体外受精保険適用の制限はどうなる? | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 体外受精保険適用の年齢制限や回数制限はどうなるのでしょうか。すでに制限回数や年齢制限に達した方にとっては、非常に関心のある点だと思います。わたしも、次回の改正(2024年4月)ではどうなるか注目しています。

 この改正の基になるのが中央社会保険協議会の答申になります。この議論が公表されていますので、抜粋してご覧に入れます。

 

 以下のようなものです。(一部分かり易いように改変)

 

 まず、要約が載せてあります。

 2022年度の前回診療報酬改定で「不妊治療」が保険適用(2022年4月より体外受精は保険適用となっています)されたが、治療へのハードルが下がるなど患者や医療機関からは概ね肯定的に受け止められている。ただし、保険対象技術の範囲や、年齢・回数制限について様々な意見があり、今後、データを踏まえて必要な見直しを検討していく—。

 また、凍結保存胚の維持・管理を評価する【胚凍結保存維持管理料】の算定期間(3年間)が設けられているが、実態などを踏まえて延長を検討してはどうか、と議論された。

 

 次に、個別の内容です。

 2023年11月15日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こうした議論が行われました。関連して、「年齢・回数制限」に対する要望も患者や学会から出されています。保険適用「前」の助成事業においても、保険適用「後」のルールでも、不妊治療技術については年齢・回数の制限があります。財源が限られている中で、効果的に財源配分を行うために「不妊治療の成果」データなどを踏まえて年齢・回数の制限を設けているものです(仮に制限を認めなければ、財源が限られる中では「広く・薄い」サービスになってしまう)。

 この点、最新のデータを見ても「不妊治療の成果」などに従前からの変化は見られない(高齢年齢での不妊治療で着床率が上がったなどの状況は見られない)ことから、診療側・支払側双方ともに「現時点で見直す必要はないのではないか」との見解を示しています。

 もっとも、患者サイドからは「年齢・回数制限の見直し」を求める声も数多く出ています。また保険適用によって不妊治療が広まる中で、さらに医療技術が進展する中で「不妊治療の成果」データが今後変化していく可能性もあります(「より高齢年齢での着床率が上がる」などのデータが見られる可能性もある)。このため一人の委員は「データを注視していく必要性」にも言及しています。

 

 凍結保存の開始日に関わらず、「胚凍結保存維持管理料」を算定した日から3年を限度として算定できる—と示されました。この点、「凍結胚は生殖補助医療が可能な年齢まで用いることが可能」であるとの考えもあり、「3年の算定制限をどう考えるか」という問題が浮上してきます。この点については、診療側・支払側ともに「技術的に差し支えなければ期間を延長する方向で検討してはどうか」との見解を示しており、今後、「延長」方向で検討が進められることでしょう。

 不妊治療に関する議論の抜粋でした。

 

 以上のように、年齢制限や回数制限の改定には、もう少し推移を見る必要がある、ということで次回の改正には否定的です。凍結胚の維持費については、科学的根拠から3年以上も認められそうです。

 

 体外受精の保険適用について患者様から「どうしてもう少し使わせてくれないのですか?」などと聞かれたり、医薬品(くすりの料金について)で「保険ですか、自費ですか?」と聞かれ、我々も困るときがあります。

 保険か自費かを決める権限は、医療機関には全くありません。上に示したように、中央社会保険協議会(中医協)ですべて議論され、中医協が厚労省に答申をおこない、厚労省が決定します。私たち医療機関は厚労省の指示に従うことになります。選択肢はありません、厚労省の指示通りに行うのみです。

 

 ですから、体外受精の年齢制限や回数制限についても、患者様の方から、さまざまな機会をとらえて発信していただく必要があります。よろしくお願いします。私たちも機会があれば頑張って発信します。