父の様子がおかしいと妹から電話。預かってもらって5日目かな。

自分が殺人犯にされるから病院へ電話して欲しいと言っているらしい。孫がいるところで物騒な事を言い出したから、妹も動揺している。父にこちらから電話するからと言って一旦電話を置かせた。

父のケータイに電話すると、私からの電話を不思議がることもなく「殺人犯にされるから、証拠の死体を焼かないように警察に言ってくれ」と言う。「犯人は背の高い看護士」だとも。

ちゃんと警察に言うから落ちつくように言って、電話を切った。大丈夫だよと念をおそうと少し間を置いて電話したら、ケータイの電源が切られていた。おそらく通話を切るつもりで電源OFFになるぐらいスイッチを押していたのだろう。しょうがないから妹に電話してみたら、もう落ちついて昼寝する様子らしい。

うちでは似たような妄想が何度もあったので私は慣れているが、初めて目の当たりにした妹は動揺したようだ。慣れれば対応もできるだろうが、小一の孫の前での危ない言動は望ましくないな。
妻の手術は予定通り腫瘍部分のみの切除で無事に済んだ。
センチネルリンパ節生検の結果、転移がないことが確認できたのだ。

手術前、通常の摘出だけで済めば1時間半ぐらいだけど、万が一転移などがあれば全摘もありうるし、その場合3時間ぐらいかかると言われていた。12時40分に手術室へ向かうエレベーターまで見送って、待合室で時間を潰していたのだが、予定時刻を過ぎても連絡用に渡されたPHSがなかなか鳴らない。

2時間を過ぎても鳴らない。その苦い時間と言ったら・・・。まさか全摘なんてことはありえない!しかし、少しの転移はあって予定より大きく取られたか。麻酔から目が覚めた妻になんと説明しよう。いや、そんなことより今後の闘病の重さが頭に浮かび、妻が不憫でならなかった。

針のむしろで正座させられるような2時間半が過ぎた頃、PHSが鳴った。「手術が終わりました。今どちらですか? それでは説明室にいらしてください。」と話す担当医の声は心なしか明るく、少し期待が持てる気がした。そして、その印象は正しかった。3個のリンパ節を取って調べたが、転移が見られず、予定通り最小限の切除、摘出で済んだという説明を受けることができたのだ。

全身の緊張が解け、天にも昇るような気持ちになった。
この気持ちは、同じ状況になった家族をもつ人にしかわからないだろうな。

妻の手術入院のため、父は妹に預ける。基本的には、もううちで同居することがない前提で預ける。
介護サービス付きのアパートか有料老人ホームへの入居(入所)を考えて欲しいと父には話したが、そのことは記憶に残らないようだ。もう我が家で生活することがないことは受け入れられないようなので、そのことには触れないようにして、治療が落ちつくまでと言葉を濁して妹夫婦の家へ送った。
いずれにしても父はしばらく妹に面倒をみてもらうことになる。

とりあえず根治に向けて妻の手術の成功を祈り、治療・回復に専念するのだ。