胚移植の難しい患者様が時におられます。

 胚移植困難例とは、子宮の中に胚移植用のカテーテルが、なかなか挿入できない患者様です。その理由には、いくつかあります。

 

 子宮が強く後屈している場合には、経腹超音波で内膜を見ることが難しい時には、カテーテルが挿入できても、カテーテルの先端を見にくい時があります。そういう時には、胚が子宮内腔に注入されるところが見えないことがあります。このような場合は、胚が良い位置に入ったかどうかが分かりません。

 もちろん、後屈が強くて、カテーテルが入りにくいこともあります。

 

 また、逆に子宮前屈が強すぎる時にも、カテーテルが入りにくいことがあります。このような時には、膀胱内に生理食塩水を注入すると、カテーテルが挿入しやすくなります。膀胱内への生理食塩水の注入も、ゆっくりとカテーテルを挿入すれば、痛みも殆どありませんし、後で痛みが残ることもありません。

 

 子宮の入り口(内子宮口と呼びます)にでっぱりのようなものがあると、時にカテーテルの子宮内腔への挿入が難しい時があります。このような場合には、少し腰のあるカテーテルを使うとスムーズに挿入することが可能です。

 

 それ以外にも、様々な要因でカテーテルが子宮内腔にうまく挿入できないことがありますが、ほとんどの場合は、カテーテルの種類を変える、膀胱内に生理食塩水を注入する、子宮内腔に入れるときの方向を変える、などで挿入が可能です。

 

 決して子宮の口を手術用カンシ(金属の爪のようなもの)で引っ張ることはすべきではありません。子宮を引っ張るときの痛みで子宮収縮を起こし、妊娠率が低下すると言われています。

 同様に、子宮底(子宮の底にカテーテルを当ててしまうことも、妊娠率の低下を引き起こすと言われます。

 

 胚移植、体外受精を締めくくる、最も大切で、まっとも単純な主義でもあります。

 患者様も、自分自身の胚移植を注意深く観察してみてください。