8/10点。
いいところともう少し頑張ってほしいところがはっきりしている本書。
いいところは、労働者からの争い方を示してくれるところ。
単に先例のポイントを解説するだけではなく、
当該先例が問題となった論点の争われ方を明示してくれるので、
訴訟のイメージが持ちやすい。
とくに特定の論点については、
訴えの利益がある争い方かどうかという点まで踏み込んでくれる。
労側でも使側でもここを端的に確認してもらえるのはありがたいと思う。
あとは論点の網羅性が高いことも素晴らしい。
使側において人事労務関係の法律問題を洗い出す際の、
チェックリストとして使ってよいレベルだと思う。
もう少し頑張ってほしいところとしては、
「予防策の提案の踏み込みがもう一歩欲しい!」
と感じさせる箇所が複数ある点。
たとえば懲戒処分の項目では、
懲戒処分通知書のひながたなどあるほうが親切だろう。
いまどきネットで拾えるかもしれないけれど、
やはり高名な弁護士先生が作成されたひな形は信頼性が違うと感じる。
このことは休職の章のように、
文書を用いた対応が提案されている章全般にいえる。
その他にも制度の見直しのみを予防策として提案されている章も複数あり、
もう少しソフトなレベルの予防策が提案されてもよいような気がした。
たとえば根本的には制度の見直しが必要な場合にも、
「速やかな見直しが必要なのはこのような場合である」
といったような記載を付け加えてあげると、
制度の見直しについての緊急性を読者が判断できるため、
親切といえるのではないだろうか。
弁護士はなんとなく相場的な感覚で判断できるけど、
企業の法務担当者の方々が読むことも想定すると、
親切さはできるかぎり追及されてよいと思う。
最近労側の本が続いていたので、
バランスを取る意味でも久々に使側の本を読めて、
大変勉強になりました。
テーマ別 労働紛争予防・解決の実務ポイント | 中央経済社ビジネス専門書オンライン
文責 弁護士 菊地智史 東京弁護士会所属


