患者様は妊娠判定の時に、陽性であれば「胚のグレードが良かったですからね」とか、逆に陰性であれば「胚のグレードがあまり良くなかったですね」などと説明されると思います。患者様もその説明に納得されると思います。

 

 では”胚のグレード”とはいったい何なのでしょう。

 まず、グレードは見た人(胚培養士)の形態(見た目)の評価です。ですから、客観的な評価ではなく主観的な評価であることを覚えておいて下さい。

 基準(以下に説明します)はありますが、胚を観察した胚培養士の感性(感覚)が影響することも否定できません。

 何センチや何ミリなどという客観的なものではありません。

 

 少し細かくなりますので、今回は分割胚(採卵後2日目か3日目)についてのみ、ご説明します。

 

 分割胚では、

 メインの割球(2細胞や4細胞、8細胞など)の大きさに差がなく、形もきれいで、細胞に張りがあることが大切です。このような胚は良好と評価されます。

 この割球の位置関係も大切です。左右対称にきれいに配置していれば評価は良くなります。逆に、バラバラに離れているようだとグレードは低くなります。

 

 フラグメントと呼ばれる、細かな細胞の破片。このフラグメントが少ないと、良好と評価されます。逆に、フラグメントが多いと、グレードが下がります。

 

 透明帯とよばれる胚を包む膜様構造物の厚さも評価の対象になります。透明帯が厚すぎたり、硬そうであれば、それも評価の対象になります。また、孵化補助術実施の適応にもなります。

 以上のような評価を総合して、胚のグレードが決定されます。

 

 分割胚の分類で一番有名なのがVeeck(ビーク)分類と言われるものです。

 Veeckさんは私もお会いしたことがあるのですが、アメリカのというよりは世界で最初の胚培養士と言っていいと思います。きれいな女性の方です。アメリカで初めての体外受精成功施設の胚培養士です。

 Veeck分類では、グレードを1から5の段階に分け、1-2が良好、3が普通、4-5は不良、と分けています。よくG3とかG2などと呼ばれるものです。

 

 ただし、胚のグレードと生まれてくる赤ちゃんの健康との間には、まったく関係がありませんので覚えておいてください。G4の胚で妊娠されても、元気な赤ちゃんが生まれます。あくまでも、胚の形態を表すだけで、生まれてくる赤ちゃんのグレード(健康度)を推測するものではありません。

 

 次回は胚盤胞についてご説明します。

 医師が胚の写真を見せてくれる時に参考にしてください。