体外受精を受けるかどうかの時に「採卵が怖いから受けたくない」「採卵の麻酔が怖い」「麻酔で眠ったら、もう起きて来れないような気がして怖い」などと言われる方がおられます。だから体外受精を受けたくない、と言われます。

 確かに採卵そのものではなく、採卵の時の麻酔も怖い、というものだと思います。その心情よく分かります。一旦麻酔で眠ってしまったら、もう二度とこの世に戻って来れないのでは、という気持ちだと思います。実は、わたしはこの麻酔薬(プロポフォールとかディプリバンとメーカーにより名前が違います)の麻酔を受けたことがあります。数年前なのですが、それまでは私も同じようなことを思っていました。しかし、自分で体験してみて、この麻酔薬の良さが分かりました。手術中は全く分からず(完全に熟睡の感じです)、すっきりと目が覚めました。その後も麻酔薬の影響で気分が悪いということはありませんでした。もちろん個人差はあると思いますが、この麻酔薬は今までの麻酔薬と比べると、効果が強く副作用が最も少ない薬剤だと思います。少なくとも、麻酔については、あまり心配要らないと思います。

 ただ、この麻酔薬にアレルギーのある方には使えませんので、その場合は従来の麻酔法になります。とは言え、今までは、今までの麻酔法で問題なかったのですから、過剰に心配されることはありません。

 次は採卵自体がどうかという話になります。採卵については、昔(15-20年ぐらい前)は無麻酔で行っているところがたくさんありました。ということは、採卵自体がそんなに危険なものではないと考えられています。卵巣は遠くにあるように思いますが、近い人では腟のすぐ後ろに卵巣があります。このような場合、腟壁から1-2センチのところで卵巣を穿刺できます。

 ですから、採卵はそんなにお腹の中、奥深くに針を刺すわけではありません。卵子を採らないと始まりませんので、頑張って受けるしかないかな、と思っています。すみません。

 

 以上のように、採卵も麻酔も過剰な心配は要らないと思います。採卵がなければ体外受精は始まりませんから、ここは勇気を出して頑張ってください。医師である私も手術を受ける前は怖かったのですが、受けてみると「受けて良かった」、麻酔についても「麻酔ってこんなに効くんだ」と感心しました。大丈夫ですよ!