失業手当受給者は、4週毎に訪れる失業認定日までの間に少なくとも2回以上の「就職活動」が義務付けられている。もっとも、認定日に受給申請のために行くハロワ訪問がその1回にカウントされるため、実際は「もう1回」だけ何らかの就活実績があればいい。

この就活に「ネットによる就職情報検索」は含まれない。きちんとアポをとっての面接や、ハロワ窓口での「就職相談」がそれに該当する。

 

最初の就職相談で、希望する職種と賃金をハロワに登録するための書類を書く機会があった。

まず大前提にあったのは「クルマの仕事はもうこりごり」ということである。もう完全に心が折れた。あんな責任は重く、手間もかかり、時間も経費も体力もゴリゴリに削られるのに儲からない仕事はもう御免だ。それ以外なら何でもいいとさえ思っていた。となれば、五十路の再就職にそもそも贅沢など言ってらんないので「せいぜい製造業のライン作業員が妥当なところか?」くらいの認識だった。

とはいえ―――閉業の際、ありがたいことに各方面から「うちに来ないか?」のお誘いがあったので、最悪何処にも就けなかった場合の行き場は保証されていた。それならば書類に書く希望職種くらい、ちょっとだけ冒険してみてもイイんぢゃない?

ということで、第一希望の欄には厚かましくも「広報企画・ライター」と書いてしまった。当然、経験は一切無い。ただ肉体労働系は年齢的に体力の限界が近いし、少なくとも俺にとって唯一「文章を書く」という行為だけは余程のことがない限り苦痛を伴わないものだったので、これを仕事に出来たら長続きするのではないかと思ったからだ。

提出すると、相談員の方がいきなり一件紹介してくれた。岐阜に本社を持ち、全国展開を予定している某フィットネスクラブの運営会社だった。広報とメディア対応の人材を募集している。いきなり心動いたが、通勤先が遠いな~。

とりあえずその日は保留にして帰宅。

 

スマホに届く社員募集の情報をなんとなく閲覧していて、自分の手で初めて「応募」のボタンを押したのは、自宅にもよく届いている某地域情報誌の会社だった。経験不問で契約社員を募集している。かつて某青年会議所に所属してたから地域活性化活動の実績ならあるぞ。

ドキドキして待つこと3日、担当人事部から『履歴書と職務経歴書を送れ』との返信があった。おおリレキショ!そーいえばそーだった。

大慌てで証明写真を撮りに行き、何度撮り直しても隠せない自分のツラの劣化っぷりに軽く泣き、ネットでテンプレートをダウンロードしてせっせと履歴書作成に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

‥‥書くことが無え‥‥

 

 

 

そりゃそーだ。

高校卒業後は2年の専門学校に通学、その後はずっと「鈑金一筋」の人生。学歴も職歴も少な過ぎて記入欄が寒々しい。

相手は雑誌の編集部。こんなクルマしか弄ってこなかった50過ぎのオヤジなんぞ、トイレ掃除にだって雇ってくれねぇぞ…

せめて自己アピールの欄に、某青年会議所で地域貢献に精を出していたこと、その縁で地元の大手企業や老舗とはツテがあること、ブログを一日おきの更新でもう9年続けていること、「百鬼夜号」で一部界隈では割とバズったことなどを盛り込んだ。

バクバクしながら大封筒を投函した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっさりと落ちた。

 

 

(続く)