江戸の浮世絵師として数多くの作品を残した葛飾北斎と、その制作をサポートし続けた
娘・お栄を取り巻く人間模様を、江戸情緒たっぷりのアニメーション映像で綴った『百日
紅 ~Miss HOKUSAI~』。ブロガーさんにもなかなか評判が良いようですが、これは評
判に関係なく劇場鑑賞の予定の作品でした。同名の原作漫画を描いた杉浦日向子は、
1958年の同年生まれで、1980年代はその作品をよく読んでいたましたから。40代の若さ
で亡くなり、すでに10年を過ぎんとするわけですから、こうした“復活”はファンには嬉しい
限りです。劇場は引き続きTOHOシネマズ名古屋ベイシティ(無料鑑賞・SA☆☆)。
『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』公式サイト
時代は江戸の後期、庶民に活力があり、様々な風俗を描いた浮世絵が版元を通じて売
られている。当時の人気の浮世絵師といえば、大胆な画風の葛飾北斎(声/松重豊)
だが、この作品の中心人物はその娘・お栄(声/杏)である。彼女は父であり師匠でも
ある北斎とともに暮らし、絵を描いている浮世絵師“Miss HOKUSAI”ということになる。
登場してきた時点でお栄は23歳とのことだが、その画力はすでに父からも認められてい
る。彼女は父・北斎の“代筆”も平気で行っているが、このあたりは当時の出版事情とと
もに「北斎」の名がすでに“ブランド化”していることを理解しないといけないのでしょう。
この当時に彼女の描いたものは、当然「北斎」の名で世に出て流通しているはず。
北斎は妻・こと(声/美保純)が住む住居とは別に、仕事に専念する部屋を長屋に構え
ている。そこにはお栄のほかに善次郎(声/濱田岳)も同居し、浮世絵師として世に出
ようとしている。現代的に解釈すれば、仕事をする他ない制作プロダクションの事務所
のようなものです。ここに棲みついた犬の描写には、心なごませるものがあります。
そして“北斎プロ”の事務所(?)ですから、様々な人物の往来があります。絵師の歌川
国直(声/高良健吾)や版元の萬字堂(声/立川談春)もやって来ますが、その都度
北斎たちの風変わりな共同の作画生活が綴られる。国直はお栄に想いを寄せている
のですが、彼女には別の“想い人”がある。しかし、不器用な彼女の恋は実りません。
それでも絵に色気がないと言われれば、閨の営みを求めて男衆を買いに出かける。そ
の絵に対する向上心に感心もしますが、下世話な私は“男”を売る商売がすでにこの時
代にあることに目を奪われます。人間の根源的な営みであるセックスに関しては、江戸
時代も現代もさほど違いがない。そんな庶民感覚を教えてくれる作品でもあります。
とはいえ妖怪騒ぎのエピソードや、北斎の盲目の末娘・お猶(声/清水詩音)の末期の
描写など、怪奇で霊的なものの捉え方には近代的な科学とは異質なものがあります。
神仏や霊的なものに対して、やはり現代人より信心深いわけです。お栄が常に励まし、
明るく接していた幼いお猶の死は、その際の百日紅の描写とともに心に強く残ります。
江戸の風物や情緒を、移り変わる四季を通して鮮やかに描いた本編のアニメ画像は、
原作・杉浦日向子の作品のタッチとは異なりますが、現代のアニメ映画として新たな魅
力を発揮しているのは間違いないです。1981年の映画『北斎漫画』では、田中裕子演じ
るお栄は北斎のもとを去っていきますが、この『百日紅』では北斎没後、新時代の明治
を迎えてもなお健在だったお栄の消息を伝えます。時代を超える逞しさがあります。
『北斎漫画』(1981年、監督/新藤兼人)
(2015年、監督/原恵一、脚本/丸尾みほ、原作/杉浦日向子、音楽/富貴晴美)
![](https://img-proxy.blog-video.jp/images?url=http%3A%2F%2Fmovie.blogmura.com%2Fmoviememo%2Fimg%2Fmoviememo88_31.gif)
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娘・お栄を取り巻く人間模様を、江戸情緒たっぷりのアニメーション映像で綴った『百日
紅 ~Miss HOKUSAI~』。ブロガーさんにもなかなか評判が良いようですが、これは評
判に関係なく劇場鑑賞の予定の作品でした。同名の原作漫画を描いた杉浦日向子は、
1958年の同年生まれで、1980年代はその作品をよく読んでいたましたから。40代の若さ
で亡くなり、すでに10年を過ぎんとするわけですから、こうした“復活”はファンには嬉しい
限りです。劇場は引き続きTOHOシネマズ名古屋ベイシティ(無料鑑賞・SA☆☆)。
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/187.gif)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20150522/18/iwashima555/76/3d/j/t02200312_0565080013314713601.jpg?caw=800)
時代は江戸の後期、庶民に活力があり、様々な風俗を描いた浮世絵が版元を通じて売
られている。当時の人気の浮世絵師といえば、大胆な画風の葛飾北斎(声/松重豊)
だが、この作品の中心人物はその娘・お栄(声/杏)である。彼女は父であり師匠でも
ある北斎とともに暮らし、絵を描いている浮世絵師“Miss HOKUSAI”ということになる。
登場してきた時点でお栄は23歳とのことだが、その画力はすでに父からも認められてい
る。彼女は父・北斎の“代筆”も平気で行っているが、このあたりは当時の出版事情とと
もに「北斎」の名がすでに“ブランド化”していることを理解しないといけないのでしょう。
この当時に彼女の描いたものは、当然「北斎」の名で世に出て流通しているはず。
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/178.gif)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20150522/18/iwashima555/25/73/j/t02200124_0640036013314713598.jpg?caw=800)
北斎は妻・こと(声/美保純)が住む住居とは別に、仕事に専念する部屋を長屋に構え
ている。そこにはお栄のほかに善次郎(声/濱田岳)も同居し、浮世絵師として世に出
ようとしている。現代的に解釈すれば、仕事をする他ない制作プロダクションの事務所
のようなものです。ここに棲みついた犬の描写には、心なごませるものがあります。
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/139.gif)
そして“北斎プロ”の事務所(?)ですから、様々な人物の往来があります。絵師の歌川
国直(声/高良健吾)や版元の萬字堂(声/立川談春)もやって来ますが、その都度
北斎たちの風変わりな共同の作画生活が綴られる。国直はお栄に想いを寄せている
のですが、彼女には別の“想い人”がある。しかし、不器用な彼女の恋は実りません。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20150522/18/iwashima555/15/b7/j/t02200124_0640036013314713599.jpg?caw=800)
それでも絵に色気がないと言われれば、閨の営みを求めて男衆を買いに出かける。そ
の絵に対する向上心に感心もしますが、下世話な私は“男”を売る商売がすでにこの時
代にあることに目を奪われます。人間の根源的な営みであるセックスに関しては、江戸
時代も現代もさほど違いがない。そんな庶民感覚を教えてくれる作品でもあります。
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/304.gif)
とはいえ妖怪騒ぎのエピソードや、北斎の盲目の末娘・お猶(声/清水詩音)の末期の
描写など、怪奇で霊的なものの捉え方には近代的な科学とは異質なものがあります。
神仏や霊的なものに対して、やはり現代人より信心深いわけです。お栄が常に励まし、
明るく接していた幼いお猶の死は、その際の百日紅の描写とともに心に強く残ります。
江戸の風物や情緒を、移り変わる四季を通して鮮やかに描いた本編のアニメ画像は、
原作・杉浦日向子の作品のタッチとは異なりますが、現代のアニメ映画として新たな魅
力を発揮しているのは間違いないです。1981年の映画『北斎漫画』では、田中裕子演じ
るお栄は北斎のもとを去っていきますが、この『百日紅』では北斎没後、新時代の明治
を迎えてもなお健在だったお栄の消息を伝えます。時代を超える逞しさがあります。
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/106.gif)
![北斎漫画](https://stat.ameba.jp/user_images/20150530/16/iwashima555/ce/5e/g/t02200165_0350026313322319871.gif?caw=800)
(2015年、監督/原恵一、脚本/丸尾みほ、原作/杉浦日向子、音楽/富貴晴美)
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20150522/18/iwashima555/30/de/j/t02200124_0640036013314713600.jpg?caw=800)
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