横山秀夫の同名ミステリーを佐々部清監督が映画化した『半落ち』
(2004年)。日本アカデミー賞の最優秀作品賞と最優秀主演男優賞
(寺尾聰)に輝いた、いわば佐々部監督の「出世作」をあらためてDVD
で見直した。脚本は田部俊行と佐々部監督の共同執筆である。

半落ち 

アルツハイマー病を患う妻(原田美枝子)を自宅で殺害したと、現役の
警部・梶聡一郎(寺尾聰)が自首してくる。県警捜査一課の強行犯指導
官・志木(柴田恭兵)の取り調べに対し、素直に犯行を認める梶。しかし、
彼が犯行から自首するまでには2日間の「空白」があった。 

なぜ梶は最愛の妻を殺した後、後追い自殺もせずに2日後に自首をし
てきたのか。謎の2日間について無言を貫く梶に対し、県警の幹部は
誘導尋問により捏造した事実で「2日間」を構成し、嘱託殺人として処
理しようとする。そんな中、事件はマスコミによりリークされる。

半落ち 

空白の「2日間」について、梶の目撃情報が寄せられる中、彼が東京の
歌舞伎町に向かっていたことがわかる。しかし、警察の調書の捏造を暴
こうとした地方検察庁の佐瀬(井原剛志)の行動も、検察と県警の「取引」
により封印される。梶は私選弁護人・植村(國村隼)とともに法廷へ。

映画ではこの後、歌舞伎町へ向かった目的を探るべく個人的に捜査を行
う志木や、スクープ記事を狙う女性新聞記者・中尾洋子(鶴田真由)の調
査により、梶の取った行動の真相が明らかになっていく。しかし、結局、梶
は裁判を通しても「2日間」の行動の真意は自供しないのだ、、、

半落ち 

私は映画を見る以前に、横山秀夫の原作を読んでいたので、梶が妻の後
を追い自殺しなかったことに違和感はなかったが、この映画を初めて見た
場合、そのあたりの理由がストンと胃に落ちるのだろうか。白血病による子
供の死、ドナー登録から骨髄移植、その有効期限の意味など、映画の描き
方だけでは、梶が自殺を思いとどまる「理由」は理解できないのではないか。

おそらくこの映画が公開されて数年後、骨髄バンクのドナーの年齢は50歳
から55歳に上限は変更されたはず。私はドナーの登録をして20年近くにな
るが、お声がかかったことは今のところない。まもなく提供したくても提供で
きない年齢に達するが、献血だけは続けようと真面目に思っています。

                  

横山秀夫の原作の映画化は、この作品の他に『出口のない海』(2006年)、
『クライマーズ・ハイ』(2008年)とあるが、うち2作は佐々部清の監督作品。
この6月にはテレビで好評だった『臨場』の劇場版が、同じく内野聖陽の主
演で公開される。監督・橋本一の新作、必ず劇場へ見に行きますから

臨場 6月公開『臨場・劇場版』


(2004年、監督・脚本/佐々部清、脚本/田部俊行、原作/横山秀夫、音楽/寺嶋民哉)

半落ち 



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