争うよりも、、、 | ASD【自閉症スペクトラム】女係長 鹿島じゅんの日常生活はサバイバル!

ASD【自閉症スペクトラム】女係長 鹿島じゅんの日常生活はサバイバル!

25年以上1つの会社に健常者として勤務し、係長として人の上に立つようになった私が、
どのようにASD(自閉症スペクトラム)の特性と折り合いをつけて生活しているか、
その方法をお伝えしていきたいと思います。

数日前に部下の1人と揉めてから、私は体のあちこちが痛くてたまりませんでした。
気に掛かることがあると体が痛くなるのは子供の時からずっと抱えていた症状で、
高校生の時に思い切ってお医者さんに相談しても体に異常は無く、
「あなたが痛がっているのは、全て神経の通り道だよ」
と言われただけで対処法も分からず、
ずっとほったらかしにしていた症状でした。
この状態になると、痛みで四六時中歯をくいしばり、
痛みに耐えるために家に帰り着いたらひたすらジッとしている、という生活になります。
さらに部下の無言の態度の悪さに心がビクビクし、
部下の動向に気をとられて心ここに在らずといった状態になるため、
うっかりミスをしないように、かなり精神的に張り詰めて働いていました。

そんな中、昨日は月末でやらなければいけない仕事がたくさんあったのですが、
部下が月末にしなければいけない仕事を残したまま、
仕事の終了時間前にもう帰り支度を始めたのをみて、
私はかなり慌て、そして悩んでしまいました。

態度が悪く話しかけ辛い部下に、終わっていない仕事を指導して反発されるよりも、
自分でやった方がずっと早く、心の負担も少ないのです。

彼女はいつも業務終了時間30分前くらいから仕事はせず、同僚とのお喋りタイムに突入するため、
私が仕事終了時間15分前のこのタイミングで仕事の話をしたら、彼女の機嫌が悪くなるであろうことも分かっていました。

心がラクで簡単なのは「自分で彼女の仕事をする」なのですが、
私は職場にしゃがみこんで俯いて呼吸を整えて、
彼女に話しかけることへの恐怖でうっすら溜まった涙を指で拭ってから、
彼女の元へ歩いていき、震える声で彼女に

「今日中にしなきゃいけないあの書類、いつ頃になりそうかな?」

と話しかけました。
彼女は一度チラっと私の方を見ると、

「今月はその書類はありません」

と答えました。
でも私は事前にその書類が発生することを確認してから話しかけたので、
彼女が強気で言い返してくる態度が怖くて顔が赤くなって手が震えても、引くことはしませんでした。

「そんなことないよ、、、」

私はそれだけ言葉にすると、後はずっと反論してくる彼女の言葉に首を横に振るのがやっとで、
絶対に自分が正しいと主張する彼女を翻意させる術を持たなかった私は、
無言で踵を返すと、その書類が発生する証拠の書類を彼女の目の前に差し出しました。

「あ〜これね、、、この分が必要やったんやね」

証拠の書類を見た彼女は、そんな風に言って私からその書類を受け取ると、
サラサラと私が求めた書類を作成し、無言で私の机に置き、またお喋りの輪に戻って行きました。

私は月末にやらなければいけない仕事が回ってきたことにホッとして、彼女の作った書類を点検したのですが、
雑にやった為か、あからさまに間違っていました。

それでも彼女に仕事をしてもらったことで良しとして、私は彼女の書類の間違いを書き直すと、
彼女がお喋りしている輪の中に入っていき書類を見せ、

「ここに訂正印をもらっていい?」

と聞きました。

彼女はしばらくジッと私が出した書類を見ていましたが、
自分の間違いに気づくと、私の手から書類を取って、自分の机に戻り訂正印を押し、
後ろからついて行っていた私に、

「すみません」

と言って書類を渡してきました。

その言葉を言った時の彼女は相変わらず私の方を見ず、
顔を下に向けたまま、ボソッと言っただけだったのですが、
私は感動で嬉しくて一気に心が軽くなってしまいました。

彼女が謝ってくれた、、、

その事実が何よりも嬉しくて、私はずっと、心の中でその言葉を反芻していました。

やっぱりどんな人でも、私はいがみ合うのは嫌だ。

そう思いました。

だって、いがみ合っている時の私は相手から攻撃されないように気を遣ってビクビクして、
ストレスを溜め込んで体中が痛くて、自分が苦しくなってしまうから。

やっぱり私は、穏やかで優しい気持ちで過ごしたい。

自分の為にも、そう思いました。

そして、自分の彼女に対する言動を振り返った時に、
私の言動は愛からではなく、恐れから出ていたことに気づきました。

私は今まで、愛なんてよく分からないから、愛という言葉を使うのに抵抗がありました。

でも、彼女に対して悪意という先入観で見ないようにしようと、
彼女の間違いを指摘する時も、私が彼女に対して嫌な気持ちを持って話したりしないように、
精いっぱいの心配りと思いやりで接しようと頑張った結果、
彼女が間違いを認めて謝罪してくれたことに対する、
暖かくて嬉しい今のこの気持ちが、
愛なんじゃないか、と思いました。

愛っていいな、幸せだな。

こんな気持ちを味わうことが出来るのなら、
これからも愛から出た言動を選んでいこう、
と思いました。