1970年代の人気マンガで、西城秀樹の主演で映画化もされている
「愛と誠」。今回の三池崇史監督の手による映画『愛と誠』は、かつて
の映画のリメイクというより、1970年代にヒットした歌謡曲を使い、そ
れを役者が歌いながら物語が進むミュージカル仕立てになっている。
随分と多くのブロガーの方が記事にしていたが、70年代の原作・映
画を知る世代のブロガーの方からは、本作を「別物」と割り切って楽
しむようアドバイスをいただいた。劇場は109シネマズ名古屋にて。
映画のプロローグとエピローグはアニメーション。幼い日の早乙女愛
と太賀誠の出会いが描かれる。実写部分と異なり、いたって真面目。
そして、昭和のアングラな雰囲気を漂わす東京の街に現れる太賀誠。
さっそく歌とともにケンカをはじめるが、その場に居合わせた早乙女愛
は、誠の額の傷に気がつき、一瞬にして恋に落ちる。早乙女財閥の令
嬢の愛は、札付きの不良の誠を更生させようと献身的に尽くすのだ。

誠からお金を無心されると、愛は校則を破り、怪しげなカフェでアルバ
イトを始める。やがて愛する誠の後を追って、不良の掃き溜めといわ
れる花園実業へ転入する愛。そして、彼女を一途に愛し守ろうとする
優等生の岩清水も、彼女の後を追い花園実業へ転入してくるのだ。
そして、役者は揃うことになる。スケバングループのガムコ、学校を陰
で支配する「裏番」の高原由紀、そして由紀の用心棒ともいうべき座王
権太。やがて学校全体を巻き込んで大乱闘が繰り広げられる。大人数
を相手に単身で闘う太賀誠、そして徹底的に足手まといになる愛。

運命の人・太賀誠へ惜しみなく愛を注ぐ早乙女愛。映画の武井咲が
演じる愛は、ナルシストというか、かなり脳天気なお嬢様ぶりだ。そし
て愛に一途に思いを寄せる岩清水弘のテンションも、常に高い。
そもそも原作マンガが連載されていた70年代の頃に、すでに岩清水
の「君のためなら死ねる!」のフレーズなど、茶化しやギャグの対象
だったはずだ。原作者・梶原一騎の思いとはまた別のところで、連載
マンガはヒットし、多くの読者に読まれていたのではないかと思う。
そして映画は、ふざけてもいない、茶化してもいない。様々な「愛」の形
を描いた、このミュージカル仕立てのアプローチは、極めてまっとうな
ものに私には思われる。「〇〇のため」の大義が失われた1970年代、
その時代の戯画化を巧みに成し遂げている。そこに感心するのだ。

△「あの素晴しい愛をもう一度」(武井咲) △「オオカミ少年ケンのテーマ」(井原剛志)
早乙女愛の両親(市村正親、一青窈)のダンスシーンで使われる楽曲
以外は、主に1970年代のヒット歌謡。ざっと年代順に並べると以下、
1963年~「オオカミ少年ケンのテーマ」・・・井原剛志(座王権太)
1966年~「夢は夜ひらく」(園まり)・・・大野いと(高原由紀)
1971年~「あの素晴しい愛をもう一度」(ザ・フォーク・クルセダーズ)・・・武井咲(早乙女愛)
1971年~「空に太陽がある限り」(にしきのあきら)・・・斎藤工(岩清水弘)
1971年~「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)・・・安藤サクラ(ガムコ)
1974年~「激しい恋」(西城秀樹)・・・妻夫木聡(太賀誠)
1976年~「酒と泪と男と女」(河島英五)・・・余貴美子(太賀トヨ)
個人的には、主役とヒロインの妻夫木聡、武井咲。それとテンション高めの
斎藤工の御三方には、できればもう1曲づつ披露していただきたかった。
(2012年、監督/三池崇史、脚本/宅間孝行、原作/梶原一騎・ながやす巧、音楽/小林武史、撮影/北信康)