかもしれませんが、実のところ映画に描かれる強盗たちは“狼”には似ても似つかないヘタレな野郎。3人組で押し入りますが、そのうちの1人は強盗が怖くなって逃亡してしまいます。

 

残る2人で何とか銀行の占拠には成功するものの、金庫を開けると狙っていた大金は他に移された直後でない…。しかも手間どっているうちに通報が行ったのか、建物の周囲を警官隊に取り囲まれてしまう。やむを得ず2人は人質を盾にして、銀行に籠城することになる。もはや現金を奪取する目的も叶わず、ソニーとサルの望みはそこから安全に脱出することに…。あせる

 

警察と交渉を行うソニーは元銀行員で銀行内の事情にも通じ、銃を手にしつつも手荒な手段を取ることを選ばないタイプです。もう一人のサルは言葉が少なく、何を考えているのかわからないタイプ。緊張感が続くと、何かの拍子に暴発しそうな雰囲気が漂っています。ソニーはその相棒の“狂気”を交渉の際にチラつかせたりする。ヘタレですが、知恵は回ります(笑)

 

狼たちの午後

 

やがて包囲する警官隊の周りにはマスコミが集まり、さらに野次馬の市民たちがこの犯罪現場を見ようと群がるようになる。そんな衆目の集まる中、単身で警察との交渉を進めるソニーの行動に喝采を上げる野次馬たちも出てくる。このあたりの反体制的な言動にすぐに同調する輩が多いのは、やはり1970年代の時代を捉えているようで、実に興味深かったです。目

 

また、ソニーが警察に対して要望を出していく中、彼が犯行に走った理由も明らかになるのですが、(1970年代を「現代」とすれば) まさに“現代社会”を表象するような犯罪事件ともいえます。真夏の猛暑の中、現場での膠着状態は続きます。警察と交渉をするソニーですが、一方で相棒であるサルの緊張をとくことも必要になる。この二人の間にも緊張感があります。

 

いつか暴発するのではないか…危険な雰囲気の漂うジョン・カザールは、セリフは少ないのですが、その佇まいや演技は印象的です。一方、カザールとは対照的に圧倒的なセリフ量のアル・パチーノ。『ゴッドファーザー』、『セルピコ』、『ゴッドファーザーPARTⅡ』そして本編と、この時期は毎年アカデミー賞候補になる活躍ぶり。とはいえ、この演技派の名優がオスカーを獲得するのは『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992年)まで待たなくてはなりません。パー

 

狼たちの午後

 


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