名古屋駅からJR・名鉄を乗り継ぎ、名鉄刈谷市駅前にあるビルの5階に位置する映画館、刈谷日劇に何度か出かけた。スクリーン1は比較的最近の映画を上映し、料金は大人1,700円。スクリーン2は洋邦問わない作品の2本立て上映を行っていて、料金は一律800円というシステム。ポイントカードの特典サービスがあり、料金の安いスクリーン2に通ってたまったポイントで、今回、料金の高いスクリーン1で新作『猿の惑星 新世紀』を鑑賞しました。刈谷日劇スクリーン1(5ポイント獲得による無料鑑賞)。

 『猿の惑星 新世紀(ライジング)』公式サイト
 
SF映画の名作ともいわれる『猿の惑星』(1968年)の前日譚として撮り上げられた『猿の惑星  創世記(ジェネシス)』(2011年)の続編のこの映画。前作を劇場で見ていなかった私は、事前にツタヤのDVDで「創世記」を鑑賞し、猿のリーダーであるシーザーの成り立ちと、人間との関係を“予習”した上で作品鑑賞に望みました。

本編の設定は、カリスマ的な統率力を誇るシーザー(アンディ・サーキス)が仲間を率いて人類への反乱を起こしてから10年後。知能と言語の獲得により、猿たちはさらに進化を遂げ、独自の文明を作り上げて、森の奥に平和なコミュニティを築いている。一方、10年前に生み出したウィルスにより人類は90%が死に追いやられ、わずかに生き残った者たちは、荒廃した都市部に身を潜め、ひっそりと暮らしていた。

 

そんなある日、人間たちが水力発電のダムに行くために森の中に侵入して来る。そのグループを率いる人間側のリーダーはマルコム(ジェイソン・クラーク)。一触即発の緊張が走る中、シーザーはマルコムの言動を信用し、すぐには敵対しない。

しかし、人間たちに虐げられてきた過去が忘れられないコバ(トビー・ケベル)は、共存よりも対立を望み、シーザーの弱腰を批判。いわば猿軍団の“武闘派”リーダーで、その腕力にシーザーの息子が一時的に憧れる。そんなエピソードもあります。

猿のコミュニティにおける危うい緊張は、やがてシーザーが銃弾に倒れたことで崩れます。コバがリーダーとなり、人間たちの居住地域を大挙して襲い、銃器を奪い、人間たちを制圧していきます。その人間たちの危機を救うのは、負傷を押して駆けつけたシーザーであり、彼を親身になって介抱するマルコムとの信頼関係です。 
 


この映画では、表情豊かな猿たちが大挙して登場し、人間たちを襲うシーンではスクリーンにこれでもかというほどの大群として迫力を生みます。それに伴う派手なアクションシーンも見ごたえがあり、この映画の作り手の技術の高さがうかがえます。そして、シーザーを始めとする猿たちの細かな表情の描写に驚きです。

過去の「猿の惑星」シリーズではありえなかったことでしょうが、本編の主役は明らかにアンディ・サーキス演じる猿のシーザー。彼の喜怒哀楽や苦悩の表情は、たしかに人間以上で、その“猿相”はいかにも善人風(?)です。シーザーと対立するコバのいかにも悪人風(?)の“猿相”と比べれば、そのコントラストは鮮やかです。

猿の世界が“武闘派”と“穏健派”に分かれて対立したように、人間たちの世界でもシーザーを信じるマルコムに対して、ドレファス(ゲイリー・オールドマン)は異議を唱えて対立する。それが終盤のタワー爆発の見どころになりますが、最後はシーザーが存在感を増して“ジ・エンド”。もはや人間たちに勝ち目はない気がしますが、このシリーズは人類不在、“猿”の惑星が誕生する「次作」もあるのでしょうか。

(2014年、監督/マット・リーヴス、脚本/マーク・ボンバック、リック・ジャファ、アマンダ・シルヴァー、撮影/マイケル・セラシン)