採卵で大切なこと。 | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 採卵で大切なことは、予想される数の卵子を採ることですが、それ以外にも様々な要素が含まれています。

 まず、痛くないこと。

 採卵で痛みを感じる一つの要因は、麻酔が効く前に操作を始めるからです。麻酔が十分に効いてから、洗浄などの一連の工程を始めれば、痛みを感じることはありません。

 現在は、アレルギーのある人を除いて、プロポフォール(ディプリバン)と呼ばれるミルクのように白色の液体麻酔薬を使いますので、ほとんど副作用なく痛みの無い採卵が可能です。私自身も、この麻酔の経験がありますが、スーッと眠りに落ちて、覚醒時にも(目が覚めた時)むかつきやふらつきなどの、不快感がありませんでした。

 この麻酔薬を注入して30秒もすれば眠ってしまいますので、あとは何も分かりません。私自身は20秒ぐらいで眠りに落ちてしまいました。

 麻酔が効いてからの採卵で大切なことは、カラーエコーで血管の場所を見てから穿刺することで、出血の少ない採卵を行うことです。そして、通常は多くの卵胞があっても、一か所しか穿刺しません。もちろん、針を刺す数が少ないほど、出血が少ないのは当然です。

 採卵個数については、予想より多くの卵子が取れたり、まずまずの数であったり、ときには多くの卵胞が見えたのに一つも採れないこともあります。一つも採れないときに「空砲だった」という医師もいますが、わたしは空砲という言葉を使いません。

 卵子が採れない場合には、もともと空砲だったのではなく、最後の刺激(トリガーと呼ばれる)が効かない何らかの原因を考える必要があります。人によっては、最後の刺激に対する反応が弱かったり、卵子の成熟が悪かったり、トリガー物質に対する抗体が存在したり、など様々な要因が考えられます。

 

 採卵後に大切なことは、まずは膣からの多量の出血がないことです。卵胞を穿刺するときに腟壁の血管を刺していると、ときに膣からの出血が多いことがあります。腟壁からだけの出血であれば、きちんと処置をしてもらえば問題ありません。

 

 採卵後数時間たっても気分が悪いとか、トイレに行くのも難しいという場合は、腹腔内出血の可能性もありますから、超音波エコーによる診察が必要です。

 

 以上のように、いまでは採卵は外来手術として行われる比較的簡単なものと思われがちですが、お腹の中に針を刺しますから、採卵を侮ってはいけません。私たち、実施する側もその危険性と重要性を十分に認識して行う必要があります。