生殖医療:日本のルールって何? | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 日本では生殖医療に多くのルールがあります。

一番よく知られているのが、体外受精で何個の胚を移植してよいのか。

 何十年も、原則1個とする、という鉄則があります。

 日本人は何でも「右に倣え」の修正があり、怖くてなかなか2個以上移植できないところがあります。ですから、日本の生殖医療の多胎率は世界で一番低いのです。それと同時に、体外受精の妊娠率も世界で最低のグループに入っています。

 アメリカでは何でもかんでもたくさん移植しそうですが、年齢に応じて個数が決められており、またその規定個数も3-4年に1回更新されています。また、PGT-Aの正常胚は年齢にかかわらず1個と厳しく決められています。多胎率は日本より高いですが、体外受精の平均妊娠率は日本よりはるかに高いです。

 ただ、日本も保険になって回数制限ができたため、現在は2個移植のケースも増えてきています。規則は患者様がより効率的に妊娠することを目指したものでないといけないと思います。規則を破った産婦人科医を罰するためにあるのではありません。

 

 着床前診断(PGT-A)についても同じだと思います。現在は、2回の流産経験や2回の胚移植不成功と条件が付いています。では、どうして1回の流産ではダメなのでしょうか。高年齢であれば、どうして最初からPGT-Aを受けてはいけないのでしょうか。

 生殖医療のどのような治療を受けるかは、治療を受けるカップルに決定権があります。その証拠に、他の国では条件なく受けたい方が受けられます。

 

 妊娠した場合の、胎児の染色体異常の検査も、アメリカでは妊娠すれば(自然妊娠であれ体外受精妊娠であれ)ほぼ自動的に全員が検査されます。

 

 卵子提供にしても、受けたい方が受けられて当然だと思います。受けたくない人に、無理やり受けさせるわけではないのですから。

 

 すべての治療が、治療を受けられるカップルの意志で決められるべきだと思います。みなさまは、どのように考えられているでしょうか。

 

 科学技術が進歩すれば、その恩恵を受ける権利は、国民の権利ではないでしょうか。

 日本の生殖医療は、生殖医療専門医が決められたルールを守らない場合には、厳しく罰するというルールが厳しく決められているだけで、生殖医療の臨床については「ルールがあってルールがない」というのが実情です。