採卵は体外受精の中で最も外科的な部分であるとともに、最重要操作でもあります。

 

 私は体外受精の教科書の中でも、採卵について書くことがよくあります。そこで私がまず最初に書くのは、技術的な重要点ではなく、大切な心構えについて書きます。

 

 すなわち、採卵を始める前に、担当する患者様から”できる限り多くの採卵をする”という決意のもとに採卵することが最も重要である、と書き出します。患者様は、一つでも多くの卵子を希望され、また期待されています。1個1個の卵子の可能性が低い方でも、一つでも多く卵子が取れれば、単純にその分だけでも、可能性は上昇します。

 ですから「一つでも多くの卵子を採るぞ!」という決意で採卵に臨むことが必須条件だと考えています。

 

 私は、どんなに小さな卵胞でも、穿刺吸引が可能であれば、すべて採卵を行います。まずは、これが採卵の極意の第一点だと考えています。

 

 次に大切なのは、できるだけ安全に採卵を行うことです。卵胞への最短距離で穿刺を行い、卵胞の真ん中に針を刺すことです。同じように卵胞液を吸引しても、中心に刺すのと、端っこに刺すのでは、卵子を吸引できる確率が変わってきます。これは患者様には分からないかもしれませんが、大切な極意の二番目です。

 

 わたしは、通常、卵胞の数が多くても、腟壁は片方に一か所しか刺しません。一回刺すことでそこからすべての卵胞を吸引します。こうすることで、お腹の中で出血する可能性も低くなりますし、採卵後の膣からの出血も少なくなります。採卵後に膣からの出血が多いと、患者様の不安も大きくなります。これが極意の三点目です。

 

 まだまだ、極意はありますが「一つでも多くの卵子を!」「できるだけ安全に!」「できるだけ痛みを少なく!」「できるだけ出血を少なく!」などが採卵の極意の中心だと思います。

 

 この極意を実践することが、妊娠率の向上につながると信じています。