この4月より、財政運営の主体が県に移管される国保広域化。県は、各市町村の30年度標準保険料の試算を発表しましたが、本来引き下げとなるはずの印西市や栄町は、激変緩和措置により返って引き上げになるとの見通しです。

 

国民健康保険(市町村国保)は、75歳未満の自営業者、農業従事者や非正規労働者などが加入する公的医療保険のことですが、民間企業従業員が加入する組合健保、協会けんぽや公務員が加入する共済組合の保険と比べ、その年齢構成や財政基盤に構造的な課題を抱えています。

 

例えば、市町村国保の加入者平均年齢は51.5歳、高齢者(65~74歳)の割合は37.8%であり、1人あたり医療費は33.3万円と突出して高くなっています。また、他の医療保険と異なり給料からの源泉徴収が行えず、保険料収納率が90%程度と低いことや、1人の加入者に1か月で数千万円分もの高額投薬が行われるケースも生じてきていること等から、保険者である市町村の財政負担が深刻な問題となっているのです。そうした中、各市町村の保険料が変動するリスクを減らすこと等を目的に、都道府県単位に運営を広域化するのが国保広域化です。

 

ところで、国保広域化による国民健康保険料の平準化を進めるにあたり、懸念されてきたのが、一部市町村での保険料の急激な負担増。所得水準が高いとされる都市部で高くなる傾向にあり、最も増加する船橋市で15,263円(15.5%)増となること等から、県は、「28年度から30年度の自然増(1.2%)+1年あたり1%」を上限とする激変緩和措置を決定。つまり、初年度となる30年度は1.2%に2%を加えた3.2%を保険料増の上限とし、市町村間に不平等が生じないようにするとしたのです。

 

ところが、その激変緩和措置のあおりを食うのが印西市や栄町です。激変緩和は、本来、保険料引き下げとなるはずの市町村への公費を、大幅引き上げとなる市町村に補てんすることにより行われるもの。結果、30年度保険料は、印西市では1,971円減になるところが3,374円増、栄町で7,833円減になるところが394円増と試算され、特に印西市は県内3番目に大きい増加額となります。

 

県試算の標準保険料はあくまで参考値であり、保険料額を決定するのは各市町村であるとはいえ、激変緩和措置への恨み節が聞かれるのもやむを得ないところです。

 

一方、激変緩和における保険料増の上限は、年1%ずつ上がっていくこととなっています。数年後には印西市や栄町の標準保険料が引き下げになることも予想されており、その早期実現をしっかり求めていきたいと思います。