1 自分が離婚に巻き込まれたから 

たくさん離婚に関する記事を書いているので、

なんとなく自己開示しておく必要がある気がします。

 

筆者が弁護士として離婚事件をたくさん扱う理由は、

なにより筆者自身が両親の離婚に巻き込まれたからです。

 

 

 

2 両親の離婚

筆者が小学生の頃でした。

母親が、離婚したいと言い出しました。

 

転校や引っ越しをするのは本当に嫌でした。

でも父親と家に残るという選択肢はなかったので、

弟と三人で父親の実家を出ることになりました。

 

 

昼逃げの状態での子連れ別居、という形でした。

 

 

引越し先はすぐに父親に見つかり、

父親が凸してくるようになりました。

 

 

転校先ではいじめを受けました。

 

 

体育大会の準備で友達同士でチームをつくるとき、

筆者はどのチームにも入れてもらえませんでした。

 

先生が学級会を終わらせようとしたとき、

筆者は手を挙げて、

「入るチームがありません」といいました。

 

泣くまいと思っていましたが涙を止めることはできませんでした

 

 

そのほかにも席替えのときにバイキン扱いされたり、

陰口でなく聞こえよがしに悪口をいわれたり。

 

今思うとよく学校に行き続けたなと思います。

 

 

他方で母親とも折り合いが悪くて、

家にも居場所はありませんでした。

 

母親との口論が激しくなって、

 

「お前は悪魔みたいなやつだ。

お前なんか産むんじゃなかった。」

 

といわれたことを今でも覚えています。

 

「お前は(別居した)父親にそっくりだ。」

ということもよくいわれました。

 

一度は包丁を向けられたこともありました。

 

 

自死を選ばなかったのは単に筆者が臆病だったからです。

毎晩「楽に死ねないかな」ということを考えていました。

 

 

そんな中で両親は離婚調停、離婚訴訟、反訴と、

順調に離婚事件のフルコース(デザート付き)を戦い、

解決までは5年を要しました。

 

おかわり(控訴)がなくてほっとした気持ちは、

今でも忘れません。

 

 


3 父の元に移る

離婚は成立したけれど、

母親との折り合いは悪いまま。

そんな状況で高校進学を迎えました。

 

 

このままではいつか母親に手を出してしまうのではないかと怖くなりました。

 

また当時の母親は極端に生活を切り詰めており、

済んでいた家は築50年の汲み取り式トイレの一軒家でした。

冬になると隙間風がひどくて、

家の中でもアウター含めて服を4枚着て生活していました。

ベッドに入るときはアウターを脱いで服は3枚でした。

そういう生活もしんどくなっていました。


 

筆者は母親にはいわずに父親に電話で連絡し、

一人で荷物をまとめて家を出る段取りを調整し、

そのあとで母親に「父親の実家に移る」と伝えました。

 

母親は諦めたような肩の荷が下りたような顔をしていました。

後から丸くなった母親に聞いてみたところ、

母親自身も「物理的に離れなければ自分たち親子はダメになる」

と感じていたそうです。

 

 

父親の元に移ってからは母親との関係もよくなりました。

 

 

 

4 弁護士になってもしんどい

そこから大学→法科大学院→司法浪人→弁護士と進んだわけです。

 

しかし弁護士になっても順風満帆ということは一切なく、

精神的なプレッシャーでで左まぶたのけいれんが数か月続いたり、

指先にろうそくの火を押し当てられたような感覚が発生したりと、

これまでにないストレスを感じる日々でした。

 

 

筆者は仕事の覚えが悪く、

ミスも非常に多い新人弁護士でした。

 

先輩弁護士から怒鳴られることもありましたし、

遠回しに弁護士に向いていないとほのめかされもしました。

一生懸命自分の考えをいうと馬鹿にされることもありました。

「あんな低レベルな本を持っている」と見下されたこともありました。

こんなに頻繁にどやされている人は初めて見たといわれたときには、

自分は弁護士の適性がないのだと考えて絶望しました。

 

 

でも、頑張り方や努力のしかたを教えてくれる人はいませんでした。

先輩弁護士が怖くなって、そういうことを訊くこともできなくなりました。

 

毎日職場に行くのがほんとうに嫌でした。

弁護士に向いていないので弁護士を辞めたいと常に感じていました。

 

 

でも辞める前に自分なりに努力しようと思いました。

筆者は先輩からの信用がなくあまり仕事を振ってもらえなかったため、

時間だけはありました。

 

そこで筆者は一つの分野を徹底的に勉強しようと思いました。

そこで自然に再会したのが「離婚」でした。

 

 

離婚事件を勉強しようと思ったきちんとした理由はいくつもあります。

 

そのほかに興味のある分野は非常に詳しい先輩がいて絶対に勝てないと思ったこと。

離婚事件を勉強しようという発想の弁護士があまりいなかったこと。

離婚事件の相談は一定割合で来ていたのですぐに仕事に役立つこと。

などなどあります。

 

でも一番の理由としては、

離婚事件がもっとも「他人事」でなく「自分事」に近かったことです。

時間や労力を費やして打ち込むことが最も自然に思えたのです。

 

 

いまでこそ人生経験が蓄積し、

相続事件、不動産事件、中小企業顧問、

といった分野についても「自分事」としてとらえ、

お客様に共感しながら仕事を進めることができます。

これらの事件の経験も勉強も相当してきました。

 

でも当時、足のつかない流れの中でおぼれていた筆者が、

手に掴んだのはやはり当時もっとも自分事に近かった離婚事件でした。

 

 

筆者は離婚のプロを目指し、

離婚関係の数百ページある専門書を難十冊も通読し、

離婚事件のセミナーに参加したり通信教材を視聴して勉強しました。

 

そうして数年かけて筆者は、

離婚分野では同業者先生から頼っていただけるようにもなり、

法律雑誌に載るような先例も獲得し、

勝てると踏んだ事件ではきちんと勝てるようになりました。

 

 

そのようなキャリアを努力して構築した上で、

現在の事務所に移籍してきてもう5年になります。

 

振り返ってみると離婚を得意とする弁護士としての筆者のキャリアは、

筆者を信じて仕事を任せてくださったお客様のおかげで成長しました。

そしてまた現在も成長を続けているところです。

 

 

 

5 おわりに

これを書いてたら過去のつらい思い出がよみがえってきて、

ひさびさに家でお酒を一杯だけのんでしまいました。

 

 

筆者の仕事におけるスタイルは

・「何でも屋」は「何でもない屋」、尖った得意分野を複数持つ。

・勉強は徹底的に、一つの法律相談をきっかけに5冊の専門書を読んだっていい。

・共感できるお客さんと仕事をし、弁護士の思いも伝えながら事件を進める。

・裁判所や相手方には優しく愛想よく丁寧に、喧嘩するときは徹底的に。

・馬鹿にされてもあらゆる角度から柔軟にアイディアを出す、ときには370でも。

といったようなものです。

 

このスタイルは離婚事件を通じて固まったものです。

その意味でも筆者は離婚事件のお客様に対して感謝すべきでしょう。

 

 

筆者は引き続き離婚事件をライフワークとして位置づけます。

特に、たくさんのお金やお子さんが絡む、類型的に揉めやすい事件が得意です。

 

離婚のことでお悩みになったら一度ご相談にきてくださいね。

 

杉並総合法律事務所 弁護士 菊地智史 東京弁護士会所属

 

 

1 結論→特定承継遺言は原則代襲相続されない

「●●の建物はB山B子に相続させる。」

みたいのが「特定財産承継遺言」です。

 

 

ことばそのまま、

 

特定の財産(ここでは●●の建物)を、

ある推定相続人(ここではB山B子)に、

承継させる(相続させる)、

 

という内容の遺言ということです。

 


で。

 

「ある推定相続人」が、

この遺言を書いた人が死ぬ前に、

先んじて亡くなってしまったら。

 

 

具体的な例で示しますと、

 

「B山B子に相続させる」という遺言が残されていて、

遺言を書いたB山A三郎さんが令和5年に亡くなったと。

 

でもB山B子さんは令和3年に亡くなっていて、

B子さんのお子さんのB山C男さんが健在だとしますよ。

 

 

この場合は原則、B子さんのお子さんのC男さんは、

代襲相続人として●●の建物を相続することができません。

 

代襲相続人=代わって襲名する相続人ってことです。

相続人が先に亡くなっていた場合その子が代わって相続人を襲名します。

 

でも特定財産承継遺言の場合は、代襲相続は発生しない。


こんなような原則があるわけです。

 

ですのでB山A三郎さんが
「娘のB子がわしより先に死んでいた場合、

孫息子のC男に●●の建物を相続させたい」

という例外的な扱いをさせたいと考えた場合、

その旨を遺言に記載しておくべきです。

 

というのが本日の結論です。

お役立ち情報としてはここまで読んどけば大丈夫。

 

 

 

2途中で挟まれる前置き

いやー一旦更新が途切れると無限に更新したくなくなる。

それが収益化してないアメブロの宿命です。

 

いやいやここんとこ仕事の方がほんとに忙しくて。

 

 

そして直近のブログ記事が5000字とかの非常に重いものだった。

 

ひどいときは書くのに2時間以上かけていたりして。

しかも末尾に事務所のCMを書かないこともあったりして。

 

「俺はなんのためにこれをやってるの?」

と我ながら不可解に思うことがしょっちゅうありました。

 

 

そんなこんなでブログ疲れしていたわけです。

なので資料とか読まずに頭の中の考えを出すだけでOKの、

負担軽めの内容を書いていきたいと思います。

 

 

 

3 特定財産承継遺言が原則代襲相続されない理由

理由を書くんですが、

先ほど書いたように負担軽めの内容しか書きたくない。

いちいち文献に当たって根拠を確認するようなことはしたくない。

 

だからこの「理由」は筆者が頭の中で考えた理由です。

なので裏の取れているちゃんとした情報でないことはご了承ください。

「筆者はこういう理由だと考えるよ」ってハナシです。

 

 

で理由はつまり。

「その人だからその財産を相続させる」って考えるのが普通だからです。

 

反対に言えば、

「その人でなければその財産を相続させない」って考えるのが普通だからです。

 

 

冒頭で出した例の設定を詳しくして考えてみましょう。

 

●●の建物っていうのは、

実は栃木県宇都宮市の3階建ての小規模マンション「シャトーB山」だとします。

 

1階は餃子屋「めんめん」が入っていて、

2階はカクテルバー「パイプのほこり」が入っています。
3階が住居用スペースになっています。
 

 

で、B山B子さんは餃子屋「めんめん」で女将さんとして働きながら、

カクテルバー「パイプのほこり」の実質的な出資者をやっているとしましょう。

そして、3階の住居用スペースでB山A三郎氏の介護などしながら同居している。

 

「めんめん」はA三郎さんが昭和の時代に屋台から創業したお店で、

B子さんのOL時代にA三郎さんがどうしても継いでほしいと頼み込んでB子さんに次いでもらったお店。

「パイプのほこり」はB子さんが一生懸命貯めたお金を出資した店。

飲み好きのB子さんが引き抜いてきた腕のいいバーテンさんがシェイカーを振ります。


そんなB子さんに引き続き「めんめん」と「パイプのほこり」を経営させたい。

それに自分の介護をしてくれるB子さんだからこそ財産を譲ってもいい。

引きつづき「めんめん」を守ってほしいし、

「パイプのほこり」も彼女の夢を実現した店だから頑張って続けさせたい。

そんな思いで、「B山B子に相続させる」という遺言を書いたわけです。

 

 

ただB子さんの息子=A三郎さんの孫息子のC男。
こいつがちゃらんぽらんでどうしようもない。

 

ティックトッカーになるといって高校を中退してみたものの、

なんにもせずに家でゴロゴロしている24歳。

 

一日にウイスキーの750ml瓶を2本は空にする。

しかも安酒でなくて響きとか山崎とか高級なのを飲んじゃう。

 

自分の部屋の押し入れで大麻を育てているのに、

その部屋に平気でデリヘルを呼ぼうとする。

 

A三郎さんのことは「クソジジイ」と呼んでおり、

たまにA三郎さんの財布から金を抜いている。
 

 

そんなやばいやつなんですわ。

もちろん店の経営なんかできないしA三郎さんの介護もやろうとしない。

 

 

でもたまたまA三郎さんは認知症になる前の令和元年ころに遺言を書いて、

その内容はシャトーB山をB山B子に相続させるというものだった。

 

その頃はB子さんも生きていたからよかったんだけど。

 

遺言を書いた直後にA三郎さんの認知症が進行してしまって、

新しい遺言を書けない状態になってしまいました。

 

そんななかで仕事で無理をしすぎたのか、

令和3年にまだ60代のB子さんが倒れてそのまま亡くなってしまった。
そして令和5年にA三郎さんも帰らぬ人となった。

 

 

そんな状況でC男を「代襲相続人」としてシャトーB山をくれてやりますか?

それは絶対に故人の遺志とはいえないですよね。

 

多くの場合、特定の財産をある相続人に相続させるというのは、

その人だからその財産を相続させるという考えにもとづきます。

その人でなければその財産を相続させないということです。

 

だから原則として、特定財産承継遺言は代襲相続させない。

 

例外的に代襲相続させる場合には、

その旨を遺言に明記するべきなのです。

 

 

というのが、

特定財産承継遺言は代襲相続されないのが原則

であることの理由です。
 


具体例の設定にこだわりすぎて以外に長くなりました。

極端な例ではありますが本質はこういうことでしょう

 

結構疲れたなーでも事務所の宣伝最後に書かなきゃ。

 

 

 

4 杉並総合法律事務所について
こんなような遺言についての知識も豊富なのが、

杉並総合法律事務所の弁護士です。

知識だけでなく、相続の仕事に真摯です。

 

 

筆者自身はこれまで、

曾祖母、男友達、女友達、祖母、大叔父、を見送っています。

近しい人の相続争いを見てきてもおります。

 

 

人生の最後の時間は安らかであるべきです。

そんな信念を、杉並総合法律事務所の弁護士は共有しています。

杉並総合法律事務所の弁護士たちはいずれも、

個人的な経験をつうじて人生の悲しみを深く理解しています。


 

遺言に関するご相談はぜひとも弊所へ。

共同親権。

勉強しなきゃいけないけど一人で学ぶのは大変!

 

なのでブログでアウトプットしながら自分なりにまとめてみる。

読んでくださる方と一緒に勉強してまいりましょう。

 

 

みんな大好きベストセラー雑誌()、

『家庭の法と裁判』の51号に、

簡潔にまとまった論考が掲載されていました。

 

『親権などに関する新たな規律

ー離婚後の親権についての規律を中心に』

大阪大学大学院高等司法研究科教授 青竹美佳先生著。

 

先生、なにやら高尚な雲の上たいな名前の研究科、かっこいいっす。

 

 

令和5年5月24日から2年以内に施行されるので、

いまのうちに学んでライバルに差をつけようぜ!

 

 

 

① 選択制なんだぜ

学び

「離婚時に共同親権とするか単独親権とするかを、

まずは父母の協議にゆだねることとする制度」(9頁)。

 

協議離婚なら両親の話し合いで、

共同親権にするか単独試験にするか定めるんだって。

話し合いで共同親権か単独親権か選べるんだって。

 

 

協議で意見が整わない場合や裁判離婚の場合は、

裁判所が共同親権か単独親権か決めるんだって。

 

 

弁護士の考察

現場の実務家としては、

交渉が複雑化しそうでちょっと面倒になりそうな印象。

これまでは親権者をどちらにするかという、

父と母の2つの選択肢からどちらかを選ぶかという論点でした。

 

これに新たに共同親権という第3の選択肢が加わり、

協議段階で親権に関する議論が紛争化しやすくなりそう。

 

弁護士としては介入の機会が増えるので、

ビジネスチャンスといえばチャンスかもしれません。

 

 

とはいえ後述のように共同親権つっても実態は重要な意思決定への関与権。

これについて激論を交わし半年も一年も角突き合わせるメリットはあるのだろうか。

 

むしろ面会交流の議論に時間をかけたほうが、

親御さんにとってもお子さんにとってもよいのでは?

 

そこで勝ったところでお子さんと会えるようになるわけでもない、

「どこの大学行ったらいいよ」みたいなことをいってヨシになるだけの、

とはいえ気持ち的にはバチバチになりそうな争点

そんなのが一つ増えるだけ、という気はしてしまいます。

 

 

実務

離婚協議書で定めを置く場合は、

両親が別居する以上どちらかが監護者に指定されないと困りますので、

「長男○○につき、甲と乙は双方が共同して親権を行う。

監護者は甲とする。」

みたいな条項になるんでしょうか。

 

 

 

② それなりにケアされてるぜ

学び

協議段階での共同親権の選択について、

「真摯な合意なく共同親権を強制された場合など」(10頁)には、

「親権者の変更」(11頁)で単独親権に変更できるんだって。

 

変更できる場合は、

「父母の一方から他の一方への暴力等の有無、

家事事件手続法による調停の有無、

公正証書の作成の有無」(11頁)

を考慮するってことになってます。

 

 

弁護士の考察

暴力があったら、共同親権を強制されたっぽいっていってよい気がします。

なのでこの項目には賛成。

 

暴力「等」って若干解釈の余地を残しているのは、

精神的DVや経済的DVの場合も場合によっては考慮する、

という含みを残すものと解釈するべきでしょう。

 

苛烈な罵倒とか生活費を渡さないという脅かしとかも、

それで相手の自由な意思決定が阻害されることはありえます。

きちんと立証されて加害行為の強度が強い場合には、

「真摯な合意なし」という結論を導けるでしょう。

 

 

調停がなかったり公正証書がなかったりすると、

中立的な第三者の介在がないという点で、

一方的な意思の押し付けがあったんじゃないっすか?

という疑念が入ってくる余地が大。

 

というのが立法者の判断のようです。

 

 

実務

ってことであるならば実務的には!

 

逆にこの部分で疑念の余地をなくしておくために、

離婚協議書を公正証書にしておく必要があるということですね。

 

この点でも弁護士介在の必要性が高まりますね。

 

 

 

③共同親権を選択しても単独で親権を行使できる場合があるぜ

学び

仮に協議や裁判で共同親権ってことになっても、

「ⅰ他の一方が親権を行うことができないとき(11頁)

ⅱ子の利益のため窮迫の事情があるとき

ⅲ日常行為

ⅳ裁判所が特定の事項について単独行使を定めたとき(以上12頁)

これら4つの場合は単独で親権行使しちゃってOKなんですね。

 

ⅰは、一方の親が「長期旅行、行方不明、重病」(12頁)

などの場合には他方の親とともに親権行使はできないので、

その場合はひとりでやっっちゃっていいよってハナシです。

 

まあそりゃそうですよね。

重病で寝たきりで酸素マスクをつけて意識もうろうとしてる人に、

のんきに「うちの子中学受験させる~?」

とかいってらんないですよね。

 

 

ⅱはお子さんの利益のために共同親権的な意思決定をしてる暇がないとき。

 

お子さんが交通事故!一刻も早く手術しなきゃ死んじゃう!って状況で、
「うちの子どこの病院に入れる~?A大学病院~?B市民病院~?」

とかいってたらヤバいっすよねサイコパスですよねってハナシです。

 

 

ⅲは日常的なことでいちいち他方の親権者の了解取る必要ないってこと。

 

「うちの子、明日美容院行くっていってるけどいい?

美容院代と小遣いで7000円あげてもいい?

出かけるのにスカジャン着たいっていってるけど大丈夫?

あと明日の夕飯はカレー食わせといてOK?

そんであさって塾の模試だけど受けさせていいよね?」

 

みたいな問い合わせが来たらむしろ問い合わせられた方が、

「そんなことそっちで決めてくれーー!!」

ってぶちきれちゃいますよね。


 

ⅳはこれら以外のことでも裁判所が、

単独親権行使を定めておけるってハナシです。

 

「どこに住むかは子と同居する監護者が単独で決める」

みたいなことなんでしょうか。

 

正直具体的な事例が想定しづらいですが、

まあリストアップから漏れたような事態については、

裁判所の判断を待とうって趣旨なんですかね。

 

 

弁護士の考察

共同親権については賛成派と反対派が結構極端に分かれています。

筆者は7:3くらいの割合の否定派です。

「親権を共同行使できる夫婦なら普通は離婚しねーだろ」

と思うからです。

 

 

とはいえ共同行使できるなら別にしてもらえばいいと思います。

筆者の考える「普通」だけが全てではないですから、

何らかの事情で離婚後に共同親権を行使する必要があり、

これが可能な夫婦もどこかにいることでしょう。

 

そのような場合に上記のような例外を設けておくことは、

子の利益の観点から適切だと考えます。

 

 

どんなに穏やかに円滑に共同親権を行使できる夫婦でも、

時間的・空間的な障害はクリアーできません。

 

一方が過労で倒れちゃったタイミングで子の進学先を決めなきゃいけない!

という時間的な障害はいかんともしがたいです。

一方が仕事でアマゾンの奥地にいるときに赤ちゃんに手術を受けさせるか決めなきゃいけない!

という空間的な障害も場合によっては乗り越えることが不可能です。

 

そのような場合は一人でやっちゃっていいよと。

実に妥当かつ常識的な例外事例だと感じます。

 

 

実務

筆者個人の考えや気持ちはおいておいて、

制度ができた以上きちんと対応するのがプロ。

 

原則と例外についてはアドバイスできるようにしておくべきですし、

紛争が生じた場合にはきちんと対応するべきでしょう。

 

 

うーん実務っていうか心構えの話だなー。


 

 

④共同でやるべきことはたくさんあるぜ

学び

共同親権が選択された場合には、

共同で決定しなければならないことが結構たくさんあります。

 

「居所の指定や転居、

進学先の選択、

重大な医療行為、

長期の勤務を前提とする就職の許可など」(以上12頁)

 

といったように、

「子に重大な影響があり日常行為とはいえない行為について、

急迫の事情もなく父母双方が親権を行使できる場合」(同)、

共同で親権を行使しなさいということになってます。

 

 

弁護士の考察

ここでも「など」がついているので、

ここで挙げられた意思決定だけでなく、

他の重大で日常行為の範囲を超えた急迫性のない意思決定も、

両親が共同できめていく必要があるということになります。

 

 

このように親権を共同行使する行為の範囲が明確に画されていないこと、

同居親だけでなく別居親にとっても結構しんどくないでしょうか?

 

 

例えば進学先の選択が共同行使の対象になるなら、

進学した学校を退学するか否かの決定も同様なのではないでしょうか。

大学浪人するか否かの決定も同等の重要度がありそうです。

居所の指定はいわゆる「お引越し」の場合だけでなく、

たとえば大学に進学したお子さんがレスリング部の寮に入るかどうかとか、

そんな場合も含むと解することができます。

 

これ、結構際限なくないですか?

 

いちいち別居親に相談しないといけないという同居親はもちろん大変そう。

だってどこまで共同行使の範囲に入ってくるか自分一人で判断するのきついでしょう。

 

 

そして別居親さんにとっても不意打ち的な大変さが発生することが予想できます。

 

「さーて今日から半年間は全ての力を投入して新規プロジェクトに打ち込むで!」

って気合い入れて出張先の北海道のホテルの部屋を半年分予約入れたとこに、

 

「うちの子高校退学してティックトッカーで食っていくっていいはじめた。。。

ちょっと電話で話せることじゃないから沖縄の自宅まで帰ってきて話し合ってや。。。」

とかいわれたらそれなりに厳しくないっすか?

 

 

みたいに範囲の限定がないことからトラブルが起きることが容易に想定できます。

 

 

実務

条文が強行規定化任意規定かわかんないので、

この手のトラブル対策として有効かどうかイマイチわかんないですけど。

 

一応筆者の対策案を書いておきます。

 

ズバリ、親権の共同行使の必要がある行為を限定列挙しておいたらどうでしょう。

離婚協議書の文言としてはたとえば、

「なお共同親権の対象となる行為は、以下各号に限定するものとし、

これら以外の行為については乙の黙示の承諾があるものとして扱う。

1 居所の指定や転居

2 高校までの進学先の選定(高校卒業後の進学先は対象外)

3 手術や入院またはこれに準する医療行為

4 長期勤務を前提とする就職」

みたいな感じにしたらどうでしょう。

 

どうでしょう?どうでしょう?

他の専門家のご見解も聞いてみたいぜ。

 

こんな風に協議時点で共同親権の範囲を限定しておけば、

不慮のトラブルは相当程度回避できると思うのです。

 

 

 

⑤会いたければ面交だぜ
以上でざっくりと重要ポイントは網羅出来ました。

別に「これで共同親権については十分」というわけではなく、

あくまで現時点での筆者の勉強の成果はこれくらいという趣旨です。

 

 

ここで注意しておきたいこと。

 

共同親権とは具体的にどのような権利なのか。

それは簡単にわかりやすくいいますと、

別居親が子の重要事項の意思決定に関与できる権利です。

 

別居親が子に会えるようになるという権利ではないです。

そういう趣旨のことは本論考には一言も書かれてないです。

 

 

なので別居親さんの、

お子さんと会いたい!
お子さんとコミュニケーションしたい!

というご希望を実現するのは共同親権ではないです。

それは面会交流になります。

 

ですので本論考でみてきた選択的共同親権が導入されたとて、

やはり面会交流において適切な交渉をしていくことの重要性は変わりません。

それどころかお子さんのご希望やお気持ちを把握して適切に共同親権を行使するために、

面会交流でお子さんとのコミュニケーションの回路を太く強くしておくことが、

これまで以上に重要になったといってもよいと考えます。

 

 

このような学びを得ましたので、

面会交流の技法シリーズもきちんと記事にしていきたいと思います。

 

 

 

⑥感想をいうぜ

筆者個人は前述のように共同親権には否定的な立場です。

しかし今回のようにある程度のケアが担保された制度であれば、

これによってお子さんや同居親さんの利益が決定的に損なわれる、

という危険性は低いとみてよいと考えます。

 

ただしこのように考えるには条件があります。

それは家裁の予算や人員が拡充され、

判断や手続きの適切さや迅速さが確保されること。

 

わけわかんない判断が続出したり手続きが進まないということになると、

同居親さんも別居親さんも混乱しますし、

なによりお子さんがかわいそうです。

 

 

本論考末尾にも、

「現時点では問題点は完全には解消されないまま課題が残されている」

「家庭裁判所に大きな期待が寄せられていることから、

…裁判官や調査官の増員をはじめとした対応が急務である」

「不十分であるとみられるときは、必要な対策を講じる必要がある」(以上15頁)

といった問題意識が示されてます。

 

正直な感想を申しますとこのような微温的なご指摘は不十分と考えます。

もちろん青竹先生のお考えが不十分ということは絶対にありません。

お立場などのしがらみがあってこのようなご指摘になっているわけです。

むしろ制約がある中でできる限りズバッといってくださる努力をされたのでしょう。

 

 

翻って筆者はなんの立場もない野良犬弁護士ですから、

狂犬が暴れまわるような言い方をすることができます。

 

野良犬としては、

「施行までに家裁の人員を増やしてね♡

具体的には家裁の裁判官と調査官の人数を2割増やしたらいいんじゃない?

書記官の人数もそれに伴って増やしちゃおっか♪

家裁がきちんと対応できないと全国的に混乱しちゃうもんね(涙)

別居親も同居親も子も不幸になっちゃうよー( ;∀;)

国民を不幸にするのはダメダメだお"(-""-)"

 

施行後は裁判官3:調査官2:弁護士5の割合で人を集めて検討委員会を組織しよ♡

そんでそんで、法的手続きに乗ったものと乗らなかったものと区別せず事例を集積して、

2年後に運用状況の報告と検討委員会の見解をまとめて本にしよ♪

そして3年後にこの本を元に立案した新たな運営指針を出して修正していこ☆

 

そういうふうにしたらきっと共同親権の制度が国民を幸せにする良き良きなものになるよ('ω')ノ」

 

と提言しておきます。

野良犬っぽい口調で書いたら品性を欠いたので、

おじさんが考えるかわいい口調に直しておきました。

 

『家庭の法と裁判』

という雑誌がありましてな。

実態として家裁の運用を左右することがあるタイプのやつです。

 

その51号に、

『「東京家裁人事部における離婚訴訟の審理モデル」について』

という論考が掲載されましてな。

 

誰が書いているかというと東京家裁家事6部なのじゃよ。

 

 

東京家裁における審理の方針が変わって、

ひいては全国の家裁に波及する可能性が高いので、

解説しておこうと思ったわけじゃ。

 

以上がなんでおじいさん文体なのか自分でもわからないけど、

読者様に必要そうなポイントをかいつまんでわかりやすく解説します。

 

 

 

①「訴訟物…として民放770条を1項5号を記載」(130頁)しなさい

つまり「性格の不一致」的な離婚理由を請求原因として書きなさいって話。

 

不貞とか悪意の遺棄といった、

ビシっとした離婚理由が万一証拠から認定できなくても、

これがあれば「性格の不一致あるかもしんないじゃーん」

という前提に立って離婚が認められる可能性を見込んで

先々の審理計画を立てやすいからだって。

 

よいこのみんな、離婚訴訟を提起するときは、

必ず1項1号を請求原因にしような!

 

という家裁様からのご指示になります。

 

 

 

②「別居開始日」と「別居に至る直前の経緯」(130頁)を訴状で説明しなさい

別居中か同居中かもはっきり書いてない訴状があるので、

家裁としてはそこがどうなのかわかんなくてイラっとしちゃうんだって。

 

なので、別居中なら別居日をハッキリと書く。

 

そうすると、別居期間が長ければ「離婚」に行きやすく、

反対に短ければ「離婚」に行くには色々ヒアリングしないといけないから、

家裁がその変動するか見通し立てやすいんだって。

 

 

そして、別居直前の経緯も書いてあると、

どちらが家を出たのかとか子連れなのかとか、

そのあたりの経緯がわかるのでありがたいって書いてあります。

 

正直、子連れ別居がマイナスポイントか、

みたいなところも見たいんじゃないの家裁さん?

 

とちょっと勘ぐってしまう筆者です。

 

 

とはいえたしかにきちんと書いた方が、

事案の全体像を家裁に伝えられることに間違いはないです。

 

なのでご指示どおりに書くようにしましょう。

 

 

 

③配偶者の細かな言動を長々しく書かないで、

「調停の経緯及び予想される争点」(131頁)を訴状に書きなさい

本文では2つの項目に分かれていましたが、

一緒くたにしちゃいました。

 

 

「細かの事実の積み重ね」的なケースでなければ、

家裁としては決定的な破綻原因を中心に書いて欲しいんだって。

 

なんだかこっちに対する要求がだいぶ多いね。

 

でもまあ正直家裁としては読むのが大変なのかもね。

メリハリつけてなるべく簡潔にまとめた方がいいかも。

 

 

そして、調停の経過と、

それによって明らかになった争点も書いてくれっていってる。

 

どこでが決裂の原因となって調整が不成立になったのか。

親権者なのか財産分与なのか養育費なのか。

 

そういうことを訴状の段階で知りたいんだって。

先々の審理の見通しをたてやすくなるからっていってる。

 

まあそれは理解できるよね。

今後は調停のことも書いてあげましょう。

 

 

 

④家裁「第1回口頭弁論期日で論点整理したいよ」

第1回目の裁判のときに双方に口頭でおりゃべりして、

「何が重要な争点になるか、どのような主張立証を予定しているか、

どの程度の審理期間が必要となるか」(132頁)見通しを立てたいんだそう。

 

 

審理期間なんかぶっちゃけわかんねえよって思わなくもないけど、

争点とか立証方法についてはあらかじめざっくり考えておいて、

裁判で家裁に教えてあげたらいいかも。

 

家裁の方でもなるべく率直に、

家裁の見通しをこっちに教えあげるからねって書いてます。

 

 

こういう風に早い段階から話を整理していくことは、

弁護士にとっても見通しが立てやすくなり、

お客さんに見通しをお伝えしやすくなるので、

ありがたい話です。

 

積極的にコミュニケーションとって、

常に出口を考えながら手続きを進めていきたいねっ。

 

 

 

⑤離婚原因と有責配偶者性を最初に議論するぜ

この2つの要素は、離婚を認めるか認めないかを左右します。

 

そして家裁が離婚を認める方向で進めようと考えて初めて、

離婚の条件である財産分与や養育費等の話に移れるわけです。

 

 

そういう先後関係があるので、

離婚原因と有責配偶者性→財産分与・親権・養育費など

っていう大きく2段階の順番で検討していくって話です。

 

 

基本的には、

「主張反論を2往復させると、」(133頁)

だいたい議論は出尽くすと思うよって書いてます。

 

 

これらは考えてみれば当たり前の話かも。

 

離婚するか否か定まらないと離婚する場合の条件の話に移ったらおかしいし。

何往復も最初の段階の議論をしていたら裁判が終わらなくなってしまいます。

 

とはいえたいぶ以前からこのような方針で

訴訟上の議論が進んでいたと思うんだけど、

まじめっ子の家裁ちゃんとしてはここで改めて宣言しておきたかったのかな。

 

 

家裁ちゃんってこういうとこ、

ちょっと律儀でかわいいよね。

 

 

っていう方向で、

家裁の審理をやっていきたいんだって!

 

 

 

⑥財産表の備考欄にに書き込みすぎるな(怒)

って怒ってます家裁ちゃん。

 

 

狭い備考欄にぎっちり書かれても読みづらいみたい。

準備書面に詳しく書いてもらって、

備考欄では準備書面の該当部分を引用する程度にすると、

「合理的であろう」(137頁)(筆者訳:「ありがたいよっ♡」の意味)

って書いてます。

 

 

「原告主張用と被告主張用の備考欄を設ける」(同頁)案も書いてあるけど、

結局狭い欄にぎっちり書くことになってしまいそう。

 

その他の代替案もわかりづらくなりそうなので、

準備書面引用方式が一番いいんでないかな。

 

 

 

⑦そのほか

「家裁ちゃんとしては財産隠しを疑ってしまうから

調査嘱託をやりたくなっちゃうのはこんなとき!」とか、

 

「家裁ちゃんとして預金が特有財産だなって思うのはこんなとき!」

「不動産の特有財産性を認めたくなるのはこんなとき!」

 

みたいな財産分与ハック的な内容が137頁以降に書かれています。

 

 

このあたりを書面で主張したい場合、

同業者諸氏は松本先生本を引用されることが多いと思われるけど、

本論考も大いに参考になるので目を通されたらいいなって思います。

 

 

このへんはご自身で読んでみてもらえましたら。

 

 

 

8おわりに

最後らへん、家裁のことがなんだかかわいくなってしまって、

頭の中で擬人化して「家裁ちゃん」って呼んじゃってました。

 

本書冒頭の家族法改正の論考にも目を通すべきだと思うんだけど、

筆者くん、今日はもう眠いんだ……(時間のある夜にまとめて記事を書いてる)。

 

 

というわけでおやすみ!

 

 

期待した内容では全然ないけど面白かった。

介護事業者さんの息抜きにオススメ。

 

好きでいつも見ているユーチューブチャンネル

『令和の虎』の出資者側の谷本社長。

 

筋の通った正統派の経営者という感じで、

けっこう共感しながら拝見しております。

 

 

介護事業で儲けるハックがたくさん載ってるのか!?

そうではなくて熱い介護論が展開されるのか!?

と期待して読んだんだけど普通に谷本社長の半生記だった笑。

 

 

とはいえ半生記としてすごく面白くて学びもある内容。

イベント屋さんで市場調査するのもすごいし、

素人の承認欲求をテコにしてイベント成立させちゃうのもすごい。

 

イベンターの延長で人材業に行っちゃうのも、

まずはスモールスタートで始めちゃってそっから修正していく、

という成功の秘訣を示唆してるよね。

弁護士が独立するときとか参考になると思う。

支店出すときとかね。

 

 

あとは人生が破天荒で非常に興味深い。

谷本社長、『令虎』ですごく怖い厳しい目をすることあるけど、

修羅場踏んであんな顔するようになったんかなーと納得。

冷淡とかとか酷薄とかでなくなんていうんだろ、

厳寒の前線でじっと敵軍を見つめるトーチカみたいな迫力なんだよね。

 

でもなんでそんなに腹くくれてるんだろ。

自分もお客さんのための仕事だと腹くくれるんだけど、

谷本社長も同じような感じなんだろうか。

きいてみたいなー。

 

 

もちろん介護について言及してる部分では参考になる記述もある。

現業と本社機能を分けて私情が入らないようにするとか、

コストカットにスケールメリットを生かすとか、

それは介護の関係者からは出てきづらい発想だと思った。

 

こういうのは介護事業という、

あまり金儲けと結び付けられない業態と結び付けて語られると、

同じく「金儲け」的でないお仕事の自分にとって鮮明に見えてくるものがある。

 

その意味で自分にとっては大いに役立つ内容だった。

ドミナント戦略とか自分も近いことやろうとしてるので、

こういう成功した人と近い発想をできているのが嬉しくもある。

 

そうそう、ほんとそうだよね、ってその辺を読んでいて感じた。

 

 

ハラハラドキドキの谷本社長の大冒険!の中に、

ハックを探せる奥深い構造の本として読みました。

 

『令虎』今まで以上に楽しんで観れそう。

 

 

 

『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』

①全体的によい内容ではある

ご紹介したい内容はだいたい紹介できたので、

最後に本書についての筆者の感想を述べます。

 

 

いくつかの重大な欠点はあるものの、

全体的にはよい内容ではある。

これが筆者の結論です。

 

 

新しい4つの着眼点は、

従来の7項目と比べると、

様々な下位規範を示してくれています。

 

弁護士にとっては戦いやすくなり、

双方で噛み合った実のある議論が増えると期待できます。

 

 

また共同親権やフレンドリーペアレントルール的な価値観の扱いも、

現代のニーズを踏まえつつバランスのとれたものになっていると考えます。

 

急進的すぎることもない一方で、

男性も育児の担い手として期待されている、

今の時代に合致したものといえるでしょう。

 

 

新しい4つの基準については、

特に未来志向の「監護環境」に重きが置かれた点。

 

過去の「主たる監護者」の要素を論じるにしても、

未来に向けた方向性での議論が展開されることとなるでしょう。

紛争を通じて真剣に子の将来を考えるための気づきを、

両親が得るためのよいきっかけとして機能してほしいです。

 

 

年齢別に考慮要素の重要性が整理されたことも、

より実情に応じた議論を導くものといえます。

 

小さいお子さんには「面倒を見るのは誰がよいか」という観点で、

大きいお子さんには「お子さんの意思はどうか」という観点で、

というように発達の段階に沿った議論がなされるでしょう。

 

 

 

②しかし重要な欠点もある

フレンドリーペアレントルールの例外に物理的暴力のDVしか挙げないこと。

別居親に無断での子連れ別居を原則としてマイナス評価すること。

この2点は重要な欠点だと考えます。

 

 

人間には感情があります。

苛烈な精神的DVや経済的DVを受けた人が、

ニコニコ笑って面会交流に交流するのは困難です。

 

もちろん理屈だけで考えれば、

面会交流は子の福祉のための制度ですから、

親の気持ちは一切考慮せずに双方が協力して面会交流を実現するべきです。

 

でも本書の価値観が裁判所の運用として定着し、

「物理的なDV以外は面会交流においてマイナス評価されない」

という極論的な認識が世間で一般化してしまったら、

物理的な暴力以外のDVが野放しになってしまいませんか?

 

これは本当に憂慮すべき欠点です。

別に女性ばかりを擁護するわけではないです。

むしろ男性は物理的な暴力より精神的DVに苦しむ人も多いです。

もちろん女性にも精神的DVで苦しんでいる人がいます。

 

男でも女でも、

苛烈な精神的DVで苦しんでいた場合、

別居後直ちに面会交流への協力を強いられなくてもよくない?

 

しばらくメンタル面を治療するとか、

そういった意味での猶予期間があってもいい。

「その場合には第三者機関の利用が検討されるべきである」

とエクスキューズをつけてもいい。

 

とにかく物理的暴力以外のDVにも言及してくれよと。

きちんと何らかの指針を、

指針が難しいならせめて示唆を、

述べてくれよと。

 

あんたら賢いエリート法曹なんだから、

物理的暴力以外のDVという難しい問題から逃げるなと。

 

そういいたいですね。

 

 

もう一つの欠点は、

無断での子連れ別居を原則マイナス評価すること。

 

そこはもう少しフラットに考えるべきでしょ。

誘拐に近い態様とか欺罔的な態様とか、

そういう違法性の強い態様についてだけ、

マイナス評価すればよいでしょ。

 

いちいち別居を配偶者に宣言しなければならないなんて、

配偶者からの妨害に耐えることを強制しているのと同じ。

 

あんたら現実見えてんのか?

現場見えてんのか?

そのような強い疑念を感じます。

 

一応対策のアイディアは書いておいたけど、

あれだっておそらく万全ではないしね。

 

本書がこの点を訂正しないのであれば、

現場の弁護士としてこのような考えには敢然と対峙します。

 

男も女も耐え切れなくなったら逃げていいだろうが!

辛い状況に耐える義務なんかないだろうが!

俺のお客さんの幸福を邪魔するな!

交渉相手の幸福を邪魔するな!

「三方よし」を実現させようともがいている現場の努力をあざ笑うな!

そういう気持ちでおります。

 

 

 

③今後は弁護士の重要性が高まる

以上のような本書の特徴、

よいところも悪いところもありましたね。

 

どちらにも共通するのは、

弁護士の役割がより重要になる、

という未来を示唆していることです。

 

 

よいところに関していいますと、

4つの着眼点の整理や年齢別の整理など、

裁判所が議論してほしい方向性がより具体的に示されました。

 

これを反対から見てみると、

これまで北海道の道路みたいにあまり信号もない道だったところに、

信号や標識がたくさん立ち並んでいるようなものです。

 

信号や標識の意味をきちんと理解して正しく通行する必要があるのと同じように、

本書の内容を正しく理解してこれに沿った主張を展開する必要があります。

 

これは簡単な作業ではないですから、

そういった作業のプロフである弁護士の出番です。

 

これまでは大きな道を自分も相手もなんとなく走っていたら、

裁判所の先導もあってそれなりのゴールにたどり着いた、

ということもあったと思います。

 

今後は相手の方はきちんと信号や標識を理解して走りますので、

自分が信号や標識を読めないと自分だけ遅れを取ることになるでしょう。

きちんと信号や標識を読んで最速のコースを走る力量のある、

弁護士の協力なしに勝負をするのは非常に厳しくなるでしょう。

 

 

たとえば、未来の要素である「監護環境」について。

裁判所の考える「よい監護環境」というものを理解していないと、

「監護環境」のところで裁判所に勝たせてもらうことは難しいですよね。

 

たとえば「毎日の世話はじいちゃんばあちゃんにやってもらって

私はひたすら仕事をして月額100万円くらい稼ぎます!」

という主張をうっかりしてしまうとこれは裁判所に嫌われる可能性が高いです。

なぜなら裁判所の考え方には一種の相場観があるのです。

 

この場合は、おじいちゃんおばあちゃんのような「監護補助者」は、

あくまで補助的なお手伝いくらいの存在であるべきであるという考え方です。

日々の世話は監護者である親自身がやるべきというのが原則だという考えで、

監護頬者にお子さんのお世話を任せるようなことは嫌いがちなのです。

 

全ての論点についてこのように、

裁判所の考え方に沿った作戦を立てなければならないわけです。

裁判所は「→」こういう標識を出して、

右に進んだら勝たせますよ、と教えてくれています。

 

でも弁護士でない普通の人は「→」これがなかなか見えなかったり、

「→」これは右に進んだらやばいという意味の標識だと勘違いしてしまったりします。

本書が実務に浸透することで「→」これや「↑」こんなのが増えたので、

こういうのに対応するのが上手な弁護士必要性が高まったと考えます。

 

しかも、単に法律や判例の知識に詳しいだけの弁護士ではなく、

具体的な事案に即してアドリブ的に柔軟にモノを考え、

生活や普段の言動といったところまでアドバイスできる、

人間力の高い弁護士のニーズが拡大すると予測します。

 

 

 

反対に本書の欠点に絡めていいますと、

配偶者に無断で子連れ別居をしてしまうと、

裁判所からマイナスポイントをつけられかねないわけです。

 

また面会交流ができないなら適切に裁判所に伝えないと、

やはりマイナスポイントがついてしまうということになりえます。

 

それぞれの場面で弁護士がきちんと作戦を立て、

上手に実行してゆく必要があるということです。

 

特に別居については、

本書を知らない人がうっかり無断で子連れ別居をしてしまう可能性は十分あります。

なので協議や調停といった具体的な交渉事が始まる前の、

別居の段階から弁護士に相談してきちんとアドバイスを受ける必要があります。

 

状況に応じてマイナスポイントが付かないようなやり方を、

プロの目線で具体的事案に即して検討し、

適宜連絡を取りつつ実行をしていくのがベストでしょう。

 

このように本書の欠点といえる部分に対応するためにも、

早い段階から弁護士に伴走してもらう必要が高くなります。

その意味で弁護士の重要性が高くなってくるでしょう。

 

そしてこちらの欠点的な要素に対応するためにも、

単に法律や判例の理屈に詳しいだけの弁護士では不十分でしょう。

交渉相手の気持ちを読んで刺激しないように対応し、

別居態様や面会交流が争点化しないように事案全体をマネジメントする必要があります。

 

交渉相手とのファーストコンタクトで包容力をもって気持ちを落ち着かせる話術や、

お子さんが面会交流をしたくなるように説得の仕方を考えるスキルなど、

やはり机の上とモニターの前から遠い部分の力が求められるでしょう。

 

 

このように筆者としては、

本書の内容が実務に浸透することによって、

勝ちに行くためには弁護士の必要性が高まり、

しかも人間力的な力がより重要になってくる。

と考えております。

 

 

 

④おわりに

繰り返しになりますが、

本書はよい部分がたくさんあるのですが、

重大な欠点もあります。

 

この欠点部分は現場の職人として看過しがたいものがあります。

別途の論考を出すとか早めに改訂版を出すとかで、

早急に対応しもらいたいと思います。

本書はどうやら爆売れしている様子ですから、

どやねん次の版刷るときにしれっと内容いじらんかい自分!

と謎のエセ関西弁でやかってやりたい気持ちです。

 

早急な対応が望めず本書の欠点が悪い方向で実務に浸透すると見ましたら、

筆者は現場から何らかの手段で欠点を補うことを試みたいと思います。

 

 

 

ということで。

『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』
の解説シリーズはこれにて完結です。

 

 

また面会交流の話を進めてまいりたいですし、

女性のための年代別離婚を考えたときの注意!的な記事も書きたいです。

最近は相続案件に注力してるので相続についてもアウトプットしておきたいです。

顧問先様向けの不動産と介護の話も書きたいと思うのですが、

顧問先様は読んでくださっているのでしょうか???
読まなくても書くよ。。。書いちゃうよ。。。

だから読んでね。。。寝る前とか。。。移動中とかに。。。読んでよね。。。

『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』

⓪全国初なのか??そして前置きが長くて萎えるね。

たぶん弁護士による長文での解説は全国初!
というふうに筆者が個人的に思っている本書。

初じゃなかったらマジでごめんなさい。

 

ここ数日、多くの方がこのシリーズを読んでくださっています。

これに伴い、

「全国初が仮に嘘だったらどうしよう?」

「嘘つき!って誰かに怒られたらどうしよう?」

と少々ビビっております。

 

 

しかも私、数日前の記事の最後に次回予告的に言及しますと書いたのに、

次の記事で個人的見解を述べる際の筆が滑り過ぎてしまった結果、

うっかり言及し忘れてしまった内容がございます。

前の記事を編集で書き足してもよかったのですが、

というか途中までその作業を進めたのですが。

 

「なんか前後の文脈とつながるように整理し直すのしんどい……」

「書き足すと記事が長くなりすぎるけど短く切りたくない……」

という状態になり悩むことにちょっと疲れてしまいました。

 

ので、その作業の時のコピペなども活用しつつ、

新たな記事として書かせていただきたいと思います。

 

 

なにを忘れていたかというと、

別居開始の態様(監護開始の態様)について

です。

もっというと、

無断で子連れ別居したらマイナスポイントなの!?

という問題です。

 

 

この前置きの長さはやばいですね。

本題に入ります。

本書の48~49頁の記載内容についてです。

 

 

 

①本書に書かれているのは……

「一方の親が他方の親に対して何ら説明なく無断で子を連れ出すなどして

子の単独監護を開始した場合は、たとえそれが平穏な態様で行われても、

子と他方の親を物理的かつ精神的に引き離す行為をしたとして、

他方の親と子の関係に対する姿勢に関して、消極的な評価を受ける」(48頁)

と書かれています。

 

 

これはどういうことか。

 

「平穏な態様」とは。

無理やり抱きかかえて泣き叫ぶお子さんを連れて行ってしまうとかでなく、

普通に穏やかに手をつないでお子さんを連れ出すような場合、

という意味です。

 

「このように穏やかに落ち着いてお子さんを連れて別居する場合にも、

「何ら説明なく無断で」お子さんを連れて別居する場合は、

裁判所としてはネガティブな評価をするのが基本になりそうですよ。」

 

そんなことがここに書かれております。

 

 

もっと極論的な言い換えをしますと、

 

「どんなに穏やかに滞りなくやったとしても、

配偶者に断りを入れず黙ってお子さんを連れて別居するなら、

それはマイナス1ポイントを付けさせてもらいますよ。」

というのに等しいことがかかれています。

 

 

もちろん直後に、

「他方の親が子を虐待している」

「一方の親に暴力を振るっている」(48頁)

というような場合で、

子のために「やむを得ない目的による場合は、」

マイナスに評価できないというエクスキューズは書かれています。

 

 

とはいえ原則論としては、

「穏やかでも無断の子連れ別居はマイナス!」

ということが本書の基本的な考え方なわけです。

 

 

 

②断りいれなくないですか?

ということが本書の48頁に書かれているんですけどね。

 

別居するときに配偶者に対して、

「わたし、子を連れて別居します!」

と元気に宣言することってありますでしょうか。

 

 

宣言してしまったら、どういう事態が起こりえますでしょうか。

「子連れでの別居なんて許さない!」といわれて、

別居を断念するしかなくなるということが想定されます。

 

本書がエクスキューズとして挙げない精神的DVや経済的DVの場合は、

マイナスに評価されてしまうことをおそれて別居に踏み切れなくなってしまうのか。

それはまずいんじゃないかという気がします。

 

そうすると想定されるのは、

それまで育児の主要部分を担っていた親御さんが、

どうしても配偶者と別居したい場合、

お子さんを残して家を出なければならないのか。

これはかえってお子さんに対する「遺棄」になってしまいます。

これはあまりに理不尽ですね。

 

 

別に、これが決定的な事情になるわけではないんです。

「無断で子連れ別居したら一発アウト!監護者の資格なし!」

ということにはなりません。

 

「単独監護開始の経緯…は他方の親と子の関係に対する姿勢を

評価するに当たっての一事情と整理することができ、

知れ二うが単体で子の監護者指定の判断の独立の要件や

検討対象となるものではない。」(49頁)

と述べられています。

 

 

とはいえ、お子さんを連れての別居を考える親御さんにとって、

非常に不安を与えてしまう内容であることに変わりはないでしょう。

 

 


③マイナス評価されない対策とは
一髪アウトではないにしても、

できる限りマイナスポイントは減らしておきたいですよね。

 

 

本書には、

ⅰ「別居前に他方の親に対して別居の意向や理由を説明」(49頁)

した場合や、

ⅱ「別居後、別居親と子の面会交流に積極的に応じ、

別居親と子の関係の維持に努めているような場合」(同頁)

はマイナスが小さくなると記載されています。

 

 

ⅱは後から実現できるとしても、

ⅰは正直無理なことが多いというのが現実でしょう。

 

別居を否定されて終わり、

ということになってしまうことが予想できます。

 

 

でもやっぱりⅰに近いことをしておきたい。

少しでもマイナスを減らしておきたい。

そのためのアイディアは弁護士として出しておかないといけないと思います。

 

 

本書を読む前から筆者が提唱している手法をアイディアとして書いておきます。

本書が発売される前から筆者が使っている手法なので、

本書で書かれているマイナス評価を避けるために考えたものではないです。

 

突然子連れで別居された配偶者は、精神的に大きなショックを受けます。

そのショックを少しでも和らげたいと思って考え出した手法です。

筆者も人の親なので、取り残される親御さんのショックについては想像ができるわけです。

同じ人の親である相手に与えるショックはなるべく小さくしてあげたいという配慮が根本にあります。

そのように配慮できる部分はきちんと思いやりをもって配慮してあげることが、

長期的には交渉をスムーズにし筆者の依頼者の利益にも資すると考えています。

 

しかしこの手法が絶対的に正しいと統計を取ったわけではないです。

なので「ご利用は自己責任で」ということになります。

真似してもらって悪い結果になっても一切責任はとれません。

 

 

その手法は、以下のようなものです。

 

子連れ別居の際に別居理由を簡潔に記載した置手紙を残す。

置手紙にはすぐに弁護士から受任通知がくるので、

面会交流の段取りなど弁護士に連絡を取ってもらい、

早期に面会交流を実現したい旨記載しておく。

別居の翌日に弁護士から別居親に受任通知が届くようにし、

残された配偶者が速やかに弁護士に連絡を取れるようにしておく。

弁護士は残された配偶者から連絡をもらった場合は、

別居理由について状況に応じて詳細に説明したり、

場合によっては調停申し立ての予定など今後の進行予定を説明したりし、

面会交流についても別居親に対し早々に段取りを提案する。

必要であれば別居親が法律相談できるよう他の弁護士を紹介する。

 

以上になります。

 

 

もちろんこれをやっておけばマイナスを100パーセントカバーできるわけではないです。

これだけが全てでもないので他のアイディアもぜひ教えていただきたいです。

今のところこの程度しか思いつかないというのが筆者の現状です。

 

 

 

④この部分は昔の方がよかったかなって思う

昔の7項目のときも、

「監護開始の違法性」という形で、

別居開始の態様について考慮されてはいました。

 

 

とはいえ優先順位は高くなかったですし、

無理やり子を誘拐して連れ去ってしまうような違法性の高い態様でなければ

主たる監護者による子の連れ出しは原則として違法でない、

という扱いだった記憶です。

 

こういう判断基準の方が現実に即しているのではないでしょうか。

 

 

別居の態様について論点化して長々争われることは、

お互いにお前が悪い!という言い合いを助長して両親の葛藤を高める効果はあっても、

なにがお子さんの利益になるかを両親が考える機会にはならないと思います。

後ろ向きな議論はお子さんのためにならいと思うのです。

 

それよりも、

面会交流をどうやってお子さんの利益になるよう運用するか話し合ったり、

お子さんのためにどのような監護環境を用意できるか競い合ったり、

そのような前向きな議論が集中的に展開されるべきではないでしょうか。

 

 

後ろ向きな議論を誘発し結果としてお子さんの利益にならない可能性がある、

という点でこの部分における本書の新しい考え方には賛同できません。

 

お子さんの健全な成長と豊かな発展のために、

前向きな議論が展開されることこそが、

めぐりめぐって別居親さんのためにもなるのではないでしょうか。

 

「あなたが悪いんだ!」って怒ってる状態って不幸でしょう。

怒りから抜け出せないという状況はしんどいですよ。

「わたしの方が子どもを幸せにできる!」というポジティブな戦いをしましょうよ。

そんな風に思いますね。

 

 

そんなところですので、

この部分につきましても補足説明の論考かなんか出してください。

早く早く早く早く早く出してください。

別居親さんを不幸な状況に居着かせるような判断基準は撤回してください。

 

筆者は主に別居親さんの立場に立った面会交流の技法シリーズの記事も書いてます。

筆者も別居親さんの代理人をすることは多いですから。

その場合には別居親さんの幸せを実現するために戦うわけです。

別居親さんを不幸な状態に居着かせるような判断基準は迷惑極まりないです。

自分のお客さんには少しでも幸せになってもらわないと困るんですわ。

 

 

ぷんぷん!!!

というのが本日の記事のシメになります。

 

次回こそ!

次回こそ『子の監護・引渡しをめぐる紛争の

審理及び判断に関する研究』解説シリーズ最終回です。

たぶん。。。

『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』
1 本日は各論後編!

ということで各論的な部分を解説してゆきます。

 

2 共同監護の判断基準は妥当である

巷でいろいろ噂の共同親権に近似する論点。

 

本書では、

「別居以降も子を共同監護してきたといえるような事案」(53頁)

において、

 

「父母のいずれかを子の監護者と指定する必要はないという判断もあり得る。」(同頁)

と述べるといった限度で、共同監護に親和的な見解を示します。

 

むしろこの部分の直後に、将来的に両親の葛藤が高まると判断される場合に言及し、

「別居以降も共同監護か継続されてきたという経過だけを捉えて、

子の監護者を指定する必要性がないと判断するのでは」(同頁)ないと、

親和的な見解以上の分量で審理長論を述べています。

 

 

本書のこのような見解は妥当と考えます。

 

少なくとも監護者指定・子の引渡しの紛争が発生する場合には、

少なくとも子の去就につき両親の間に相当高度の葛藤があるのが普通です。

 

したがって、離婚調停において親権者の指定が争われているだけの場合と異なり、

裁判所の判断において共同親権を肯定する際にはより慎重になる必要があります。

 

そのような観点から考えますと、

「別居以降も子を共同監護してきたといえるような事案」

と最初の入り口を限定することには賛同できます。

 

そしてさらに慎重になるべきとして、

最初の入り口をクリアしただけで軽々に共同監護を認めるべきでないとして、

さらに絞りをかける姿勢です。

 

このような「最初の狭い入り口+更なる絞り」による慎重な判断は、

少なくとも本書が想定する状況では適切なものというべきでしょう。

 

 

このように見てみると、

少なくともこの手の審判で「共同監護」の結論を得る戦略は、

非常にハードルが高いため現実的といえない場合が多いでしょう。

 

このような戦略を採用することよりは、

筆者が面会交流の記事で書いているような、

面会交流を充実させる戦略を採用することが現実的なのではないでしょうか。

 

面会交流の戦略については既に目次的なものを作成してありますので、

本書の解説が終わった後にまた記事を書いていきますね。

(筆者の根気が続くことを)ご期待くださいませ。

 

 

 

3 特別な考慮が必要になる場合

ここまで解説してきた、

4つの着眼点を基本にした判断基準ですが、

この判断枠組みが後退する例外的な場合には特別な考慮が必要とされています。

 

①子の安全に問題があるケース

②子に障害や発達上の特性があるケース

この2つのケースでは、

特別な考慮が必要になるというのです。

 

 

①は、子への物理的な虐待がある場合が典型です。

「子の安全確保が最優先」(54頁)とされ、

4つの着眼点は一旦脇に置いておくことになっています。

この考え方は説得力があるでしょう。

 

死んでしまったりけがをしてしまったりする危険性があれば、

のんきに「着替えをさせていたのは誰で、食事を与えていたのは……」

といった話をしている場合ではないですよね。

 


②は、近年の問題意識がよく反映された判断基準と考えます。

 

嘘みたいですけど、いるんですよ。

「発達障害なんて存在しない」

みたいなお考えの親御さん。

 

身体的な障害であれば、

きちんと理解し対応できる親御さんと同居すべき、

といういうことは理解を得やすいと思うんです。

 

発達障害のように物理的に目に見えない概念については、

なかなか理解することも簡単ではないということはわかります。

理解したくない気持ちがどこかにあることもわかります。

 

でもやっぱり現実とは向き合わないといけない。

この社会は現実に向き合ってきちんと対策することを前提に作られているので、

お子さんの現実に向き合える親御さんが優先されることになります。

そうしないとお子さんが前述のような社会とかみ合わなくなってしまうからです。

 

 

これら①②についての特別な考慮については、

4つの着眼点と被る部分もありますが、

あまりに重要な要素であるため別途の考慮要素として扱い、

場合によってはこれ一発で判断を決定づけるという立て付けになっています。

 

 

親御さんが①②を理解してこれに沿った言動を行ってくれるのであれば、

それはお子さんの将来を明るい方向に近づける小さな一歩になるでしょう。

その意味でも重要な指針を示してくれたと感じています。

さすがエリート法曹のみなさんですね!

大好き!(前回記事からの手のひら返し)

 

 

 

4 子の年代ごとの判断の在り方もいいぜ

55~59頁では、

4つの着眼点とその中のさらに詳細な考慮要素について、

子の年代ごとにどれを重視するべきかという指針が示されています。

 

 

これも現場の職人の目から見てバランスの取れた指針になっています。


乳幼児期は「従前の監護状況、監護体制及び子との関係性を検討した上、

子に対して量および質を兼ね備えた日常の世話を安定的に提供でき、

かつ、子との間でより安定した愛着関係を形成している親」(55頁)

が監護者に指定されるべきと述べられています。

 

要するに、

お子さんが小さい場合に監護者にふさわしいのは、

過去に育児をたくさん担っていて、

今後もお子さんのお世話を安定して担えて、

お子さんとの精神的結びつきが強い親。

という判断基準になります。

 

反対からいえば小さいお子さんの監護者にふさわしいのは、

お子さん自身の意思や経済的な側面よりも、

お子さんとの物理的・精神的な関わりを重視し、

世話をきちんとできる親御さん。

ということになります。

 

 

ただしこのような主要な判断要素だけではなく。

「他方の親と子の関係に対する姿勢についての評価も踏まえ」(同頁)ることになります。

一定程度フレンドリーペアレント的な観点も考慮して、

最終判断をしましょうというくらいの意味でしょう。

 

 

筆者としては、非常にバランスの取れた判断基準だと考えます。

 

まだ小さいお子さんにとっては、

関わりが充実しており結びつきが強固で、

お世話をしてくれる親でないと一緒に暮らすのは難しいです。

ですから、主要な判断要素は適切です。

 

他方でフレンドリーペアレントルール的な観点を少々盛り込むことで、

自分の感情だけを根拠にお子さんを囲い込むような言動には、

一定程度事実上の警告を与えることができると考えます。

 

フレンドリーペアレントルール的な観点も評価してもらった結果の判断であれば、

別居親さんとしても納得考えられやすいという側面もあります。

 

 

そのほかの年代についても同様にバランスの取れた内容となっています。

年代が進むにしたがって、

たとえば小学生の時期は「子の意思を損料する必要性も高まる」(56頁)とし、
中学生以降は「まずは子の意思に着目」(57頁)することとし、

徐々にお子さん自身の意思の重要性が高まるという縦線が引かれています。

 

 

このような「お子さん自身の意思」については、

従来の7項目の基準の時代には、

「子の成長とともに徐々に重要性が高りますねん」

程度の抽象的な記載しか見られませんでした。

 

本書でお子さんの年代に沿って

どの年代でどの程度「お子さんの自身の意思」を従事するか、

相当具体的に明らかにされたわけです。

 

 

これによって弁護士は主張を考えやすくなりますし、

裁判所も最終判断をしやすくなりますので、

よりお子さんの現状に沿った解決がなされる可能性が高まったと考えます。

 

 

さすがエリート法曹のみなさん!

こういう素晴らしいところが多いので、

全体としてはとてもよい内容なんですよね。

手のひら返しほんとすみません。

前回のとこだけ、ほんとに不満だったんです。

 

 

 

次回

これで各論的なとこで解説したい部分は全部触れることができました。

後は次回に本書が今後家事実務にもたらす影響の予想的な話を書いて、

本書についての記事を終わりにしたいと思います。

 

引き続き、よろしくお願いいたします。

 

『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』

本書が実務に与えるであろう多大な影響

たぶん今後の裁判所の判断を先導していくであろう本書。

実際に婚姻費用とか養育費について書かれた同じ系統の本は、

実務の99パーセントを支配しているといっても過言でないです。

 

監護者指定審判、子の引渡し審判並びに保全処分に、

多大な影響を与える可能性は非常に高いです。

 

 

また、監護者指定・子の引渡し手続きは実務上、

親権争いの前哨戦というか前半戦として機能しています。

その意味では監護者指定・子の引渡しについて書かれた本書は、

実質的には親権争いにも大きな影響を与えることでしょう。

 

さらにさらに。

いわゆる「フレンドリーペアレントルール」的な価値観を

裁判所がこれまでより大きな比重を持たせて採用すると

明言することに踏み切った本書。

当然面会交流の実務にも影響するはずです。

 

 

そう考えると、本書が離婚事件の裁判実務に与える影響は、

質的な強さの側面でも量的な範囲の側面でも、

多大であるというのが正しい評価だと捉えるべきというのが筆者の見解です。

 

 

 

影響の多大さを踏まえた個人的な見解

前回までの内容について、

どうしても述べておきたいことがあるので、

一旦ここで筆者の見解を書かせてください。

 

 

筆者の個人的な見解としては、

フレンドリーペアレントルール的な価値観の比重については、

はっきりいって大きくしすぎという気がします。

 

他方でこのルールの例外となるべき事案の例示列挙の部分で、

具体例として身体的な暴力だけが明示されていることに対しては、

政府の定めるDVの定義(精神的・経済的・性的DVを含む)

の全部をカバーしていないことが非常に気になっています。

 

物理的暴力以外の苛烈なDVにつき主張立証が成功した場合でも、

ニコニコ笑って面会交流に協力しないといけないということか?

と捉えられかねない記載内容となってしまっています。

フレンドリーペアレントルール的な要素の比重の大きさと比べて、

例外事例の比重が小さすぎてバランスしないと感じるのです。

 

 

司法府であり三権分立の構造の中で人権救済の砦を担う司法府が、

DVについての理解において行政庁である政府よりも前時代的な立場を採用することは、

司法府の役割を放棄するに等しいため許容されるべきではありません。

 

★★ここから次の★まで話がずれるよ★★

 

筆者は、行政庁の役割については、

ベンサム流の功利主義の見地に立ち、

「最大多数の最大幸福」を実現することだと考えます。

そしてこれを実現するために行政庁の手から零れ落ちてしまった少数者を、

司法府が救済することで、国民の権利が保障されるという構造であると理解しています。

 

このような理解は筆者なりのアレンジを加えてはいるものの、

三権分立の構造についての古典的かつ正統的な理解とほぼ同じです。

 

司法府の一端を担う弁護士はそれだから、

必要であれば国に対しても喧嘩を売ります。

弁護士が左翼だからとか人権派だからという問題ではないです。

依頼者個人の利益を守るためには国家を含む誰に対しても裁判闘争を仕掛けるという役割は、

弁護士という社会存在が必然的に担わざるを得ないのです。

 

弁護士がそのような役割を果たすことで、

ときには国家というプログラムが内包するバグや機能不全が修正され、

国民の利益が増大するというのが筆者の考えです。

要するに、弁護士が国に喧嘩を売ることで国がより良いものになるという形で、

弁護士は国家というプログラムを補完する機能を果たしていると考えているわけです。

この考えは通説的なものではない独自見解です。

 

 

もちろん自分の仕事の中に国に喧嘩を売る可能性をどれだけ含ませておくかは、

弁護士個々人の個性によって異なります。

国の方針を理解した上でこれを肯定的に利用して依頼者の利益を増大させる、

というタイプの仕事に携わることだってそれなりの割合であります。

 

そういう右とか左とか人権派とか新自由主義といった些細な区別を超えたところで、

弁護士というアクターは本質的に国に喧嘩を売る可能性を保持している、

ということをいいたいわけです。

 

 

話がずれすぎました。

司法の役割に話を戻します。

 

★★ずれた話は終わってここから話が戻るよ★★

 

 

前述のように裁判所は三権分立の構造の中で、

少数者救済の役割を果たす役割を与えられています。

ですから弱者救済という役割については行政庁に遅れをとってはいけないのです。

 

本書に即していえば、

本書はフレンドリーペアレントルール的な要素の例外として、

精神的・経済的・性的DVといった物理的な暴力以外で政府がDVと定めた類型につき、

どのように取り扱うべきか明確な指針を示すべきだと考えます。

具体的な方法としては本書の改訂版でそのような事例につき言及するか、

裁判所なり別途の裁判所の息のかかった権威性のある論考なりで、

速やかにこの点につき補足的な見解が発表されるべきだと考えます。

 

 

たしかに、厚労省の定義の中で物理的暴力以外のDVは、

幅が広すぎて具体的な判断に困る場合も絶対にあるんです。

だから物理的暴力以外の事例を例示列挙するのって難しい。

そのことはよくわかるんですよ。

 

どんなに難しい課。

たとえば政府定義の精神的DVには「暴言」が含まれますが、

配偶者に「ばーか」っていうのは「暴言」でしょうか?

 

夫「お前だけを愛してるよ」妻「もう、ばーか♡」というのは?

大声で口論している最中に夫が妻に指を突きつけながら、

夫「ばーか!ばーか!ばーか!」と怒鳴り散らかすのは?

 

といったようにはっきりした物理的暴力と異なり、

そのほかのDVについては文脈やノンバーバルな要素が絡むので、

グレーゾーンがの幅が広く判断が難しいです。

だから多大な影響を持つ可能性が高い本書で書くのもまた難しかったでしょう。

 

 

しかし。

例えば「あまりに苛烈な暴言があって同居親において面会交流に協力することが不可能な場合」

ないし「苛烈な暴言により同居親が精神疾患にり患し面会交流への協力が困難な場合」

といった極めて限定的な記載の仕方で例示することは不可能でなかったはずです。

野生の弁護士の私よりはるかに優秀な法曹のエリート様たちが書かれた本書ですから、

私なんかよりもっといい書き方ができたはずです。

 

じゃあなんで書かねえんだよ!

なんで例外事例の例示列挙が暴力だけなんだよ!

ふざけんな!

てめえら実務を知らねえのか!?

机の上で頭がいいだけで現実を知らねえぼっちゃん嬢ちゃんか!?

さっさと補足的な見解を出せバカが!

と怒りを感じてしまいます。

 

 

別に、フレンドリーペアレントルールを否定したいわけではないです。

そこを突っ込んで書いてくれたから今後仕事がしやすくなる面もあります。

ただし実務においてありうる事態についても方針は示してくれやと。

方針を示すのがどうしても難しければせめて、

判断が難しい問題として暴力以外のDVが介在する場合もあると一言触れてくれやと。

そういうことをお願いしたいわけです。




うーんさすがに個人的な所感につきまして筆がすべりすぎました。

かといって修正するかといったらしないんですけどね。

本書の影響の多大さについてご理解いただいたところで、

次回記事で各論解説の後編に入っていきます。

 


 

『子の監護・引渡しをめぐる紛争の審理及び判断に関する研究』

「お前……変わっちまったな!?」という観点から

着目ポイントを説明してゆく弁護士による解説。

たぶん全国初だけど違ったらマジごめんなさい

 

 

 

本日は各論の中編。

本書が新たに提案する「4つの着眼点」のうち、

「子との関係性の評価」「他方の親と子の関係に対する姿勢の評価」

を取り扱っていきましょう。

 

 

 

①「子との関係性の評価」ってよくわかんねえぜってハナシ。

ここで書かれていることは正直抽象的でよくわかんないです。

ですから注意深く内容を解釈してみる必要があります。

 

 

「子との関係性がより良好な親」(46頁)とか、

「子が当該親とのより強固で健全な愛着関係をよりどころとして

父母の別離や環境変化を乗り越えていくことが期待できる」(同)とか

 

誰がなにを主張してなにを証拠にすればいいの?

とこちらを迷子にさせるような記述が続きます。

 

これって具体的になんなのよ、という話ですよね。

 

 

次に書かれいていることに着目したいと思うわけです。

 

「比較的年齢の高い子が、自らの体験を踏まえ、

当該親との関係により強い安心感や心地よさなどを示している場合等(46頁)」

という考慮要素が示されています。

 

 

これを補助線にして考えると、見えてくると思います。

 

要するに、お子さん目線で、親御さんにgoodな気持ちを持っている場合、

それを考慮しますよ、ということが述べられているのです。

 

これをもう少し抽象的にパラフレーズしてみると、

お子さん目線で親をどう思っているか

というふうにいえると思うんですよ。

 

そしてこの視点を持って先ほどの記述を振り返ってみると、

「子との関係性がより良好な親」かどうかは、

当の親御さんにきいていても「私の方が良好です」というだけでしょうが、

お子さんに聞いてみればお子さん自身がどちらがgoodと思っているかわかりますよね。

 

この判断基準は、

【子自身が、子との関係性がより良好だと思っている親】と言い換えると、

わかりやすくなるのではないでしょうか。

 

 

「子が当該親とのより強固で健全な愛着関係をよりどころとして

父母の別離や環境変化を乗り越えていくことが期待できる」

という判断基準も同様です。

 

【子自身が、親とのより強固で健全な愛着関係をよりどころとして

父母の別離や環境変化を乗り越えていけると思う親】

と考えればしっくりくるでしょう。

 

 

要するにお子さん自身の意思や考えを基本にして、

親御さんとgoodな関係性を作れているかどうか。

これが4つの考慮要素の一つというたいへん重要なレベルで

判断基準になるということです。

 

 

そして監護者指定・子の引渡し審判においては、

お子さんの意思は調査官調査という形で明らかになります。

 

したがってここまでの内容を審判における手続きに落とし込んで考えますと、

調査官調査によって明らかになった親御さんに対する意思や気持ちが、

全体の4分の1という重要性を伴って考慮される。

ということがいえると考えます

 

これまでの実務であたかも

調査官調査が絶対のような扱いだったことを考えれば、

調査官調査の結果という要素が全体の4分の1という

部分的なところまで小さくなったとも考えられます。

 

ここでも調査官調査の前に「従前の監護状況」(47頁)

が置かれていることを重視すれば、

調査官調査の結果だけでなく従前の監護状況も重視されるとも読め、

調査官調査の比重がより軽くなるということかもしれません。

 

他方で、

「事案によっては、その重要性から、

父母の監護体制の評価にかかわらず、

子との関係性がより良好な親を子の監護者に指定すべき場合もある」(46頁)

という記載もあります。

 

お子さんの意思がより重要視される場合もあるということでしょう。

「事案によっては」という記載は、

【お子さんの年齢が高い場合は】

と言い換えれば他の記載と整合します。

 

 

ここまで解説してきて思ったんですが。

 

たしかに記載内容自体はだいぶ変わりましたわ。

でもその記載内容が具体的に指し示すものを解釈によって明らかにしてみると、

「これ旧来の7項目の「子の意思」とたいして変わんなくね?」

そんな疑問が頭をよぎりました。

 

 

 

②フレンドリーペアレントルール的な奴の重要性が上がったで

面会交流に積極的か否か、

というような判断基準は旧来の7項目の最後の方に挙げられており、

「あくまで補助的な考慮要素だからメインじゃないよ」

的な留保がつけられていたように記憶しています。

 

要するに、

一応考えるけど重要性は低い判断基準と扱われていたわけです

 

 

これが本書の提案する新しい枠組みではガラッと変わって、

面会交流への積極性を含む「他方の親と子の関係性に対する姿勢の評価」が、

独立の項目として4分の1もの重要性を獲得したわけです。

 

 

そしてさらに、

「父母間の紛争や感情的対立に関わらず…

他方の親と子の関係を尊重し、

その維持に努めることが求められている」

と明確に記載されているんですよ。

 

親同士がどんだけ揉めたとしても、

それとは別の話として他方の親との関係を尊重しろと、

そういうメッセージが明確に発されたわけです。

 

 

したがって今後は、

他方の親との紛争がどんなに高葛藤であっても、

面会交流はさせるという態度を取らないといけなくなります。

 

 

もちろん、

「他方の親から暴力を振るわれている場合などに

協力関係を維持・形成することが困難であるのは当然」(48頁)と、

dvがある場合の配慮は記載されています。

 

「評価に当たっては、他方の親の言動や対応も踏まえる必要がある」(同頁)

と続けて記載されていますので、

暴力だけでなくいわゆるモラハラ的な言動についても、

きちんと考慮される可能性はあると思います。

 

とはいえこれらの記載はあくまで例外的な扱いになっており、

原則はフレンドリーペアレントルールが前景化した、

というようにとらえて問題ないのではないでしょうか。

 

 

 

③フレンドリーペアレントルールだけでは片付けられないぜ

と書いていおいてちゃぶ台返しになるので恐縮ですが。

 

同じ「他方の親と子の関係に対する姿勢の評価」の項目で、

「面会交流に関する姿勢」(48頁)の直後に、

「父母間の協力関係を訴外する言動の有無・程度」

「他方の親と子の関係を阻害する言動の有無・程度」(以上2点につき同頁)

という考慮要素が挙げられていたりします。

 

ですので単純なフレンドリーペアレントルールが

採用されたと言い切ることもできなくて、

親同士の言動含む様々な要素を考慮した上でのフレンドリーペアレントルール、

という言い方が正しいのではないかと考えます。

 

具体例としては、

親同士がお子さんに他方の親の悪口を吹き込むような行為や、

お子さんに対して自分を監護親に希望するよう働きかけるという行為が挙げられています。

 

このような具体例を見ますと、

片方の親の他方の親に対する言動というのは挙げられていないので、

例えば親から親へのモラハラ的な言葉の暴力の存在は、

ここでは具体例としては念頭に置かれていないように読まざるを得ません。

 

とはいえ一切のモラハラが考慮されないというのも不合理ですよね。

 

また前述の

「評価に当たっては、他方の親の言動や対応も踏まえる必要がある」

父母間の協力関係を訴外する言動の有無・程度」

「他方の親と子の関係を阻害する言動の有無・程度」(以上3点につき48頁)

という記載も、
「言」論も考慮されうるという含みを持たされた書き方になっています。

 

過去の判断例なども示しつつこのような記載を引用して、

説得的な主張を組み立てることができれば、

モラハラ的な主張が奏功する余地もあるのではないかと考えるところです。

 

 

 

さて本日もだいぶ長くなりましたので、

次回で別居開始の態様や年齢別の考慮とかそのへんを解説し終わってから、

本書が弁護実務に与える影響を考察してみたいと思います。

また次回~♪

 

【cm】

表面的な言葉の上っ面をなぞるだけでなく、

言葉の裏の意味まで考えに考えた説得的な主張を展開するのは、

 

の弁護士たちです。

 

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