名古屋で新作映画も見ていますし、東京で日本映画の旧作も見て来ましたが、名古屋の名演小劇場「大映男優祭」の鑑賞作品を続けて紹介しておきます。購入した3枚目の前売券で鑑賞したのは、市川雷蔵主演の『陸軍中野学校』。時代劇を中心に活躍していた市川雷蔵としては、時代劇以外のジャンルでシリーズ化された異色作です。シリーズの第1作となる本編は増村保造監督がメガホンを取っています。大映を代表する増村保造監督、若尾文子の主演映画以外にも“いい作品”を撮っていますね。劇場は名演小劇場(前売券にて1,000円)。グッド!

 

大映男優祭「大映男優祭」公式サイト

 


『陸軍中野学校』(1966年、監督/増村保造、脚本/星川清司、撮影/小林節雄、美術/下河原友雄、編集/中静達治、音楽/山内正)

 

戦時下の1938年10月、陸軍少尉・三好次郎(市川雷蔵)は所属する連隊で草薙中佐(加東大介)と名乗る男の訪問を受ける。その1週間後、三好は陸軍省に出頭せよとの極秘命令を受けたことで、母(村瀬幸子)と許嫁の雪子(小川真由美)には出張と偽って東京に向かう。翌朝靖国神社近くのバラックには、三好をはじめ18人の若い陸軍少尉が各地から集まっていた。

 

彼らの前に現れた草薙は、エリート軍人で構成された参謀本部とは異なる、世間離れしていない優秀なスパイを養成すべく、彼らを集めた目的を熱く語ります。幹部候補生である18名はとまどう暇もなく、外部との連絡を一切絶ってスパイ養成の訓練を受けることに。彼らは軍服を背広に着換え、変名を与えられ、軍隊用語は話さないようにしなければならなくなる。パンチ!

 

訓練は柔道から飛行機の操縦にまで及び、政治、経済、外交問題については大学教授の講義を受ける。やがて彼らは中野電信隊跡に移動し、そこでさらに実地の訓練を受けていく。変装、ダンス、名の知れた金庫破りによる窃盗術や、生理学者による女の肉体を喜ばせる方法(?)まで。会社員の集団を装って遊郭での実習もあり、そこだけは羨ましい気分に…(笑)

 

 

一方、音信不通の恋人・三好を探していた雪子は、彼を探す手がかりを求めて参謀本部の暗号班にタイピストとして勤めるようになる。一年間のスパイ教育を終えようとしていた三好たちは、卒業試験として英国外交電報の暗号コードブックの入手を命じられる。彼らは英国領事館から写真撮影でそれを入手しますが、なぜか英国の暗号はすぐに変更されてしまいます。あせる

 

三好は参謀本部から秘密が洩れたのではないかと疑って出向きますが、そこで雪子の姿を目にする。不審に思って尾行してみると、雪子はかつて勤めていた商事会社の英国人上司ラルフと連絡を取っていた。彼が英国側のスパイであり、恋人探しに懸命な雪子は彼に巧妙に利用されていたことがわかります。やがて覚悟を決めた三好は、雪子の前に姿を現します。

 

ここからエンディングに至る展開は完全にネタバレになりますから、半世紀以上前の映画でもこれから鑑賞予定の方はどうぞスルーしてください――。三好は草薙と相談の上、憲兵隊に彼女が連行される前に、自らが彼女の命を奪うことを決断します。その決意を秘めて彼女の前にやって来た三好ですが、彼からホテルに誘われた雪子は心も気分も高まったまま・・・。

 

結婚を約束した恋人同士でありながら、1年のスパイ教育を経た三好は本当に非情な行動を選択します。さほど苦悩した様子もない三好を見ていると、軍事教育の悪しき面が出たイヤな奴に思えるはずですが、演じているのが市川雷蔵のせいかイヤな面が浮上してきません。かつての恋人殺しを演じて見せて、嫌らしくならないのが雷蔵のスターたる所以なのでしょう。パー

 

陸軍中野学校
 

 


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