今年になってからアカデミー賞を受賞した『アーティスト』や、日本
映画でも堤幸彦の『MY HOUSE』と全編モノクロ映像の映画が
公開された。ということで久しぶりに「カラー時代のモノクロ映画」。

今回は1986年公開の熊井啓監督の『海と毒薬』。遠藤周作の同
名小説の映画化で、太平洋戦争末期、米軍捕虜8名を生体解剖
した事件を二人の研究生の目を通して描いた問題作だ。
 
海と毒薬
 

海と毒薬 デラックス版 [DVD]/奥田瑛二,渡辺謙,田村高廣

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舞台は昭和20年の九州、米軍機による空襲が繰り返され、敗戦も
間近の頃。F帝大医学部の研究生、勝呂(奥田瑛二)と戸田(渡辺謙)
は、なかば投げやりな日々を送っていた。戸田は徹底したリアリスト、
一方、勝呂は自分の最初の患者が気になるヒューマニストである。

戦争も末期だというのに、この大学の医学部長の椅子をめぐる思惑で
勝呂たちが所属する第一外科は、橋本教授(田村高廣)自らオペを行う。
相手は前医学部長の姪で、簡単な手術のはずがオペに失敗してしまう。

海と毒薬 

橋本の医学部長への道が困難になった第一外科は、西部軍の軍医が
提案する米軍捕虜の生体解剖に踏み出す。極秘のオペに参加するの
は橋本教授、柴田助教授(成田三樹夫)、浅井助手(西田健)、そして
大場看護婦長(岸田今日子)と看護婦の上田(根岸季衣)ら。

最後まで参加に迷っていた勝呂は、手術中まったく役に立たない。戸田
は勝呂に代わって冷静に対応する。そして、数名の軍人たちは手術が
始まればそれを勇んで見学し、終われば宴会に興ずるのだ、、、

海と毒薬 

この映画、戦時下の大学病院での外科手術を、その細部の道具
にもこだわり再現している。その手術シーンがこの映画にとっては
重要なので、臓器のアップなどカラー映像でなくて良かったかな。

それと、久しぶりに成田三樹夫や岸田今日子といった個性派の役
者を見ることができ、うれしくなった。特に、常に冷静沈着な岸田今
日子の振る舞いとあのボイス、たまらないですね。え~と、もちろん
奥田瑛二と渡辺謙の二人も、気持ちのこもった演技をしています。


(1986年、監督・脚本/熊井啓、原作/遠藤周作、音楽/松村禎三、撮影/栃沢正夫)
海と毒薬