遺伝性疾患の着床前診断(PGT-M)の適応や実施システムを決めるための倫理審議会が27日にWebで開催されます。

今までは重篤な遺伝性疾患に限り着床前診断が認められていましたが、今後は遺伝性の目のがんや腎臓病、成人発症の遺伝性疾患などにも適応が広がる可能性が出てきました。

 

着床前診断に関しては、反復流産や着床障害に対する胚の染色体検査であるPGT-Aが昨年から実施出来るようになりました。当院の実施数は必ずしも多くはありませんが、妊娠率62%、流産率5%と良い成績が得られています。

 

今回議論される着床前診断は、遺伝子の異常により生じる疾患に対するPGT-Mです。染色体異常の胚は生まれる可能性は非常に低いのですが、遺伝性疾患は異常がある場合にも生まれて来ることになります。疾患にもよりますが、子供の2人に1人、または4人に1人と高い割合で疾患を持つ子供が生まれるため、妊娠に対して親は非常に心配されることになります。現在、着床前診断を行って良いかどうかは疾患が重篤かどうかということにより、日本産科婦人科学会が決めています。今回、その基準を広げるかどうか、また実施の可否をだれが決めるのか等が話し合われます。実際にPGT-Mを実施している施設の倫理委員会が決めることになる可能性が出てきました。そのようになれば、患者様夫婦の考えや希望が反映できる制度に変わることになります。

 

着床前診断において、生まれることのできる胚を選別することに対しては様々な考えがあります。ただ、遺伝性疾患を持つ当事者の思いは、第三者には計り知れないものがあります。自分の持つ疾患を子供に残したくないと思われ、着床前診断を希望されて病院を受診されているにもかかわらず、第三者が重いか軽いかを判断する状況は疾患をもつご夫婦にとっては非常に苦痛なことだと思います。責任を持って子供を育てる立場にある夫婦に、PGT-Mの選択肢がないことは大きな問題だと思います。

不妊治療を行っているご夫婦の気持ちや思いが、自然にすぐ妊娠されるご夫婦に理解されることは難しいことと同じで、その立場にいないと理解できないことがあります。圧倒的に少数派で弱者の遺伝性疾患の方の思いが、素直に反映される制度作りが必要であると考えます。

 

日本産科婦人科学会の倫理審議会は公開です。

27日(日曜日)の13:00より以下のURLで行われます。

https://sites.net-convention.com/for/0207pgt-m2//

 

また、以前の資料もご覧になりたい方は

http://www.jsog.or.jp/modules/news_m/index.php?content_id=944

をご覧ください。

 

今回の会では、私も実施施設の立場から意見を述べさせていただきます。

誰でも参加できますので、お時間のある方はご参加ください。我が国の着床前診断の置かれている位置や遺伝性疾患の患者様が抱える問題など、皆様にとっても考えさせられることがあると思います。

 

写真は帯解寺です。

先日、安産祈願と水子供養のために参ってきました。