ブラシを描き上げ、仕上げのクリアを塗装し、エンジン・ブレーキ周りのいくつかの問題点を解決して、堂々の公道デビューを果たしたVionic Matrix号。
ああ、会社たたむ前に完成が間に合って良かったわー…と安心していた先週。
 
唐突にミッションがイカれた。
ギアを入れてアクセル吹かしても前にも後にも動かなくなった。既に何度か美濃の街中を試運転した際には問題無かったのに。ほんの5分前にも普通に動いていたのに。

MC-1はヤマハのスクーター「JOG」のエンジンが搭載されている。つまりミッションもスクーターと同じく遠心クラッチにより断続する簡易オートマである。シフトパターンもニュートラル以外はD(前進)かR(後退)しか無い。よーするにゴーカート。
以前からリバースギアに入り辛い傾向は確かにあった。Rにシフトしてアクセルオンすると、何回かに一回は「ギャリギャリギャリ!!」と噛み合ってないギア同士の刃先が掠り合う不快な音を立て、全然進まない現象が起きる。
これは、シフトレバーの操作によってミッション内で各レンジのギアに駆動ギアを連結させるシフトフォークの動きが十分でないことを意味する。一番疑わしいのはシフトレバーとミッションを繋ぐケーブルか。
確かにこの車を譲り受けた時からシフトレバーの動きは重く、何度も過負荷が掛かったシフトケーブルが伸びてしまった可能性も考えられる。
一度ケーブルの固定位置調整で誤魔化せないか試したことがある。その時にレバー操作とケーブルの摺動をチェックしたが、特に問題は感じられなかった。
ただ、位置調整しようにもステーを挟むロックナットの溝がナメていて殆ど動かすことが出来ない状態。つまり調整不可である。ならば、とステー取付ボルトにワッシャーをかますことで相対位置を調整していた。その時少しは改善したのだが、結局今回のコレである。
リアをジャッキアップして、ミッションのシフトレバーからケーブルを外す。
そして手でレバーを直接操作し愕然とする。
完全にフリー。本来ならR⇔N⇔Dの3箇所でカチッと止まるはずのレバーが何処にも引っ掛からずにクッタクタ。
目の前が真っ暗になった。ケーブルではなくミッション本体の故障だ。最後の最後にかなりの強敵が目の前に立ち塞がりやがった。もう時間ないのに~~~~っっっ!!
 
 
 
 
―――と、
ゆーてる場合でもないのでさっさとバラすことにする。
ネットで閲覧できた公式のサービスマニュアルによると、ミッションの当該作業はエンジン搭載状態のまま下からの作業でいける模様。そーでなかったら正直諦めてた。
もっとも…バラした結果もう入手不可の部品がもし破損していたならば修理そのものを諦めるしかない。
 
タイヤとブレーキドラムとドライブシャフトを外し、
ミッションケースを割る。
メインシャフトとカウンターシャフト、デフASSYが露わになる。
 
フリーになっていたシフトフォーク。一見何もおかしいところはないように見えるが……
通しピンが剪断されていた。よーするにフォークとレバー軸の位置決めのために中に通してある棒がギロチンのように切断され、フリーで回転するようになってしまっていたのだ。これじゃギアを切り替えるスリーブが動かせない。
原因としては割とシンプルな部類で少しホッとする。念のために全てのギアシャフトを抜いて点検。特に異常は無さそう。
問題は折れてしまったスプリングピンである。これさえ交換すれば直りそうなのだが、果たして部品あるのか?
ミッションケースの合わせ面に残ったガスケットをスクレッパで剥がし、脱脂。ケース内部とベアリングをパーツクリーナーで清掃。(後で充填するATオイルで潤滑するためグリスは塗らない)
 
友人通して地元のバイク屋さんに問い合わせてみたが、該当のピンが出てこないとのこと。
割りピンで代用することにする。
耐久性に関しては知らん。
 
で、全てのギアシャフトを組み戻してミッションケースの当たり面に液体パッキン塗って残りの全部復元しATオイルを充填後エンジン始動。ミッションのシフトフォークレバーを手で直接操作し、全てのギアに切り替わることを確認。とりあえずホッとする。
ただし、いざケーブルをレバーに接続して運転席のシフトレバーを操作しても相変わらずRギアに入らない。ステーにワッシャーを追加してR側に寄せると、今度はDに入らない。ステーを少しづつハンマーでD側に叩いて微調整するも、ちゃんと両方のギアが入るベストの位置が見つからない。やっぱりケーブルが伸びてるのか?でもレバーの可動範囲に対してケーブルの摺動範囲が足りてないということはむしろ症状として逆になるのでは??
 
一難が去るとまた一難。

実質の閉業までもう残り一週間。ホントに完成するのコレ?