こんにちはKinoshitaです。

着床前検査(PGTA)について。

実施するかどうか悩まれている方は多くいらっしゃると思います。

まずは一度、基本情報を知る意味で

学会動画も含めてこちらをご覧下さい。

 

さて今回は

42歳 移植3回実施

移植1で流産となる

移植2.3と続けるが妊娠判定陰性

・妊娠判定を繰り返す不安

・年齢と流産の関係を考えると増す不安

なんとかできませんか??と

着床前検査(PGTA)を希望されました。

 

着床前検査を検討されるご夫婦には

色々なケースがあります。

 

同じ着床前検査なのに、

メリットが多いと考えるご夫婦もいれば、

そうでないと考えるご夫婦もいます。

→どちらの判断も間違ではありません。

 

35歳を超えて

胚盤胞が複数個できるのになかなか結果が出ない!

保険の移植回数が終了してしまった!

という方々にとっては

PGTAの最も理想とするケースだったので

みさなんと共有していきたいと思います。

 

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40歳AMH3.0で体外受精を開始(自費診療時代)

→卵巣機能が保たれた状況で開始できた

 

採卵1:40歳(自費診療時代)

アンタゴニスト

採卵数:17

受精:split(体外+顕微)

凍結:前核期2個、胚盤胞4個凍結

→卵巣機能が保たれている

 40歳の間になるべく

 受精卵確保しておきたいと希望あり

 

採卵2:40歳(自費診療時代)

アンタゴニスト

採卵数:15

受精:全て顕微

凍結:前核期2個、胚盤胞4個凍結

 

移植1 41歳 自費

ホルモン補充周期

D5-4AA

妊娠判定陽性

→胎嚢かなり小さいまま発育なし

→HCGも低下

→化学流産に近い形での流産となる

 

流産を経験

ご夫婦より

「40歳を超えているので、流産率に対しての不安」

「次に再度流産を経験して、その後の採卵となると卵巣機能が不安」

「取れる間に後悔なくとっておきたい」

年齢考慮し事前に採卵希望

 

採卵3  41歳 自費

アンタゴニスト

採卵数:19

受精:全て顕微(PICSI)

凍結:前核期2個、胚盤胞9個凍結!

 

移植2 42歳 自費

ホルモン補充周期

D5-4AA

妊娠判定陰性

 

移植3 42歳 自費

ホルモン補充周期

D5-4AA

妊娠判定陰性

 

移植回数とともに精神的疲労溜まってきた

胚盤胞は確保できるのに・・(泣)

 

患者

「41歳42歳の場合

 胚盤胞は何個あったら

 染色体数正常の胚盤胞と出会えるんですか?」

など

 

こういった質問は

遺伝カウンセリングとして対応

臨床遺伝専門医の私が全て対応しました

 

患者

「・・・」

「41.42歳以降のデータで考えると、

 胚盤胞5個-10個程度で

 正常な染色体数の胚盤胞がありそうと・・・」

「PGTAなしで移植した場合は

 妊娠後も40%近い流産率の覚悟が必要・・」

 「正直無理です。

 移植をただ続けていくのは

 精神的に耐えられません・・」

→ご夫婦でたくさん相談され、

 着床前検査希望となりました。

 

胚盤胞の凍結保存状況:15個

年齢を考慮してPGTA10個希望

→以下がその結果

D5-4AB:C(異数性あり)

D5-4BB:C(異数性あり)

D5-4BB:C(異数性あり)

D5-4AB:C(異数性あり)

D5-3AB:C(異数性あり)

D5-4AB:C(異数性あり)

D5-3BA:C(異数性あり)

D5-4AB:C(異数性あり)

D5-4AA:A(正倍数性)

D6-4BA:C(異数性あり)

 

患者

「・・・」

事前の情報通りだったので、

    現実を受け入れてますが・・・」

「わかっていたことです・・でも・・」

「見た目は良好胚と思っても、

 受精卵の中ではこうなっているのですね」

「・・・」

「私たちは全ての受精卵を移植するつもりでいました。

 移植10回を1回に絞り込むことができた。

 自分たちの受精卵と向き合うことができた!

 と前向きに考えていきます」

→A胚が確保できたため、移植を提案する。

 

患者

「・・・」

「今、採卵しておかないと絶対後悔すると思います」

PGTAのA胚で

 妊娠率が約60%、流産率が約10%

→再度データでを使ってご家族と話し合いました。

「次の採卵を人生ラストにします」

「凍結している受精卵も全てPGTAに出したいです」

 

採卵4  42歳 自費

PGTA採卵周期

採卵数:15

受精:全て顕微(PICSI)

胚盤胞2個確保

PGTA提出

D5-3BB:C(異数性あり)

D6-5BB:C(異数性あり)

 

前核期、胚盤胞の凍結保存より

6個の胚盤胞をPGTAに提出

→以下がその追加PGTA結果

D6-6BA:C(異数性あり)

D5-4BB:C(異数性あり)

D6-3BB:C(異数性あり)

D5-5AA:A(正倍数性)

D6-5BB:C(異数性あり)

D6-4BB:C(異数性あり)

 

41〜42歳にかけての

合計胚盤胞18個をPGTAに提出

A(正倍数性胚):2個

C(異数性胚):16個

 

患者

「正直、18個の胚盤胞を移植できる精神的な

 余裕は絶対になかったです」

「データ通りの結果で辛いこともあったけど、

 やっぱりという感じ」

「全て移植していたら、最低でも1年以上、

 10回近くの移植料金を支払うことになっていたかも」

「それを、2回の移植に納得して絞り込むことができた!」

「治療期間も経済的な負担も軽減できた

 そう信じて、前向きに移植へ進みます!」

 

移植4 (PGTA1回目)

ホルモン補充周期

胚盤胞1個移植

D5-4AA

PGTA:A胚(正倍数性胚)

妊娠判定:陽性!!!

 

妊娠10週後も発育問題なく卒業へ

 

患者

「本当に先生とデータを見ながら、

 ずっと準備、作戦をたててましたね〜」

「自分の体を理解して、辛くてもやると決めたら

 なるべく前向きにやってきた」

「不安な時こそ、自分の年齢、

 今の治療結果を理解することが大切だと感じました」

「それにしても結果が出てよかったです(泣)」

 

ご主人様もずっとそばで支えて下さるご夫婦だったので

最後はご夫婦で受診され卒業していかれました。

 

Kinoshitaより)

着床前検査(PGTA)は

やる前の検査の理解が

本当に大切な検査だと日々感じています。

・そもそも染色体ってなに?

・今の自分に胚盤胞までいく卵子がどれくらいあるのか

・自分の年齢の胚盤胞にどれくらいの割合で異常が見つかるのか

・PGTAでA(正倍数性)の場合の妊娠率、流産率

・PGTAでBの場合の理解と対応

・PGTAでわかることと、わからないこと

などなど

検査のメリットを得るためには、

やってよかったと思えるには、

正しく理解してから進めることが何より大切です。

 

今回のケースは

ありとあらゆるデータをご夫婦に説明していきました。

妊娠に向けてのラストチャンス

絶対に後悔したくないという気持ちが

毎回ご夫婦から伝わってきました。

PGTAを実施された方のリアルな感情がここに

詰まっていると感じたので書きました。

 

PGTA-A胚が1個残ってますので

40歳で治療を開始して

二人目の可能性という

ご夫婦の夢も叶えてほしいな。。

 

多嚢胞性卵巣症候群で胚盤胞はできるのに結果が出ない

35歳以上で良いグレードの胚盤胞(A/B)はできるのに結果がでない

35歳以上で着床しない原因がずっと気になっている

辛い妊娠判定の回数をなんとか減らしたい

流産を繰り返している

流産率をなんとか下げたい

という方には、

一つの選択肢にはなると思います。

実施するかどうかは、ぜひ専門家にご相談ください。

 

着床前検査(PGTA)は以前より

施設の受精・培養・生検の技術で

成績が変わると報告されています

(Munne S,et al.;STAR Study Group:Fertil Steril 2019;112:1071-1079)

PGTAで安定した結果を出すためには

解析する検査会社の精度を含め

培養士の繊細な技術と経験が必要です。

実施する場合は

治療の流れでなんとなくするのではなく

PGTAの実績があり、

事前説明、結果説明、特殊なケースなどの説明ができる

遺伝の専門家(臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなど)

が身近にいてくれる認定施設で

ご夫婦が納得した上で実施することをお勧めします。

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