共同親権。
勉強しなきゃいけないけど一人で学ぶのは大変!
なのでブログでアウトプットしながら自分なりにまとめてみる。
読んでくださる方と一緒に勉強してまいりましょう。
みんな大好きベストセラー雑誌()、
『家庭の法と裁判』の51号に、
簡潔にまとまった論考が掲載されていました。
『親権などに関する新たな規律
ー離婚後の親権についての規律を中心に』
大阪大学大学院高等司法研究科教授 青竹美佳先生著。
先生、なにやら高尚な雲の上たいな名前の研究科、かっこいいっす。
令和5年5月24日から2年以内に施行されるので、
いまのうちに学んでライバルに差をつけようぜ!
① 選択制なんだぜ
学び
「離婚時に共同親権とするか単独親権とするかを、
まずは父母の協議にゆだねることとする制度」(9頁)。
協議離婚なら両親の話し合いで、
共同親権にするか単独試験にするか定めるんだって。
話し合いで共同親権か単独親権か選べるんだって。
協議で意見が整わない場合や裁判離婚の場合は、
裁判所が共同親権か単独親権か決めるんだって。
弁護士の考察
現場の実務家としては、
交渉が複雑化しそうでちょっと面倒になりそうな印象。
これまでは親権者をどちらにするかという、
父と母の2つの選択肢からどちらかを選ぶかという論点でした。
これに新たに共同親権という第3の選択肢が加わり、
協議段階で親権に関する議論が紛争化しやすくなりそう。
弁護士としては介入の機会が増えるので、
ビジネスチャンスといえばチャンスかもしれません。
とはいえ後述のように共同親権つっても実態は重要な意思決定への関与権。
これについて激論を交わし半年も一年も角突き合わせるメリットはあるのだろうか。
むしろ面会交流の議論に時間をかけたほうが、
親御さんにとってもお子さんにとってもよいのでは?
そこで勝ったところでお子さんと会えるようになるわけでもない、
「どこの大学行ったらいいよ」みたいなことをいってヨシになるだけの、
とはいえ気持ち的にはバチバチになりそうな争点
そんなのが一つ増えるだけ、という気はしてしまいます。
実務
離婚協議書で定めを置く場合は、
両親が別居する以上どちらかが監護者に指定されないと困りますので、
「長男○○につき、甲と乙は双方が共同して親権を行う。
監護者は甲とする。」
みたいな条項になるんでしょうか。
② それなりにケアされてるぜ
学び
協議段階での共同親権の選択について、
「真摯な合意なく共同親権を強制された場合など」(10頁)には、
「親権者の変更」(11頁)で単独親権に変更できるんだって。
変更できる場合は、
「父母の一方から他の一方への暴力等の有無、
家事事件手続法による調停の有無、
公正証書の作成の有無」(11頁)
を考慮するってことになってます。
弁護士の考察
暴力があったら、共同親権を強制されたっぽいっていってよい気がします。
なのでこの項目には賛成。
暴力「等」って若干解釈の余地を残しているのは、
精神的DVや経済的DVの場合も場合によっては考慮する、
という含みを残すものと解釈するべきでしょう。
苛烈な罵倒とか生活費を渡さないという脅かしとかも、
それで相手の自由な意思決定が阻害されることはありえます。
きちんと立証されて加害行為の強度が強い場合には、
「真摯な合意なし」という結論を導けるでしょう。
調停がなかったり公正証書がなかったりすると、
中立的な第三者の介在がないという点で、
一方的な意思の押し付けがあったんじゃないっすか?
という疑念が入ってくる余地が大。
というのが立法者の判断のようです。
実務
ってことであるならば実務的には!
逆にこの部分で疑念の余地をなくしておくために、
離婚協議書を公正証書にしておく必要があるということですね。
この点でも弁護士介在の必要性が高まりますね。
③共同親権を選択しても単独で親権を行使できる場合があるぜ
学び
仮に協議や裁判で共同親権ってことになっても、
「ⅰ他の一方が親権を行うことができないとき(11頁)
ⅱ子の利益のため窮迫の事情があるとき
ⅲ日常行為
ⅳ裁判所が特定の事項について単独行使を定めたとき(以上12頁)
これら4つの場合は単独で親権行使しちゃってOKなんですね。
ⅰは、一方の親が「長期旅行、行方不明、重病」(12頁)
などの場合には他方の親とともに親権行使はできないので、
その場合はひとりでやっっちゃっていいよってハナシです。
まあそりゃそうですよね。
重病で寝たきりで酸素マスクをつけて意識もうろうとしてる人に、
のんきに「うちの子中学受験させる~?」
とかいってらんないですよね。
ⅱはお子さんの利益のために共同親権的な意思決定をしてる暇がないとき。
お子さんが交通事故!一刻も早く手術しなきゃ死んじゃう!って状況で、
「うちの子どこの病院に入れる~?A大学病院~?B市民病院~?」
とかいってたらヤバいっすよねサイコパスですよねってハナシです。
ⅲは日常的なことでいちいち他方の親権者の了解取る必要ないってこと。
「うちの子、明日美容院行くっていってるけどいい?
美容院代と小遣いで7000円あげてもいい?
出かけるのにスカジャン着たいっていってるけど大丈夫?
あと明日の夕飯はカレー食わせといてOK?
そんであさって塾の模試だけど受けさせていいよね?」
みたいな問い合わせが来たらむしろ問い合わせられた方が、
「そんなことそっちで決めてくれーー!!」
ってぶちきれちゃいますよね。
ⅳはこれら以外のことでも裁判所が、
単独親権行使を定めておけるってハナシです。
「どこに住むかは子と同居する監護者が単独で決める」
みたいなことなんでしょうか。
正直具体的な事例が想定しづらいですが、
まあリストアップから漏れたような事態については、
裁判所の判断を待とうって趣旨なんですかね。
弁護士の考察
共同親権については賛成派と反対派が結構極端に分かれています。
筆者は7:3くらいの割合の否定派です。
「親権を共同行使できる夫婦なら普通は離婚しねーだろ」
と思うからです。
とはいえ共同行使できるなら別にしてもらえばいいと思います。
筆者の考える「普通」だけが全てではないですから、
何らかの事情で離婚後に共同親権を行使する必要があり、
これが可能な夫婦もどこかにいることでしょう。
そのような場合に上記のような例外を設けておくことは、
子の利益の観点から適切だと考えます。
どんなに穏やかに円滑に共同親権を行使できる夫婦でも、
時間的・空間的な障害はクリアーできません。
一方が過労で倒れちゃったタイミングで子の進学先を決めなきゃいけない!
という時間的な障害はいかんともしがたいです。
一方が仕事でアマゾンの奥地にいるときに赤ちゃんに手術を受けさせるか決めなきゃいけない!
という空間的な障害も場合によっては乗り越えることが不可能です。
そのような場合は一人でやっちゃっていいよと。
実に妥当かつ常識的な例外事例だと感じます。
実務
筆者個人の考えや気持ちはおいておいて、
制度ができた以上きちんと対応するのがプロ。
原則と例外についてはアドバイスできるようにしておくべきですし、
紛争が生じた場合にはきちんと対応するべきでしょう。
うーん実務っていうか心構えの話だなー。
④共同でやるべきことはたくさんあるぜ
学び
共同親権が選択された場合には、
共同で決定しなければならないことが結構たくさんあります。
「居所の指定や転居、
進学先の選択、
重大な医療行為、
長期の勤務を前提とする就職の許可など」(以上12頁)
といったように、
「子に重大な影響があり日常行為とはいえない行為について、
急迫の事情もなく父母双方が親権を行使できる場合」(同)、
共同で親権を行使しなさいということになってます。
弁護士の考察
ここでも「など」がついているので、
ここで挙げられた意思決定だけでなく、
他の重大で日常行為の範囲を超えた急迫性のない意思決定も、
両親が共同できめていく必要があるということになります。
このように親権を共同行使する行為の範囲が明確に画されていないこと、
同居親だけでなく別居親にとっても結構しんどくないでしょうか?
例えば進学先の選択が共同行使の対象になるなら、
進学した学校を退学するか否かの決定も同様なのではないでしょうか。
大学浪人するか否かの決定も同等の重要度がありそうです。
居所の指定はいわゆる「お引越し」の場合だけでなく、
たとえば大学に進学したお子さんがレスリング部の寮に入るかどうかとか、
そんな場合も含むと解することができます。
これ、結構際限なくないですか?
いちいち別居親に相談しないといけないという同居親はもちろん大変そう。
だってどこまで共同行使の範囲に入ってくるか自分一人で判断するのきついでしょう。
そして別居親さんにとっても不意打ち的な大変さが発生することが予想できます。
「さーて今日から半年間は全ての力を投入して新規プロジェクトに打ち込むで!」
って気合い入れて出張先の北海道のホテルの部屋を半年分予約入れたとこに、
「うちの子高校退学してティックトッカーで食っていくっていいはじめた。。。
ちょっと電話で話せることじゃないから沖縄の自宅まで帰ってきて話し合ってや。。。」
とかいわれたらそれなりに厳しくないっすか?
みたいに範囲の限定がないことからトラブルが起きることが容易に想定できます。
実務
条文が強行規定化任意規定かわかんないので、
この手のトラブル対策として有効かどうかイマイチわかんないですけど。
一応筆者の対策案を書いておきます。
ズバリ、親権の共同行使の必要がある行為を限定列挙しておいたらどうでしょう。
離婚協議書の文言としてはたとえば、
「なお共同親権の対象となる行為は、以下各号に限定するものとし、
これら以外の行為については乙の黙示の承諾があるものとして扱う。
1 居所の指定や転居
2 高校までの進学先の選定(高校卒業後の進学先は対象外)
3 手術や入院またはこれに準する医療行為
4 長期勤務を前提とする就職」
みたいな感じにしたらどうでしょう。
どうでしょう?どうでしょう?
他の専門家のご見解も聞いてみたいぜ。
こんな風に協議時点で共同親権の範囲を限定しておけば、
不慮のトラブルは相当程度回避できると思うのです。
⑤会いたければ面交だぜ
以上でざっくりと重要ポイントは網羅出来ました。
別に「これで共同親権については十分」というわけではなく、
あくまで現時点での筆者の勉強の成果はこれくらいという趣旨です。
ここで注意しておきたいこと。
共同親権とは具体的にどのような権利なのか。
それは簡単にわかりやすくいいますと、
別居親が子の重要事項の意思決定に関与できる権利です。
別居親が子に会えるようになるという権利ではないです。
そういう趣旨のことは本論考には一言も書かれてないです。
なので別居親さんの、
お子さんと会いたい!
お子さんとコミュニケーションしたい!
というご希望を実現するのは共同親権ではないです。
それは面会交流になります。
ですので本論考でみてきた選択的共同親権が導入されたとて、
やはり面会交流において適切な交渉をしていくことの重要性は変わりません。
それどころかお子さんのご希望やお気持ちを把握して適切に共同親権を行使するために、
面会交流でお子さんとのコミュニケーションの回路を太く強くしておくことが、
これまで以上に重要になったといってもよいと考えます。
このような学びを得ましたので、
面会交流の技法シリーズもきちんと記事にしていきたいと思います。
⑥感想をいうぜ
筆者個人は前述のように共同親権には否定的な立場です。
しかし今回のようにある程度のケアが担保された制度であれば、
これによってお子さんや同居親さんの利益が決定的に損なわれる、
という危険性は低いとみてよいと考えます。
ただしこのように考えるには条件があります。
それは家裁の予算や人員が拡充され、
判断や手続きの適切さや迅速さが確保されること。
わけわかんない判断が続出したり手続きが進まないということになると、
同居親さんも別居親さんも混乱しますし、
なによりお子さんがかわいそうです。
本論考末尾にも、
「現時点では問題点は完全には解消されないまま課題が残されている」
「家庭裁判所に大きな期待が寄せられていることから、
…裁判官や調査官の増員をはじめとした対応が急務である」
「不十分であるとみられるときは、必要な対策を講じる必要がある」(以上15頁)
といった問題意識が示されてます。
正直な感想を申しますとこのような微温的なご指摘は不十分と考えます。
もちろん青竹先生のお考えが不十分ということは絶対にありません。
お立場などのしがらみがあってこのようなご指摘になっているわけです。
むしろ制約がある中でできる限りズバッといってくださる努力をされたのでしょう。
翻って筆者はなんの立場もない野良犬弁護士ですから、
狂犬が暴れまわるような言い方をすることができます。
野良犬としては、
「施行までに家裁の人員を増やしてね♡
具体的には家裁の裁判官と調査官の人数を2割増やしたらいいんじゃない?
書記官の人数もそれに伴って増やしちゃおっか♪
家裁がきちんと対応できないと全国的に混乱しちゃうもんね(涙)
別居親も同居親も子も不幸になっちゃうよー( ;∀;)
国民を不幸にするのはダメダメだお"(-""-)"
施行後は裁判官3:調査官2:弁護士5の割合で人を集めて検討委員会を組織しよ♡
そんでそんで、法的手続きに乗ったものと乗らなかったものと区別せず事例を集積して、
2年後に運用状況の報告と検討委員会の見解をまとめて本にしよ♪
そして3年後にこの本を元に立案した新たな運営指針を出して修正していこ☆
そういうふうにしたらきっと共同親権の制度が国民を幸せにする良き良きなものになるよ('ω')ノ」
と提言しておきます。
野良犬っぽい口調で書いたら品性を欠いたので、
おじさんが考えるかわいい口調に直しておきました。