往年のPCゲーマーで、『Half-Life』を知らない者はいないのではないか。
1998年にValve Softwareの開発によって登場したこのゲームは、後に制作されたあらゆるFPS(主観視点シューティングゲーム)に多大な影響を与え、世界中のゲーマーの度肝を抜いた殿堂入りの超ヒット作品である。エイリアンに占拠され荒廃した都市を舞台に、レジスタンスとして未知のエイリアンや謎の組織の戦闘部隊などと生存を賭けた熾烈な戦いを繰り広げる。
次々に現れる敵をただ撃ち倒すのではなく、一緒に行動する仲間NPCとの連携や謎解きの要素でより一層ドラマ性を高め、まるで自分が映画の登場人物になったかのような興奮を与えてくれた。続編「Half-Life2」の他にも数多くの派生・スピンオフ作品を生み、今なお根強い人気を誇る名作シリーズなのである。
そして2020年。
このシリーズに、ついに完全VR仕様の新作が登場する。
『Half-Life ALYX』
『Half-Life2』の前日譚となる作品。
初代主人公ゴードン・フリーマンの協力者として活躍していたイーライ・バンズ博士の娘で、シリーズの紅一点?であるアリックス・バンズが本作の主人公。
公式発表直後から世界各地でValveのVRヘッドセットが売り切れ続出する要因となるほどのスマッシュヒットを記録。当時自宅PCにVR環境を導入したばかりだった俺が、このゲームに興味をそそられないワケがなかった。
ただ、配信されている映像や動画からこれが相当なマシンスペックを要求されるゲームであることは容易に想像できたし、ゴーグルを買い替えてから原因不明のカクツキでしばらくの間VR環境の調子が不安定だったことも重なり、なかなか手を出せずにいた。
しかしある日を境に唐突にVRの動作が安定しだしたのと、Steamの正月セールで安くなっていたこともあり、年明けについに買ってしまったのだった。
そして後悔することになる。
なんで、もっと早く買っておかなかったのかと。
もうね、控えめに言って最高。ゲームでこんなワクワクする体験も久しぶり。Half-Life ALYXが家にあると、ちょっと嫌な事があっても「まあ家に帰れば俺にはHalf-Life ALYXがあるしな」ってなるし、仕事でムカつく人に会っても「そんな口きいていいのか?俺は自宅でアリックス・バンズとよろしくやってる身だぞ?」ってなれる。戦闘力を求められる現代社会においてHalf-Life ALYXと同棲することは有効。
とにかく細部にまで作り込まれた世界観に圧倒される。それはゲーム開始直後、隠れ家のバルコニーから望む未来の荒廃都市の風景を観た時点で誰もが感じることだろう。
廃墟の街をただ歩き回ってるだけでも楽しいが、操作に慣れてくると特に楽しくなるのがこのグラビティグローブ。
これは一定距離内にある物体を念力のように手元に引き寄せることが出来るもの。床に落ちてるアイテムを屈んで拾う必要が無くて便利。落ちている銃の弾倉などをこれで引き寄せてキャッチ。肩越しにバックパックに入れる。銃撃戦中に弾が切れたら排夾し、素早く肩越しに新しい弾倉を取り出して装填。コッキングして構える。この一連の動作がカッコ良くて楽しい。
銃の改造に必要な合成樹脂もあちこちに落ちているため、何の変哲もない棚やコンテナなどの裏もガサ入れのように引っ掻き回して探索している。
そして、未知のエリアに踏み入った時の緊張感がまたたまらない!
敵は武装した特殊部隊など人間ばかりではない。人の頭部に食らい付く寄生型エイリアン「ヘッドクラブ」に操られたゾンビが此処彼処に徘徊し、闇の中から、背後から、奇声をあげて襲いかかってくる。天井に貼り付いて獲物を待つモンスター「バーナクル」の、長く垂らされた触手にうっかり捕まれば瞬く間に吊り上げられて即死だ。
重要アイテムが収納されているケースのロックや隔壁シールドの解除、ダウンしている電源ラインの復帰などは手にしたハッキング端末で行われるが、これがちょっと手強いパズルになっている。
目の前の空間にホログラムで照射されるサイバネティックなそれを弄ってると、ホントに自分が未来のテクノロジーに触れてる感じがしてカッコイイ。
プレイヤーをその気にさせる演出がニクいのだ。
まだチャプター5でウロウロしているが、楽しみ。
VR持ってる人はとりあえず押さえとけ。遅ればせながら超オススメ。