5月12日から始まった名古屋・名演小劇場の「大映女優祭」ですが、私は事前に前売券を5枚購入しておきました。いまだスクリーン未見の作品をできるだけ見ようと決めていましたから、結果的には“若尾映画”は今回は完全に鑑賞スルーとなりました。本当は『妻は告白する』『清作の妻』はもう一度見たかったのですが、残念でなりません。その代わりと言っては何ですが、2本の増村保造監督の作品を鑑賞。ともに女優の裸体が印象に残る、安田道代主演の『痴人の愛』と渥美マリ主演の『でんきくらげ』。名演小劇場(前売券にて1,000円×2)。グッド!

 

大映女優祭 「大映女優祭」公式サイト

 

痴人の愛

『痴人の愛』(1967年、監督/増村保造、脚本/池田一朗、原作/谷崎潤一郎、撮影/小林節雄、美術/間野重雄、編集/中静達治、音楽/山本直純)

 

映画の原作は文豪・谷崎潤一郎の代表作の一編。昭和ではなく大正時代、1世紀近くも前に書かれた小説は、カフェーの女給として出会った少女を引き取り、いずれは自分の妻にしようと思った真面目な男が、次第に小悪魔的な少女の奔放な行動に翻弄されていく姿を描いているとのことです。恥ずかしながら日本を代表する文豪の原作、私は読んではおりません。あせる

 

この1967年の増村保造監督の作品は3度目の映画化になりますが、時代設定は公開当時の「現代」に置き換えられています。少女だったはずのナオミの年齢も安田道代が演じることもあって、すでに18歳になっているという設定です。小沢昭一が演じる主人公・譲治は、精油所で働く技師で、少女の面影を残すナオミを教育し、理想の女に作り上げようとこだわります。

 

譲治はナオミに教養をつけさせようと、ピアノやイタリア語を習わせますが、ナオミは大学生の浜田(田村正和)や熊谷(倉石功)らのボーイフレンドと遊びまわり、勉強はそっちのけ。さらに彼女がボーイフレンドの誰彼の見境もなく身を任せているという噂が、譲治のもとにも伝わってきます。“公衆便所”なんていう下卑た表現がナオミに与えられているので驚愕します。ドンッ


痴人の愛

 

ナオミを問いつめる譲治ですが、ナオミは巧みにその鉾先をかわし、逆にその磨きあげた肉体の魅力で譲治を服従させるのです。しかし、不安と疑惑を拭いきれない譲治は、隣家の花村医師(内田朝雄)に自宅の監視を依頼。その結果、ナオミは浜田とも熊谷とも関係あることがわかり、二人は激しい口論を行った末、ナオミは着のみ着のままで家を出ていきます。DASH!

 

譲治はナオミに関する日記や写真を焼き、彼女と完全に縁を切ることを決心します。その後、ナオミについてのスキャンダルを耳にしても、もはや心動かされない譲治のようでしたが、ある日、うらぶれた様子のナオミが衣類を取りに来たことを口実に家に来ます。惜し気もなく肌をあらわにして着替えるナオミを見ると、譲治の抱いていた固い決心も揺らぎ始めるのです。

 

映画は冒頭からナオミの姿を撮影する譲治を捉えています。自宅に暗室まで備えている譲治は、かなりの撮影マニアです。彼女のヌードを含めて、様々な肢体を捉えた写真がスクリーンに大写しになりますが、そういう意味では安田道代さんのファンにとっては必見の映画といえます(笑)。還暦オヤジの私としては、驕慢なナオミに奴隷のように従う小沢昭一の姿に同情を禁じ得ません。その一方で、彼の変節や嗜好が少なからず理解できる部分もあります。パー

 

痴人の愛

 

                                                  

 

でんきくらげ

『でんきくらげ』(1970年、監督・脚本/増村保造、脚本/石松愛弘、撮影/小林節雄、美術/渡辺竹三郎、編集/中静達治、音楽/林光)

 

1970年といえば「大阪万博」開催の年で、私は小学6年になっていました。公開時に渥美マリさんの映画を見ることはできていませんが、その名前と共にヌードになる女優さんというイメージは記憶の底に貼りついています。『いそぎんちゃく』『でんきくらげ』『しびれくらげ』いった映画タイトルと画像を、きっと小坊の頃に芸能雑誌か何かで見ているからなのでしょうね。

 

ですので、私にとっての芸能人の“マリ”といえば、アイドル歌手の天地真理ではなくて、映画の世界で活躍し、幼い私にスケベ心を育んでくれた(?)大映女優の渥美マリ、そして日活女優の田中真理ということになります。渥美マリ主演の映画といえば、大映末期の“軟体動物シリーズ”ということになりますが、今回ようやく念願かなってスクリーン鑑賞ができました。クラッカー

 

ヒロインの渥美マリが演じるのは、洋裁学校に通う19歳の美しい娘・由美。母親トミ(根岸明美)は場末のバーに勤めながら女手一つで由美を育てていますが、 ある日、トミが留守の間に情夫の吉村(玉川良一)が由美を犯してしまう。それを知ったトミは吉村を包丁で刺し殺して服役することに。生活に困った由美はトミに黙って、母が働いていたバーで働くようになる。

 

でんきくらげ

 

美貌の由美はバーで人気も出て、結婚を申し込んでくる客もいる一方、地回りのやくざ・風間(木村元)に目をつけられ、自分の情婦になるようしつこく詰め寄られる。その窮地は警察への通報で難を逃れるが、警察から釈放されると風間と彼の舎弟(平泉征)は由美の働くバーに暴れ込んでくる。偶然客として店に居合わせた野沢(川津祐介)がその場を納めてくれる。

 

野沢は銀座の高級クラブのマネージャー兼スカウトだったこともあり、由美を自分の店に引き取らせてほしいと彼女の働くバーのマダムに提案。やがて銀座のクラブに移った由美は水を得た魚のようにホステスとして人気を得ていく。彼女は助けてもらった野沢に対して恋心をあらわにしますが、彼は「商売物には手を出さない」と由美に対してつれない態度を取ります。ハートブレイク

 

その後、由美はクラブの上得意客とポーカー勝負で夜を共にするようになります。そのことでクラブのママや同僚ホステスから反発を受けると、クラブのオーナー社長(西村晃)の提案を受け入れて彼の愛人として暮らすように。その状況になると、クールだった野沢の心にも波立つものがあります。社長の死去後に由美と野沢が初めて結ばれるシーンは、終盤近くに用意された魅惑的な“濡れ場”でしたが、それはラブ・ロマンスの終わりの始まりのようでした。パー

 

でんきくらげ

 


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