体外受精説明会で多い質問って何? | 不妊治療クリニック院長の福田愛作のブログ

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大阪府東大阪市にあるIVF大阪クリニックは不妊治療専門クリニックです。「心と身体を癒す医療」をテーマとしています。

 当院の体外受精説明会で多い質問に「保険の体外受精で大丈夫ですか?自費でないと十分な治療が受けられないと聞きましたが」というものがあります。外来で体外受精のスケジュールを立てる時にも、同じような質問があります。

 クリニックによっては「保険では十分な治療ができないから、自費での体外受精にしましょうか?」と聞かれることがあるようです。患者様は、歯科治療で「保険の材料か、自費でのより質の高い材料にしましょうか?」と聞かれるような状況を思い出されるのではないでしょうか。そうなると「保険の体外受精って、大丈夫かな?」と不安な思いが湧いてきます。当然だと思います。

 私の結論から言います。「保険の体外受精でまったく問題はありません。保険で最高の体外受精が可能です」。その理由を順にあげて行きます。

 

 卵巣刺激方法(排卵誘発剤の注射)

 体外受精ではより多くの卵子を採るために、排卵誘発剤を注射して卵巣刺激を行います。この時の薬剤や注射は、以前(自費の時代)とまったく同じものが同じように使えます。ですから保険でも自費でも何も違いはありません。

 

 卵巣刺激モニター(ホルモン採血や超音波検査)

 モニターについては保険では制限があります。通常は採卵までに3回しか検査はできません。ホルモン検査も、今までと同じ回数は難しいようです。ですから、モニター回数については保険では少なくせざるを得ません。しかし、工夫をすることで従来と同じ制度を保てていると考えています。

 

 採卵

 以前に話題になっていた、「採卵のときに十分な麻酔がしてもらえない」というのがありました。当院では以前と全く同じ静脈麻酔をしています。局所麻酔や無麻酔に変更するのは、経済的事情でされているのでしょうが、私はそれは医療の本質(痛くないのが医療の原点)に反していると考えています。ただ、痛みの問題が体外受精の成功率を大きく左右することは無いと思います。当院では、保険であれ自費であれ、以前と全く同じ採卵です。

 

 授精方法や培養方法

 普通の体外受精(媒精法)も顕微授精も保険で認められていますので、どちらも以前と同じです。培養方法も従来のインキュベーター(培養器)で培養する方法とタイムラプスと呼ばれるカメラ付き培養器での培養法、ともに保険で認められていますので、従来と変わりありません。保険でも自費でも同じ方法です。

 

 胚移植法

 これも、孵化補助術や着床を助ける培養液の使用などすべて保険で認められていますので、保険でも自費でも変わりありません。

 

 以上のように保険でも自費でも体外受精の品質に変わりはありません。体外受精の基本的な技術は、ここ30年近くほとんど変わっていません。そのため、体外受精については教科書にすべて書かれていますので、産婦人科医であれば誰でも実施可能といえます。

 ただ、重要なことは、卵巣刺激の選択方法、採卵の手技、胚移植の手技、などは個人の技術により大きく左右されます。ですから、保険であるか自費であるか、ではなくどこで治療を受けるかがポイントだと思います。皆様も、自分の信頼できる医療機関で、まずは保険で体外受精をお受けになることをお薦めします。(医師により意見が異なることは、当然ながらあっておかしくは無いと思います。これは、あくまで私の意見です。)