【はじめに】

ステイクホルダーってなんですか?

大雑把にいうと「利害関係人」のことです。

 

なんでカタカナでいうんですか?

かっこいいからです。

 

 

 

【面会交流におけるステイクホルダー】

それでは、面会交流を行いたい別居親さんから見たとき、

面会交流の実現という目的をなしとげるための、

ステイクホルダーは誰なのか。

 

 

重要度順に並べると、

 

①お子さん

②同居親さん

③代理人

④調停委員

⑤裁判官

 

というところですね。

 

 

間違っても、同居親さんのご両親とかではない。

順番に見ていきましょう。

 

 

 

【①お子さん自身】

同居親さんや同居親さん側の代理人がどんなに頑張っても、

お子さんが面会交流を拒絶してしまうと、

首根っこを摑まえて無理やり現場に引っ張り出すことはできません。

 

裁判所も面会交流について最終判断をするときには、

お話しできる年齢のお子さんであれば、

基本的にお子さん自身の意思を重視します。

 

 

また、大人は理屈で説得できます。

お子さんの成長には別居親さんとの関係構築が大切、

という理屈は裁判所も乗っかって説得してくれやすいものです。

 

最悪、「慰謝料沢山支払うから子供に合わせて!」

という交渉だって理屈上は成り立つわけです。

 

でもお子さん相手にはこれは通用しない。

せいぜいおもちゃ渡過ゲームとかのプレゼントで釣るくらいしかない。

まだお金の大切さをよく理解していないお子さんにとって、

「100万円あげるから!」という交渉は魅力的でない。

お子さんを説得するのってすごく難しいです。

 

頑張って説得して家から連れ出しても、

現場に行く直前でギャン泣きしてしかたなく帰宅、

ってなったら交流は実現できません。

 

 

このように、

説得できないと交流が実現できないのに、

大人と違って説得が難しい。

 

この意味でお子さん自身が最重要ステイクホルダーなのです。

 

 

【②同居親さん】

面会交流における同居親さんは敵ではないです。

利害関係になんのです。

ここを絶対に忘れないことが大切です。

 

 

いや、わかってるんですよ。

別居親さんから見たときには、

同居親さんが面会交流をブロックしているように見える。

マジでそう見えていることはよくわかってます。

私は同居親さんの側でも別居親さんの側でも、

どちらの側でも仕事をするので。

 

だから、そう見えることを否定しません。

でも、面会交流の戦略を考えるときだけでいいですから、

同居親さんは敵ではなくステイクホルダーだととらえてください。

離婚原因とか別の論点でバチバチ喧嘩しているノリを、

面会交流だけには持ち込まないでもらいたいのです。

 

 

現実的に、お子さんの一番近くにいるのは同居親さんです。

現実的に、お子さんを面会交流に送り出すのは同居親さんです。

現実的に、面会交流に消極的なお子さんを誰かが説得してくれるとすれば、

それをやってくれる可能性があるのは同居親さんだけです。

 

戦略は、現実的に考えなければいけません。

現実的でない戦略は、空想とか想像と同じです。

 

現実を踏まえて面会交流実現のための戦略を考えるときには、

同居親さんを敵に回して喧嘩をするべきではないです。

むしろ中立的なステイクホルダーとして扱って、

少しでも交流実現のために協力してもらわないといけない。

 

 

少々ブラックなことを申し上げますね。

 

一旦交流が安定して何回も行って実績を作ってしまえば、

後から同居親さんだけの考えで交流を取りやめることは難しいです。

 

お子さんが大きくなればなるほどお子さんの発言力も大きくなりますので、

お子さんが大きくなってきちんと自分の考えを持てるようになれば、

それもまた同居親さんだけの考えで交流取りやめはしづらくなります。

 

なので交流が安定した後は、

同居親さんのステイクホルダーとしての重要性は若干下がります。

もちろんきちんと同居親さんへのリスペクトや感謝を表現しながら、

交流を継続しより充実させる必要はあります。

そのやり方は、いずれお話ししましょう。

 

 

今回力をいれて言いたいのはそこではないです。

 

初期段階。

面会交流ができていないところから、交流を始める。

第1回の交流をやってみて、まずはお子さんに会う。

そこから何回か交流してみて、徐々に交流に慣れてもらう。

 

お子さんが幼いとき。

お子さんをベビーカーで連れてきてもらう。

おむつや泣いてしまった場合の準備をしておいてもらう。

気まぐれなお子さんが「お出かけやだ!」と泣いてしまっても、

何とかなだめすかして現場まで連れてきてもらう。

 

初期段階やお子さんが幼い段階においては、

ステイクホルダーとしての同居親さんの重要性が極めて高い。

 

この段階で同居親さんを敵だとみなして攻撃するなんてありえないですよね。

そうではなくて、ステイクホルダーとして攻略する。

少しでも面会交流に積極的になってもらう。

少しでも面会交流に協力してもらえるようにしていく。

これが、ステイクホルダーとしての同居親さんを攻略するということです。

 

反対に同居親さんを敵とみなして攻撃することは、攻略の逆なんです。

キックオフの直後に自軍のゴールにシュートを打つのと同じです。

試合開始後に相手の顔でなく自分の顔を殴り続けるボクサーと同じです。

はっけよいのこった!で土俵の外にダイブするお相撲さんみたいなものです。
 

 

もちろん私も宗教家とかスピリチュアリストではないですから、

同居親さんへの嫌な気持ちを無にしろとか同居親さんを愛せとか、

そういう無理なことはいいません。

 

攻略のために、

同居親さんの心配や不安を取り除く表現をしよう。

協力してもらえるようなアウトプットをしよう。

 

戦略に従って作戦を立てて粛々と実行する。

これが「攻略する」ということです。

 

 

長くなってしまったので今回はここまで、

ステイクホルダー③~⑤はまた次回に。

 

杉並総合法律事務所 弁護士 菊地智史(東京弁護士会所属)