先日のことですが、住民の方より「なぜ北総線成田
湯川駅は、成田線と乗り換えができるような形とな
らなかったか?」とのご質問をいただきました。

確かに、北総線新鎌ヶ谷駅や東松戸駅では、新京成線
やJR線との乗り継ぎができるようになっており、利用客
の利便性向上や駅周辺の活性化がもたらされています。

ところで、いわゆる北総線は、「鉄道運行者」と「線路
所有者」が分離された、「上下分離方式」と呼ばれる
複雑な運営形態となっていることで知られています。

例えば、京成高砂~小室間は、北総鉄道(株)が線路
等の施設を所有し、京成電鉄(株)と北総鉄道(株)が
鉄道(列車)を運行しています。また、小室~印旛日医
大間は、京成電鉄(株)と北総鉄道(株)が鉄道を運行
していますが、線路等を所有しているのは千葉ニュー
タウン鉄道(株)です。

そして、ここで肝心となる印旛日医大~土屋間の線路所
有者は、NAA(成田国際空港株式会社)の系列会社である
成田高速鉄道アクセス(株)。つまり、成田空港から東京
へのアクセスを向上させるため、NAAによる間接的な出資
のもと開通となったのが、この印旛日医大~土屋間なの
です。

同区間の鉄道運行者は京成電鉄(株)。成田高速鉄道アク
セス(株)には線路使用料収入はあるものの、運賃収入は
入りません。同社にとって空港アクセスの向上に興味は
あっても、空港客以外の一般利用客の利便性向上や乗降客
数増加などにはあまり関心がないことでした。

成田市の要望により、成田市の出資のもと成田湯川駅が
設置されることになりましたが、同駅周辺は既開発地域で
あるため、さらなる地域活性化の可能性は乏しく、成田市
にとってJR線駅新設までの意欲はありませんでした。また、
JR社が駅新設や改築に伴う費用を出資することはまずあり
ません。

したがって、成田湯川駅と乗り換えることができるJR成田線
駅を設置する動きは、成田高速鉄道アクセス、JR、成田市の
3者のいずれにも見られなかったのだというのが、私の
見解です。