祖母というか自分にとっては「婆さん」なのだが。
先日96歳の婆さんを見舞ってきた。
病院のベッドに横たわって意識もあまりない様子だった。
ひ孫の動画や写真を見せると声を発していた。
そのときは表情に意思の片鱗のようなものが戻った気がした。
一緒に見舞いに行った父は「ほら笑っている」といったが、
正直自分にはそこまでよくわからなかった。
婆さんは前日、39度台の発熱・血尿があったそうだ。
カテーテルでつながれた尿袋には、
赤っぽいオレンジの液体が溜まっていた。
父は、「元気になって家に帰ろう」と婆さんに声をかけていた。
父の声かけは婆さんを元気づけようとする方便ではなくて、
ほんとうにいずれ婆さんが家に帰れると信じているように見えた。
婆さんはいいところも悪いところもある普通の人間だった。
噂好きでおしゃべりで近所の人からはやかましい人間と思われていたようだ。
自分としては悪いところがそれなりに多い人間だと思っていた。
でもたしかにいいところを持っている、
確実にいいところを持っている人間だった。
ひっきりなしに近所の年寄りが婆さんを訪ねてきていた。
自分が東京に出てくる前の話だ。
自分が東京に出てから近所の年寄りたちは一人ずつ旅立った。
自分が夜のランニングに行こうとしたら、
「風邪ひくぞ」と偉そうに注意してきたおっさん。
自分が子供のころは庭でニワトリをシメていた。
はなちゃんと呼ばれていたおばちゃん。
集落の小商店でしか買い物をしたことがない。
つるっとはげた旦那さんがなくなると後を追うように旅立った。
この二人しか具体的に思い出せないことに気づいて愕然とする。
嘘だろあんなにたくさんの年寄りが婆さんを訪ねてきていたのに。
アポなしで。
こちらの都合など無視して。
早朝から。
こいつら朝っぱらからいかれてるのか?って思ってたよ。
なんであんなに急速に失われていくものに関心を持てなかったんだろ。
いまになって、いかれたあの生活のことを思い出す。
親戚もよく訪ねてきていた。
元役場の職員のおじちゃん。
洋品店のおじちゃん。
自動車屋のおばちゃん。
親戚じゃないが親戚づきあいをしているおじちゃん。
みんなアポなし。
こちらの都合無視。
早朝。
自分がさみしがりな性格になったのは、
年がら年中人が訪ねてくる実家に原因の一端があるかもしれない。
もちろんそんな田舎が嫌で東京に出て、
結局東京に定住しているわけだ。
MOROHAの『望郷タワー』で泣いちゃうタイプのアラフォー。
いまでも不意に『天体観測』がかかるとどうしても胸が騒ぐ。
ゴイステの叫びは自分の衝動と一致してると本気で思ってた。
Chappie『水中メガネ』には心くすぐられるよね。
無駄に桑田佳祐『祭りのあと』みたいな気分で自転車を漕いでいた。
THE HONG KONG KNIFE『CHERISHED MEMORIES』を笑うやつがいて、信じられなかった。
今でも夕方のバスを見ると悲しいって思う。
夕方のバスが悲しいくないやつがいるなんて信じられる?
20代になってから若い(若すぎるよバカ!)別れを2つ経験して、
SOPHIA『黒いブーツ』と宇多田ヒカル『花束を君に』がそれぞれそいつらの弔歌になった。
いまでもあいつらのことはバカ!って思う。
不可思議/wonderboy『pellicule』を妻の目を盗んで息子に聴かせてる。
息子はお前さんの曲を「さみしいラップ」って呼んでるぜワンダーボーイ。
あとカラオケDAMに『pellicule』が入ってたぜワンダーボーイ。
定期的にカラオケに『pellicule』が入ってないかチェックしてるやつと、
カラオケにリクエストしてるやつがいたんだぜワンダーボーイ。
そういえば。
若いころは気恥ずかしくて読んでられなかった村上春樹『ノルウェイの森』。
アラフォーが読んだら、
「わかるよ若い頃ってそうだよね?ほんとうんうんわかるわかるあっなんか食べな?ほら好きなもん注文しな?いいんだってー若い子がいっぱい食べるの楽しいんだもんー。うんほんといってることわかるー」
的にすごく親目線で共感できた。
同世代の皆様、案外、いま読み返してみるのも手ですぜ。
婆さんの記憶から話がそれてしまったけど、
このそれ方もまた婆さんの話らしいのではないか。
婆さんの話す話もとりとめがなかった。
いつまでも自動筆記みたいに思ったことを書き続けたい気分。
洗い物洗ったらオールディーズでも流しつつ読書して寝る。
こんな日はオールディーズを聴きたい。
グッバイジミーグッバイ。。。
ヤヤヤーヤーヤヤヤヤー(『悲しき16才』のこれ、素朴にかわいいよな)。。。

